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さあ、釣りを始めよう

OFUSE始めました。

https://ofuse.me/rukea


ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。

https://rukeanote.hatenablog.com/


さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。

https://twitter.com/rukeanote

「失敗作ですか……。確かに似ておりますが、原材料は同じで?」


「……同じだ。これは少しばかり面倒な事なんだが、メイプルシロップは冬しか取れない、訳では無い。冬以外に取ってしまうとそうなるんだ。ただ、完全に失敗作としか見えないだろう? だから名前も違う。これはガムシロップという。メイプルシロップとは別物だ。冬以外に採取するとこうなってしまうんだよ。しかもだ。冬以外に取ると、冬のメイプルシロップの量も少なくなる。だが、解るだろう?」


「……なるほど。冬以外に取ってしまったらこうなるのですか。しかも取ったと。取っても良かったという事になると……、ダンジョンでも取れると?」


「そういう事だ。今はダンジョンでも甘くする方法を模索している最中だ」


「なるほどなるほど。見えてきました。漸くと私にも見えてまいりました。そうですかそうですか。これを使ってもよろしいと。この間の作戦を生かすにも丁度いいですな。釣りだした商人たちに、平民用を買わせると。そうなれば食料品を買い付けに来た商人も、お金を出して買ってくれるでしょうな。平民用の食料として売り出しておけば、多少の値段はしようとも食料品という事で買うでしょう。……流石に全ての商人にとまでは言いませんが、何人かは引っかかるでしょうなあ」


「ああ、これを平民に食べさせれば最後だ。男はそこまでではないかもしれない。だが、甘いものになると子供と女性の財布の口は緩くなる」


「酒のつまみにはなりませんからな。しかし、果物よりは甘く。若干の高値ではあるが、届かない訳では無い。なるほどなるほど」


「解ってくれたか? この間の作戦では、メイプルシロップで釣りつつ、マットゴート系の商品を買わせるという所だったんだろう。だが、これは見えている罠だ。引っかかる奴はそうそういるとは思えない。だが、ガムシロップなら話は変わってくるだろう?」


「ええ、ええ。罠としての完成度が上がった気がしますな。腹が膨れなくとも、寒さは凌げるという方向で売っていこうかと思っておりましたが、これであれば食料品という名目も立つ。仕入れてもおかしくは無いでしょう。そして、金があるなら甘いものは欲しくなる。いいですないいですな。これなら確実とまでは行かないまでも、釣りあげられる商人は居るでしょう。そうしたら最後、あるかどうかも解らないガムシロップを買いに出かけないといけない。こちらが伺わなくても、向こうから買いにやってくる。これは実にいい商品ですな」


 そういう事だ。釣りは両者とも出来るのだ。そして、釣り餌はこちらにもあるのだ。何も商売は領都とばかり行う必要もない。メイプルシロップを他の町に売りに行っても良いのだ。そうすれば、割高で領都に入っていく事だろう。こっちの懐は痛まないどころか、豊かになっていく。そうして釣りあげた所で、積み荷がメイプルシロップだけでは勿体ないだろうと、訴えかける。平民用もあるのだと。ガムシロップは平民でも買える値段なのだと。そうして売り込みをかける事が出来る。マットゴートの商品では、食料品では無いからと断られるかもしれない。だが、ガムシロップは食料品だ。平民の為にもどうだという名目で売ることが出来る。


 こちらとしては、売れなくても良いのだ。あくまでもメイプルシロップを作る際に出来た失敗作であると言い張ればいい。それならば食料品が余っているといっても、主食ではなくおやつ程度のものなら余っているぞと言える事になる。こちらも食料品は危険域、この程度しかないとも言えるのだ。だが、買っていったが最後。ガムシロップを求められることになるだろう。特に富裕層は買ってくれる。メイプルシロップに付加価値を付けることも出来るし、ガムシロップにブランド力を付けることも可能なのだ。だってそうだろう? 成功していれば貴族様の口に入るものだったのだと思い込ませれば良いだけなんだ。それが失敗したがために、平民でも買える。メイプルシロップの名前を借りての商売となるのだ。


 そして、商人としては売れなくても構わない。そもそも仕入れに値段がついていないのだ。魔物村からの供給品であり、売れた暁には税金として収めて貰うと言うだけで、売れれば懐が豊かになるが、売れなくても自分で食べるだけでいい。


 お金にはならないかもしれないが、出ていく金は無いのだ。こんな美味しい話はない。しかも、罠であると解っていても、引っかかっても大した罰にはならない。罠を仕掛けているのは俺だ。俺の望むことは、マセルで商売をしてくれと言うだけなんだ。実質、デメリットがない罠である。これは飛びついてもいい話だ。ただ美味しいだけの話なのだ。


 そして、今後は農村でも確実に売れる。……収穫量が倍になるんだ。税金は据え置き。という事は、収入が倍になる。お金を持つことになる。今までは必要だからと買っていた塩や肉。それらも塩漬け肉という安価なものに置き換わった。そこに収入が倍である。各商会は麦を必死になって買うだろう。そして、最終的に麦を買うのは俺だ。戦争が来ることが解っている以上、麦は買うしかない。つまり、商人としても扱うしかない。その時、お金を持った農民から、多少の贅沢として甘味を買ってもらえばいい。子供や女性には人気の甘味だ。売れない訳がない。


「いいですな。実にいい。誰も損をしない様に取り計らってもらえている所が素晴らしいですな。いや、外から来た商人にも利益になりますからな。相手の町からお金を吸い上げる事が出来るのですから、こちらが発展しない訳がない。これは素晴らしい品物ですな」


「そうだろう? こちらは誰も損をしない。寧ろ得しかない。5年後くらいにはなるだろうが、余裕のある暮らしが誰でも送れるようになる。町人も農民も、皆が金を持つ時代になっていく。そして、税収は上がり、公共事業で還元する。そうすれば金は回る。確実に豊かになっていく」


「ぐふふふふふ。既に他の町からの買い付けは、私の所にやってくるように誘導してあります。今は私の所だけで扱いましょう。来年以降は皆にも扱ってもらいましょうか。それと、領都以外も連れていかねばなりませんな。買い手を増やすにはまずはこちらから訪問しなければなりません」


「その辺りの差配は任せる。儲けが出るだけの仕事だ。引き受けてくれるんだろう?」


「勿論ですとも。このレッタニン、見事に相手を釣ってみせましょう」


 釣れなくても良いんだがな。釣れるに越したことはないんだが。こんな商売は普通は出来ない。何せ、魔物を奴隷としているのと同じだからな。魔物村では通貨に価値がないために、こういうことが出来ているだけなんだ。普通は無理である。ちゃんと仕入れを考えて行わなければならないんだが、そうなると今度は魔物村から税金を回収するという手間がかかる。そして、結果的にお金が俺の所にやってくるのだ。それのサイクルを省略しているので、目に見えて利益が出ているのである。まあ、俺としても、税金がたっぷりあったとしても、使い道が余りないのが困ったものなんだが。公共事業を興すにしても、公共の為になるためのものが少なすぎるんだ。やはり河川からこちらに水を引っ張ってくるという事をしなければならないかもしれないな。その位しかやれることが無いんだよ。無駄に税収を貯め込んでも、市中に回る金が少なくなるだけなんだ。経済は金を回さないといけない。その方策を色々と考えていかないといけないな。

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― 新着の感想 ―
Win-Win(ガチ)に出来るとは出来る商人やな
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