メイプルシロップの失敗作
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「そういう訳だ。エルダーゴートとメジロリアゴートを増やして定期的な狩りを増やす。進化はまだしていないよな?」
『してないよ。流石に早過ぎるでしょ。特に経験値もあげている訳じゃないからね。アントを撃退して経験値は稼いでいるけど、高頻度って訳にはいかないし。ホーンディア系とも同じ感じで育てているけどまだまだかな。時間はかかると思うよ? 進化を急ぐんだったら、他の種よりもかなり優先的に育てないといけないけど、そういう話では無いんだよね? 急ぐならやるけど、そもそも効率があんまりよろしくないし』
「ああ、急がなくてもいい。進化もいい感じにさせれくれれば大丈夫だ。商品としての価値を高めるだけで良いんだよ」
『商品ねえ。価値は解らないけど、加工品は結構な収入になるからね。ダンジョンポイント的にも美味しいし、どんどんと加工品をくれても良いんだよ? 圧倒的に収支が黒字になるんだ。コボルトヒーローたちって器用だよね。ミスリルの加工も上手になったのか、結構ポイントが上がってきているんだよね』
実はマットゴート系の毛皮は全部を卸している訳では無い。こっちで加工する方が多いのだ。ダンジョンポイントがかなり美味しいらしい。なので積極的に生産をしている所なんだ。ミスリルでも良いんだけど、腕前でかなりのポイント差があるらしく、どちらかと言えばマットゴート系の方が黒字幅は大きいらしい。それでも、ミスリルを加工できる職人は必要なので、コボルトヒーローたちに頑張って貰っているんだが。
「それで、サトウカエデの実験は駄目だったか?」
『駄目だね。ポイントも美味しくないし、龍人に食べて貰ったけど、甘さに上品さが足りないって。全くの別物としては売れるかもしれないけど、砂糖の代わりにはならないんじゃない?』
「ん? 多少は甘いのか?」
『そう聞いてるよ? 僕はポイントしか解らないけど、少なくとも龍人は全然違う物だって言ってた。どうする? 食べてみる?』
「ああ、出せるか? ポイントとしてはそこまで美味しくないんだよな?」
『まあねえ。石炭も使っているから、若干赤字なんじゃない? だからサトウカエデの林を作って、ダンジョンでメイプルシロップを作るのは無理かな。多分だけど。条件的にはどうなのかが解らないからさあ。何か特殊な事をしないといけないって言うのであれば別なんだろうけど』
「……基本的には甘さを出すためには寒くないといけないからな。スノードラゴンを飼う場所でサトウカエデを植えてみるか? そうすれば甘くなるかもしれない」
『そうなの? まあ、それでも暫くは時間が欲しいかな。流石にスノードラゴンを飼う場所も作ってないし。まだ先の事だと思ってたしね。どうする? 作る?』
「そうだな。そっちは作ってくれ。スノードラゴンは1体でいい。その場所の気候がかなり寒くなるのであれば、サトウカエデを生やしてくれ。樹液の回収はまた誰かに頼む。さて、失敗作を出してくれ」
『はいはい。これでいいよね?』
鉄の皿に少量入れられたメイプルシロップもどきを舐めてみる。……確かに別物だな。糖度が低い。色も若干濃い。だが、差別化は出来るな。
「これはこれでいけるな。確かに本物に比べれば美味しくないが、平民にはこの位で丁度いい。予定変更だ。こっちの失敗作も沢山作るぞ。マットゴート系とホーンディア系を育てつつ、こっちの樹液も回収してくれ。これなら商品になる」
『そうなの? まあ、良いけどね。コストは安いし。普通の木だからねえ。そんなに環境を整えるのとポイントの差がないし』
多分だがもっと煮詰めれば甘くなるんだろうが、そうすると色が余りな。薄めの方が美味しそうに見える。濃い方が甘そうに見えるんだけど、そもそもの樹液の糖度が低いんだろう。もっと煮詰める必要があるのか。そうなると完全に赤字だな。だが、採算はこの際どうでもいい。ダンジョンポイントは他で貯めれば良いんだし、実験の結果としては大成功だ。どうしようか。名前を決めないといけないんだろうけど……。名前はもう決まっている可能性もあるのか。
「そういえば、この失敗作の名前はなんて言うんだ?」
『それ? ガムシロップだよ』
「そうか。それじゃあガムシロップの量産は任せる。生産さえしてくれればこっちで上手くやる。そうだ。サンプルとして多めにくれないか? 今度は壷に入れてくれ」
『良いよ。どうせ環境を整えるだけだし、それで十分かな』
さて、そうなると色々と考えたくもなるよな。作戦の変更をしなければならないだろう。レッタニンと話をしないといけない。これは平民にも、農民にも食べさせてやりたいと思う。そこまで価格を上げなくても良いんだ。メイプルシロップの失敗作、ガムシロップとして売りだせば良いんだからな。失敗作があることによって、メイプルシロップの価値も上がる。単体よりも相対的な比較の方が価値が上がるんだよ。精々高く売りつけてやろうじゃないか。
そういう事で、ミットレント商会の所にやってきた。綺麗な店構えをしている。何気に入ったのは初めてかもしれないな。いつもは呼びつけていたからな。緊急故にこっちにきたが、さて、本人は居るんだろうか?
「これはこれは代官様。ようこそミットレント商会へ。商会長であれば自分の部屋におります。ご案内致しましょうか?」
「そうか。それなら案内してもらおう」
そうやって案内してもらう。……結構調度品もセンスがいい。嫌味にならない程度の体裁だな。これがレッタニンのセンスなのか、先代からの受け継いだものなのかは知らないが。だが、堅実な商売をしているという感じを受ける。本人は思ったよりも大胆に動いているが、それでも道を踏み外さないだけのセンスは持っているんだよな。かなりの目利きでもあるし、商売をしているだけあって中々だ。
「失礼いたします。代官様がお越しになりました」
「通してください」
「やあ、レッタニン。急にすまんな」
「いえいえ。ささ、こちらにお願いいたします」
「来客だ。こちらで構わんよ。さて、作戦会議の方は上手くいったのか?」
「勿論、と言いたいところですが、思った以上に領都の商人は強かですなあ。既に釣り針に引っかかりそうな者がまだ1人おりました。こちら側が慣れるまでに仕留めてしまおうとしていたという事ですな。危ない所でした」
「釣られる前に回収できたのであれば問題ない。それよりもこれだ。これを追加で扱え。対象は平民と農民だ。余り高く売るなよ? 利益よりも大切なものがあるだろう?」
「そうですな。平民に売るとなると、どうしても信用がものを言ってきますからな。……しかし、これはメイプルシロップですかな?」
「色々と調べてみれば解る。スプーンはあるか。無ければこれを使え」
「ではお借りして。……色が濃いですな。メイプルシロップは黄金色をしておりましたが、こちらは茶色になっておりますな。それに、こちらの方が粘りは強いですな。……味は、思ったよりも甘くはないと。ふーむ……。確かにメイプルシロップとは違う。しかし、甘味であることには代わりがない。ただ、これでは……」
「思う所はあると思う。黄金色の美しさ、さらりと溶ける口触り、濃厚な甘味。どれをとってもメイプルシロップとは違う。それに雑味も強い。これでは貴族家に持っていくには不十分だろう。だが、平民、農民が偶にの楽しみに食べる分には問題なかろう? 甘味は何よりも貴重だ。今の所、果実くらいでしか味わえない。それを見た目が悪くて甘味もそこそこであれば、平民用としても売り出せるだろう。メイプルシロップを作る時に出来てしまった失敗作として」