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商売は釣りと似ている

OFUSE始めました。

https://ofuse.me/rukea


ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。

https://rukeanote.hatenablog.com/


さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。

https://twitter.com/rukeanote

「肉の供給を増やすのか? これ以上あっても使い切れないと思うんだが?」


「いえいえ。使い切る必要は無いでしょう。干し肉に加工するのですよ。塩漬け肉にしてもらっても良いんですが、保存を考えると塩漬けの方が良いんですが、干し肉も需要がありまして。特に冒険者には干し肉の方が喜ばれるんですよ。その分日持ちは塩漬け肉よりもしないんですが、今なら他の町にいつもの倍の値段で売れるんです。加工はこちらでやらせてもらうので、何とかならないでしょうか? 無理にとは言いませんが、何処の町も食料が足りていない様子。ならば商機だと思うのです」


「ええ、ええ。今ならいつもよりも大きく儲けられるんです。どうにかならないでしょうか?」


「ふーむ。……俺は反対だな。レッタニン、どう思う?」


「ぐふふふふふ。今が商機なのはその通りでしょうな。ですが、商人としての立場であれば賛成はしますが、代官様としての立場であれば、反対するでしょうなあ。私も反対です。商人としても、ですな」


「そんな! レッタニン何故だ?」


「今、食料が不足しているのは何処も同じ。だから食料が高く売れるのはその通りなのです。ですが、そこで食料を売ってしまうとどうなるのかと言えば、次の行商から食料調達を頼まれる羽目になります。確かに商機ですが、そこで売ってしまうと向こうの要求するままに食料を運ぶ羽目になってしまうのです。それは望むところでは無いでしょう?」


「うぐぐ、今回だけと言う事は出来ないか?」


「出来ないでしょうな。後3年は食料で埋め尽くされた荷で我慢するのかどうかです。勿論毛皮製品なんて扱えないでしょうな。メイプルシロップなんて以ての外です」


「まあ、そういう事だな。食料が余っているのであれば、食料を回せと催促の知らせが沢山届くだけだ。稼げるかもしれないが、ライバルとは差がついてしまう。そういう話に乗るかどうかは慎重にならないといけない。しかもまだ馴染みの商会という訳ではない。レッタニンの紹介で、レッタニンの名前で商売をしているんだ。そういうのは自分の商会の名前を覚えて貰ってからになる。もっとも、その時でも受ける仕事ではないけどな。商売というものは先を読む力が必要になってくる」


「ぐふふふふふ。その通りですな。まだ領都に行って半年も経っていないのだ。焦る気持ちは解るが、焦り過ぎた挙句、相手から足元を見られるような商売は反対します。今まではこの町を中心に商売をしていたので何も感じなかったかもしれませんが、向こうからしたらこちらが下です。都合のいい手足としか思われませんな。だからせめて立場が対等になるまでは、向こうの要求は飲まない事。そうしなければ、向こうの傘下の商会としてやっていかなければならなくなる。焦って商会を小さくした先代と言われたくなければ、今はまだ耐える時でしょう」


「っく、そうか。……流石に下に見られるのは嫌だな。焦ってたのか、俺は」


「今なら高く買い取るって言ったのはそういう事か……」


「そういう事だな。かなり直接的に言うのであれば、この領地の食料を排出させて、自分は利益を得つつ、相手側の商人、つまりお前たちだな。お前たちをこの町に居づらくさせる。この町からしたら、食料が足りない時に食料を外に出した戦犯になる。それを懐柔して傘下に収めると、そういう事をやりに来た訳だ。この町の事情なんて知らないだろうが、やろうとしたことはそういう事だ。食料が余っているから、今の高い内に売ろうとはしない方が良い。それで食料事情を知られれば、俺の所に税金として大量の食料を収めろと命令が来るからな。代官から疎まれたら、この町では商売できない、とまあこんな所だ。向こうの策にまんまと嵌まる所だったわけだ」


「ぐふふふふふ。商機を掴みたいのは解ります。ですが、それは釣りの餌なのでは無いかと疑う事も必要になってくる。代官の領地の外とやり取りをするという事はそういう事ですので。まだまだ人が良すぎる。もっと相手の腹の内を探れるようにならないと、本当に美味しい話なのか、釣り針の付いた餌なのかを判断できないでしょう。揉まれる事ですな。相談にはいつでも乗りますぞ」


「苦しい時にもそういった罠を仕掛けてくる。気を付けることだ。逆に罠に嵌めるならどうしたら良いのかも考えて商売をした方が良い。まあ、今は食料関係の話は全部釣り針がついている。それが解っただけでも朗報だ。高い勉強代を支払わなくても済んだんだからな」


「……解った。諦める。しかし、向こうの商人は皆こうなのか?」


「余りにも策がえげつない。他の奴らにも教えてやらないと」


「そうだ。この町の商人を敵と思うんじゃない。競争相手ではあるんだが、敵ではないんだ。敵は他の町の商人たちだ。しかもこちら側が下手に出ないといけない相手だ。難しいぞ? 今まではレッタニンが一挙に引き受けていたが、これからはお前たちにも託すことがある。敵を見誤るな。味方を間違えるな。この町の商人をだし抜くのもいいが、他の町の商人にだし抜かれるのが一番不味い。美味い話には何かあると思っておいた方がいいだろう」


 まあ、こういうのは経験だからな。新人程やらかす。素直な奴ほどやらかす。悪事を働けとは言わないが、泥水も啜る覚悟が無いと商売の世界はやっていけない。この町から出たばかりの商人だと特にな。今回みたいに相談してくれれば止めることは出来るが、策に嵌まった後に救い出すのは不可能だからな。折角商人を育てようとしているのに、引き抜かれたら堪ったものではない。まあ、そうやって商会を大きくしていくのもしっかりとした作戦だからな。左団扇で居られる時は、何もしなくても金が入ってくるときだけだ。苦しい時こそこういった策を仕掛けるんだよ。生き残るために策を弄≪ろう≫して戦うのが商人だ。善だけでも悪だけでも出来ない。……助けたい気持ちも解らないでもないし、商機に見える様にしてあるのも上手い手なんだけどな。


「ぐふふふふふ。しかし、こちらばかりが攻められるのも面白くないですからな。こちらからもやり返さなければなりません。こちらも団結して戦うべきでしょう。今の所、領都と取引しているのは6商会。少しばかり作戦を練りましょう。何、既に種は蒔いてありますれば。品もマクシミル様が用意してくれましたからな」


「なんだ、レッタニン。こっちも仕掛けてたのか?」


「……会議するか。皆を集めないとな。味方を間違えるな、か。この町の商会は味方なんだよな?」


「そうですとも。競争相手ではありますが、敵ではありません。だし抜くのは自由ですが、敵に回すのは違います。定期的に会議をする方がいいでしょうな」


「レッタニン、後は任せるぞ。こちらも準備をしておかなければならないからな。……マットゴートの上位種の毛皮を少しばかり多くすればいいか? メイプルシロップは来年にならないと追加は出来ないぞ?」


「ぐふふふふふ。メイプルシロップについては、まだこちらにありますからな。6商会で私の商会が半分貰う事になっております。それの全てを抱え込んでいるのです。後はこちらでやっておきましょう。すぐにでも会議を開いて意志を統一しておいた方がいいですからな」


 ……既に動いていたか。流石に対応が早い。今の状況下、メイプルシロップはかなり強い手札だからな。来年まで話が出来ないのかと思っていたが、流石だ。ちゃんと確保をしてあるとはな。しかも他の商会は売ってしまったんだろう。少量だけ出回った場合、こちらにまだあると踏んで仕入れにくることもあり得る。その時が勝負の時か。

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