漸くの春、ゆっくりと動き出す
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春になり、漸く平穏が帰ってきた。今年もしっかりと乗り切った。薪もまだまだ余っている。食料もしっかりと余らせている。余裕はある。余裕がなければ各商会から連絡が入ることになっているからな。それも無かったという事は、町人も余裕をもって生活出来ていたという事になる。余裕は大切なんだ。ギリギリの生活では辛いのである。冬場にしっかりと内職をして稼げるようにしてあるんだ。多少は余裕があるだろう。そこから裕福に暮らすにはどうしたら良いのか。雪国で裕福に暮らすのはとても難しい。どうしてもしなければならない事が多くある。それらをやっていると、また次の冬がやってくるのだ。余裕のある生活は出来ない。だが、それは暖かくても同じだろう。結局は働かなければ生きてはいけないんだから。
「予定通りだ。既に各商会は領都に向けて出発した。……まあ、まだ早いとは思うんだけどな。向こうに余裕があるのかは解らない。品物を買ってくれるだけの余裕があるのかは不明だが、ここで行かないのも不自然だからな。まあ、少しは向こうの様子も解るだろう」
「そうでしょうな。今はまだ混乱中。商品をしっかりと売って来れるのかは解らないと言ったところでしょう。しかし、向こうの商人も買わなければ今後に差し支えてしまう。無理をしてでも買うんでしょうな。利益を上げないと、生活が苦しくなるのは解っているはずですので」
「そうだろうな。買うしか選択肢はない。その結果、どうなるのかは解らないが。領都もまだまだ混乱していると思う。その情報をこっちに持ってきてもらう事が先決だ。そして、自分たちがどれだけ恵まれているのかを実感してもらった方が良い。そうすれば、人口の流出にもストップがかかるだろうからな。働き口もしっかりと用意してやる。領都に人を取られない様にするしかないんだ」
領都は混乱中だろう。商会もやっているのかどうかは解らない。……最悪、通気口が詰まって酸欠で死んでいるなんてこともあり得るんだけど、その被害状況の確認はこれからだろう。普通はあの大雪では不可能だからな。こちらが商売を開始したという方が驚かれるかもしれないし、それだけ切羽詰まっているのかと思われるかもしれない。どう思われようが知ったことではないけどな。こっちはしっかりと準備をし、対策を取った。それだけの事なんだ。まあ、こんな大雪になるなんて思ってもみなかったんだけどな。普通に冬の対策を厚くしておこう程度の事だったんだよ。こんな事件になるとは思ってもみなかったんだ。
さて、それでは農村にも向かわせるとするか。今年も大開拓をしなければならない。2年連続で大規模に開拓をするんだ。2周目はあるかどうかは解らない。それは村の方で決めてくれればいい。余裕があればどんどんと農地に変えていく。森の心配はしなくても大丈夫だ。国土の半分は森なんだから。多少切り飛ばしたくらいではどうにもならない。薪の分もしっかりと伐採しなければならないんだ。多めに開拓しておく分には問題ない。
「今年も大開拓を進めるが、開拓した村の方からは連絡は来ていないよな? 今は耕している最中だとは思うが、種麦は足りているんだろうか」
「その辺りは心配ないでしょうな。あちらは農家のプロですよ? 足りないなんて勿体ない事はしないでしょう。どれだけやれるのかの実験も兼ねていることですし、しっかりとやってくれるかと思います。私としてはまだ農地が足りないと言ってくるのではないかなとは思いますけどね」
「そうか? あれだけ開拓したのだから、十分なような気もするが」
「いえ、一番の問題は耕すことなんですよ。それが道具でどうにかなるのですから、もっと農地を欲してもおかしくないと思いますよ? その分収入が安定するんですから、2周目も必要だとは思います。アンデッドも上手く使ってくれているようですし、畑を広げられない問題が解消されれば、どんどんと増やしてもらった方がいいでしょう」
「まあ、それはそうなんだがな。……今までには道具が無かったのか? 普通に農地を耕すのに色々と使った方が便利だろう? 鍬だけで耕す方が無謀だと思うんだが……。カモシカの維持費がそれだけかかるという事なのか?」
「それもありますが、そもそも鉄製の大型の農具を買う事も難しいんですよ。大体が税金を払うと、後は種麦と冬越えのための食料になるんですから。私はそれでは駄目だと何とかして開墾を進めていましたけど、他はどうなのかは知りませんよ? 耕すことさえ出来れば、麦は多少放置していても育ちますからね。であれば農地は余らせておいてもいいので、開墾を進めてきたんです。それが道具が出てきたのと、アンデッドを活用し始めたので、一気に税収が増えただけなんですよ。それに、スライムが地味に良い役割をしてくれています。土地を肥えさせるために使えるとは思ってもみませんでしたからね。農村にはスライム、町でもスライム。スライムがこんなに万能だったとは思いませんでした」
「まあ、そもそもテイマーがそこまで良い職業じゃないからな。維持費だけが必要になって、稼ぎはそれ程でもないとなってくると、中々に厳しい。だが、スライムはそもそも弱すぎて見向きもされなかったからな。こうやって活躍の場があるだけでも儲けものだろうと思う」
スライムで色々とするのはよくある事なんだけどな。異世界転生物ではって感じなんだけど。戦闘にも使えるし、内政にも使える。特にスライムで汚物を処理するなんてよくある事なんだ。下水の整備にスライムを使うとかもあったよな。それを参考にさせて貰っているだけなんだよ。所詮は借り物の知識。俺もこれで使えばいいだろうとは思ったけど、まさか土壌改善にも使えるなんて思ってもみなかったからな。スライムはミミズだったのかと言いたい。
それにだ。アンデッドを使うというのも、異世界転生物ではよくある話なんだよな。無給無休の労働者として。完全にブラックなんだけど、アンデッドだしな。死霊魔法を覚える難易度が多少は高いとはいえ、農村に3人も居れば十分だしな。物覚えは悪いが、単純作業ならアンデッドには勝てない。スライム、アンデッドは割とメジャーな使い方だと思っていたんだが。
「後は商会の皆さまが何処までの情報を手に入れてくるのかでしょうね。そこからどんな話になるのかは知りませんが、厄介事も持ってこられると困ります。余裕があるとはいえ、万全ではないですからね。その辺の対処はおまかせしてもよろしいですか?」
「ああ、大丈夫だ。とは言いつつも、まずは自己復興を心がけるだろうさ。こちらに頭を下げて手伝ってくれというのは最後の手段だと思うぞ。まあ、父が頭を下げて懇願してきたら聞いてやらない事も無いが、役人を通して命令してくるのであれば、拒否しても構わないと思っている。それは兄たちの領地も同じだな。こっちには余裕があるが、人手に余裕がある訳では無い。仕事は仕事としてあるのだ。善意で助けることはない。利益を与えてくれるのであれば助けてもいいかもしれないがな」
最低でも領主か代官直々に頭を下げて手伝ってくれと言われない限りは動かないつもりだ。領分を侵してまで手伝うつもりはない。俺はマセルの町の周辺だけでも手いっぱいだという事にしておきたい。今年の収穫も考えなければならないのだ。それも備蓄に回さないといけないんだから、中々に厳しい采配なんだぞ? 戦争を見越さなければ余裕はあるが。