売れ行き順調、でも不安の影が
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「ぐふふふふふ。高級品と思われるものが、あんな安値で売られているのですから、領都はさぞかし混乱している事でしょうな。面白いように売れましてね。いやー、素材は何を使っているのかと聞いてきた商人も居ましたが、マセルより北の森の奥の奥地と申しておきました。これで良かったのでしょう? 今後も供給があるのかと言われましてな。勿論、今以上の品質をと約束してまいりました」
「ご苦労。その顔は相当儲けたと書いてあるな。当然か。付加価値を付けて売るのが商人だ。だが、庶民でも買える値段で取引をしたのだろう?」
「そこは言いつけ通りに。高級品ではなく、庶民のための布だと伝えてきた所存です。染色も貴族様が使われている布の色とは違いますからな。その辺は配慮させていただきました」
よしよし。高級品として売り出すには品質が足りない。かといって、白のまま出してしまえば、染色して高級品として売られてもおかしくない。だから、こちらで染色しておく必要があった訳なんだけど、その辺は上手くやったようだな。流石というかなんというか。これで来年には、今年以上の品質の庶民用の布が、色んな商会からばら撒かれることになっている。昨冬よりも織機の数を増やすからな。大規模にやらせるつもりだ。もしかしたら、冬だけに止まらず、年中織物をしている人が出てくる可能性もあるな。それはそれでとても良い事なんだが。
産業があるという事が強いのだ。安物産業であろうとも、この極寒の地では、産業があるだけで恵まれている。冬の間の仕事があるという事だけでも恵まれているのだ。普通ならば、冬は家に籠りっぱなしの所もあるんだから。まあ、雪かきなんかはしないといけないんだがね。
「それと、コートもいい感じで作れているとは思うんだが、どうだった?」
「ええ、コートも中々の品質でした。中々なので、貴族様にはお持ちできないですがね。それでいいと仰られたので、沢山売ってきましたとも。いやー、ダンジョン様様ですな」
「資源が無限にあると言う事になるからな。しかし、他の商会の足並みを揃えないといけない訳なんだが、そっちもちゃんと進んでいるのか?」
「勿論でございます。メイプルシロップが去年よりも高く売れましたからな。それはそれは高く買ってくれました。何でも、公爵家の耳にも入ったとかで。今後もこの量は最低限として確保できるのかを心配しておりました」
「メイプルシロップについては解らん。樹液だからな。取り過ぎても木を枯らしてしまう。出来る限り生かしておかないといけない。故に大量生産は難しいんだ。今も植林をして、その木を植えているが、成木になるには30年程度は必要だろう。まあ、群生地を別の所にも見つけたからな。なるべくは今回の量を確保できるように努めるつもりだ。……一番の儲けはここだろう? 去年は多少なりとも負けておいたんだろうが、今年は取り返したか?」
「流石ですな。勿論去年の分も取り返しましたとも。もっとも、砂糖よりは安価ですがね。砂糖程高くしてしまうと、売り先が減りますからな。ギリギリを考えて売らなければなりません。ただ単純に高くすればいいものではないのです。高く多くを売らなければならないのです」
「その通りだな。流石に庶民の口に入るまでの生産力は無い。こればかりは仕方がないとは思うが、味見したんだろう? 感想はどうだ?」
「そうですね、砂糖は知らないので何ともならないのですが、果物よりも濃厚で粘りつくような甘味が堪りませんな。マクシミル様はどのくらい確保されておいでで?」
「俺の方は殆ど確保していない。精々客が来た場合に、お茶に少量を入れる程度だと思っているからな。瓶で5つ程しか保管していない。甘味中毒という訳では無いからな」
甘味中毒になる奴は一定数いるんだよ。美味しいから解らないでもないんだが、俺は果物で十分だと思っている。砂糖をそのまま舐める奴も居るそうだが、そんな事をして何になるのかが解らない。それなら黒砂糖の塊の方がまだマシだ。甘いだけの砂糖を舐める気にはならんな。
さてと、レッタニンとの話もそろそろ切り上げないとな。色々とやることがあるんだ。春の内に色々と纏めておかないといけない。……そろそろ大開墾の時期だからな。畑を増やさねばならない。アンデッド農法のお陰で、どれくらい余裕が出来るのかが解って貰えたと思う。ならば大規模に開墾して畑を増やす。それで税収を増やす。力を蓄えなければならない。何かが起きても良い様に立ち回らないといけないからな。
「それではこれで。また何かありましたらお呼びください」
「ああ、他の商会の件も任せたぞ」
さて、この後はデーデルと打ち合わせだったな。魔物人を何処まで採用するのかの話だ。……この冬で確認したが、蟻人を除けば、800体くらいの魔物人が居た。蟻人はちょっと特殊なので、無しの方向で考えているんだが、狼人と鱗人の系統でその位は居る。大開墾をするための道具も揃えてある。抜かりはない。既に2000人用の道具一式を揃えてあるのだ。ダンジョンを使えば、その程度の事は可能なのだ。まあ、コボルトヒーローが沢山作ってくれたので、有難く頂戴してきたんだけど。なお、スケルトンたちにも農具が支給されている。アンデッド農法は魔物の方が進んでいる状態なのだ。
「デーデル、待たせた」
「いえいえ、時間通りですので。それでは、魔物人は800人。これで間違いは無かったですかね?」
「ああ、間違いない。凡そ800人だ。これだけも居れば、大開墾にもなるだろう。木を伐り、根を掘り返し、耕す準備は出来ている。今回は村の規模を1.2倍程度にしてしまおうと思っている」
「1.2倍ですか。それだけの労力があると見ていいと言う事ですね。ですが、耕すのはどうしますか? それだけ広くなるのです。今度は耕す方が面倒になり、体を壊すものも出てくるのではないかと危惧するのですが……」
「その懸念はもっともだ。だが、それもアンデッドを使えば解決する。スケルトンホースを知っているだろう? あ奴らに畑を耕す道具を括りつけ、引っ張らせる。人間はその道具に体重をかけ続けるだけでいい。まあ、疲労は溜まるが、普通に耕すよりはマシだ。そうやって道具を使い、畑を耕し、大量の麦を作る。それを塩漬け肉と交換する。そうすれば、農村の暮らしも良くなるはずだ」
「農村ではまだまだ肉は贅沢品ですし、いいと思います。して、その後に酒にするという事でいいでしょうか?」
「いや、麦は貯め込んでおけ。暫くは貯蓄する」
「……何か懸念でも?」
「戦争が起きたときのためだ。出来れば起きて欲しくはないが、絶対にないとは言えない。言えなくなってしまったんだよ」
「……!? そうか……甘味が北で取れることが解ってしまったのか。盲点でした」
「既に公爵家の耳にも入っていると聞いた。これが国外に出ていかないという保証はあるか?」
「1年で公爵家の耳にも入ったのですか……。それならば今年は侯爵家にも漏れるでしょうね。その後は、敵国にも漏れるでしょう。……時間の問題ですか」
「そういう事になる。酒にすればいいと思っていたんだが、やらかしがある可能性がある。備えておくべきだ。不用意に戦争を仕掛けてくるのかは解らないが、小競り合いの強度が増すかもしれん。侯爵家の動向にも注意しておいて欲しいが、無理か?」
「……無理ですね。人手が足りません。領都の動きを察するだけで、手いっぱいです」
そうか。そうだよな。まあ、仕方がない。備えだけはしておかないといけない。もっとも、攻めてくると言っても、3年後くらいにはなると思うが。最速でそれだと思う。まだまだ猶予はあると思いたいが、最悪を想定して動いた方がいいだろうな。