魔物人を町に住まわせたい
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既に雪が降り始め、冬がやってきたといった感じだ。ここからが本番だ。冬の前に、既にかなりのマットゴートを解体し、毛皮を納品してあるがどうだろうな。ミットレント商会が何処まで手を入れたのかだよ。他の商会とも上手くやるようにとは伝えてあるんだが、果たしてと言ったところだ。
マットゴートの毛は糸に加工され、皮はいい感じのコートになったりする。特に冬が寒いこの地特有の事になるのかもしれないが、寝る時にコートを着たまま寝るんだ。そのコートに使う皮としては一級品なんだよ。何とか繁殖させて上位の魔物になって欲しいが、様子を見に行く事も出来なくなるからな。鱗人が橇で品物を届けてくれるが、それらもこの町の商会の者たちが一斉に群がっていくんだよ。一番大きな商会はミットレント商会だが、子会社と言ったらいいのか、そういった商会も幾つかあるんだ。全商会が助け合いつつ、領分を守りつつ活動している。……この地で商売をするのに、競争を仕掛けるのは悪手なんだ。そもそも生きる事の難易度が高すぎるんだよな。それを考えると、自由な競争よりも、談合して生き残った方が賢い。そもそも机の上の料理は多くない。それを我先にと取ってしまうと腐らせることになる。分け合い、必要な分だけを確保する。そうして商会が成り立っているんだよ。
ミットレント商会のレッタニンとも話をしたんだが、それらの商会も領都で商売が出来る様にして欲しいらしい。結局何が一番足りていないのかと言えば、知名度なのだ。この町、マセルの知名度が低すぎるんだ。ゴールドレッド子爵家の領地は都市(領都)が1つ、町が8つ、村が60ことなっている。その中でも、次期当主争いをするための町が3つあるんだ。知名度はその3つがほぼ独占している。後の5つの町についてはあることは知っている程度のものなんだよ。
何故そうなるのかというと、町の規模が違う。その3つの町の人口は3万人。マセルは7000人しか居ない。優に4倍の差があるんだよ。当然、その関係で産業が少なかったり、特産品が無かったりという状況。そもそも特産品を作るにしても、人口が必要になって来るし、所謂詰みの状態なんだよ。人口を増やそうにも人間はそんなに簡単に増えないし、食料にも限界がある。マセルを発展させるには、人間だけの力では不可能なんだ。……俺はそれも変えていきたいと思っている。何をしようかと言えば、鱗人をマセルに住まわせる計画を立てているんだ。後は狼人だな。彼らも町に住まわせるつもりで居る。見た目は殆ど人間なんだから。
「……簡単に言いますが、そもそも受け入れられますかね? 人間だとは言いにくいですよ? 仮令悪さをしないと言っても、そもそもが人間と違います。解らない故の怖さがあると思います。それらを払拭するには、それなりの時間が必要になるのかとは思いますが……」
「デーデル様。ですが、人口は欲しいですよ? 結局、町の活性化を果たすためにも人口は必須です。何よりもお金を使う人を増やさないといけない。そうしないとお金の循環が滞ります。滞った結果、昔のようになる可能性があるんですよ? 50年前の記録を見ても解るじゃないですか。碌に産業が無い状態から、今の冬の手工業を始めて漸く軌道に乗ってきたんです。でも、最近は停滞している。ここらで何かをしようと思っても、人口がネックになってきますって」
「だがよ。人の様で人でないんだろ? 人口って言っても増えすぎても困るのは俺達だぞ? 魔物から人の様な姿になったとしても、魔物は魔物だ。移民させるって事は不可能に近い。それに食料問題も出てくることになるぞ? 来年以降の開拓をもっと大々的に進めないといけなくなってくる」
「いや、それについてはその魔物人? の力を借りれば良いんじゃないか? そもそも、新しい人口の元になる魔物人はお金を持っていないんだろう? 今の所は魔物人にはお金を渡していない。となってくると、開拓の仕事をやって貰って、お金を稼いでもらってから受け入れるって形にしないと、冬を乗り越えられないぞ」
「ここでしっかりと話し合っておくことが肝心だ。彼らの事を通称で魔物人と呼ぶことにしよう。魔物人は基本的には普通の魔物よりも強い。魔物の特殊な進化だと思っている。その分、得意不得意は人間よりも大きいと思ってくれ。……どうしようも無い場合は、軍に引き入れようとは思っているが、それでも限界があるからな。出来れば産業に携わって貰いたいと思っているんだ。それに、魔物人に関しては、冬の間でも活動は出来る。鱗人が毎日品物を運んでいるのを知っているだろう? 寒さには耐性がある。寒さに弱いとされている鱗人でさえ、この冬の中でも活動が出来るんだ。それを使わない手はないだろうとは思っている」
「受け入れるのはいいでしょう。家も建てるとなっては、大工の仕事も沢山用意できますし。外壁の内側はまだまだ土地が余っていますしね。町人が受け入れるのかどうかでしょうね。そこが一番の難所だと思います」
「この際ですが、受け入れる前提の話をした方が良いのではないですか? 受け入れられなければ、この話を無かったことにすれば良いだけですし、受け入れられた場合、どう言った事をやって貰わないといけないのかを話し合っておいた方が得策でしょう」
「それは一理ある。アンデッドも受け入れられたんだ。まあ、なんだかんだと言いつつも、利益があるなら受け入れられるんじゃないかって思っているんだが、どうだろうか?」
「具体的にはどんな利益が考えられる? マクシミル様、どのような利益が考えられますか?」
「そうだな。単純に力仕事を任せることが出来ると思った方がいいだろう。器用さもある種族も居るんだが、それ以上に力が強い。冬場の屋根の雪下ろしなんかは任せてしまってもいいと思うぞ。格安で代わりにしてもらうという事で、魔物人にも収入が出来るし、その浮いた時間で人間側も手工業が可能になるしな」
「なるほど。力を使う仕事を任せてしまうと言う事ですか。……行商にも行かせたいですが、なるべくは他の町に出さない方が良いんでしょうなあ。最悪は管轄の村までですか。それでも十分にメリットはありますけどね」
「でも、冬場にも活動できるってのが大きいですよ。何かと移動させたりする事が多いですし、薪が足りないからって持っていってもらう事も出来ますしね。人間だけだと寒いし、それどころじゃなくなる可能性もありますから」
「力が必要なら、鍛冶場とかはどうなんだろうか。鍛冶も出来るんですか?」
「鍛冶も出来るぞ。魔物村でも魔物に鍛冶をやらせているからな。種族的なものもあるが、コルバイトくらいであれば加工も出来る。……致命的に駄目な種族も居るけどな。鱗人には鍛冶は無理だ。彼らは乾燥にめっぽう弱いからな。まだ雪のある場所の方がマシだそうだ」
「なるほど。他の魔物も魔物人になる可能性があるんですよね? そうなってくると、色々と適性を見ながらって事になるんでしょうけど、大丈夫そうなんですか? 何も出来ない種族とかは居ないんですかね?」
「解らん。何も出来ない魔物人に関しては、連れてこないつもりで居る。まあ、まずは鱗人と狼人だな。それらを上手く活用する方法を考えよう。生活できる環境作りも必要なんだろうが、まずは町の人口として数えられるのかが問題だ。そこをクリア出来れば、この町も色々と出来ると思う訳なんだよ」
魔物と人間が一緒に暮らす。夢のような話かもしれないが、割と魔物の中でも鱗人や狼人は大人しいんだよな。中々に賢いし、普通に人間社会に溶け込めると思うんだが。ハードルは高いように見えて、実はそうでもないって感じだとは思うんだけどな。