スタンピードの予兆がある
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さて、本家から問い合わせがあった。メイプルシロップについてだ。甘味は貴重品。こんな極寒地で甘味が作れるという事は聞いたことがないとのことで、どういうことなのかという問い合わせがあったのだ。これには素直に答えたがね。樹液だと。樹液を煮詰めたものになると。問題としては、冬の間にしか取れないという事も伝えておいた。……特産品として扱いたかったのだろう。冬の間だけしか取れないといっても、甘味は重要なものだ。扱うなら慎重に行って欲しいと思う。
大量生産は難しい。まだまだ作ったばかりの産業なんだ。毎年しっかりと作るが、限界があるという事も解って欲しい。資源は無限にあるので、出来ないとは言わないんだけどな。ダンジョンを使えばそれこそ無限に手に入れることが出来る。だがそれは秘密なのだ。まだ隠していくべきだと思う。ミットレント商会のレッタニンにはバレてしまったが、隠し通せるのであれば、隠し通した方がいいだろうと思うのだ。切り札になりえるからな。
しかし、本家との関係は良好でなければならない。無駄に対立をしても意味が無いからだな。こちらの方が戦力が上だとしても、格下で居なければならない。魔物の軍隊を作れば、本家を潰すことも出来るのだが、それをしてしまうと俺が当主にならなければならなくなる。仕事なんぞしたくもない。内政をするだけで十分だ。それに、甘味だけを言ってきたが、それ以外の製品もちゃんと指摘をして欲しいとは思ったのだがね。明らかにおかしい製品が紛れ込んでいたはずなのだ。
鋼の武器なんかはどう考えてもおかしいと思ってもらわなければならないだろう。ダンジョンがあるとばらすわけではない。だが、それに気が付いてもいいはずなのだ。この辺りでは鉄は取れない。それを鍛えて鋼にする事は可能だが、技術者が何処に居るのかという事にもなってくる。更にはコルバイトの武器も出していたのだ。出所を聞かれても不思議ではないのにだ。メイプルシロップに全注目が集まっているのはどうかと思うぞ。……そうなるように仕向けたのはこっちだとしてもだ。
ミットレント商会のレッタニンはそれにも気が付いていたのにな。貴族である父が気が付かないのは少し残念だ。だからと言って今後も卸すのだがね。武器は金になる。冒険者たちの中でも戦闘を生業にしているものは多いのだ。この近辺では居ないというだけで、冒険者とは、戦うものであるという事なのだ。その者たちには武器は必須。魔物と戦うには武器が必要なのだ。しかも武器とは消耗品である。長く使えば刃こぼれもするし、劣化もしていく。買い換えないといけないものなのだよ。余程の業物でない限りは、買い換えるのは必須と言ってもいい。
「マクシミル様、冒険者ギルドより連絡が入っております。至急こちらに来てくれと言われていますが、どうしますか?」
「火急の用事であることは確かなのだろう? すぐにでも行く。準備を頼む」
「解りました」
さて、冒険者ギルドからか。何を言われるのかは知らないが、急な用事とは何だ? 何かの兆候を掴んだのか、それとも別の何かか。解らんな。聞いてみない事には話にならない。冒険者ギルドの管轄は、ある程度広いのだ。こちらにも情報が入ってくるというだけで、遠くでの出来事なのかもしれない。
準備を整え、冒険者ギルドへやってきた。受付にギルドマスターであるオーレリアから呼び出されているというと、普通に通してくれた。そして、彼女は書類の山を必死に倒している最中だった。
「全く、領主を呼び出すとは何事か。普通はそちらからやって来るものだぞ」
「そんな事は解っているわよ。でも緊急事態なの。こっちとしても手が離せないのよ」
会話をしつつ、書類を片付けているため、非常に忙しいことは解る。何をそこまで焦っているのかは知らないが、こちらの話を中途半端に聞くだけならば、帰るという選択肢も取りたくなる。そんな事はするつもりも無いんだが。帰ってもまた呼び出されるだけなのだから。それよりもさっさと要件を聞いた方が良い。
「それで? 何が起きた? ここでは問題らしき問題は起きていないはずだ」
「そうね。ここでは問題は起きていないわ。寧ろ問題が減ったわね。採取の冒険者たちの危険性が減ったもの。この1年で魔物に殺された冒険者の数は0よ。貴方の魔物村が機能している証拠なんでしょうね。魔物被害は殆ど無くなったわ」
「それは良い事だろう? こちらとしても貴重な冒険者を死なせる訳にはいかないからな。両者ともに利益が出ているのだから問題ない。そうではないのか?」
「その件に関してはそうよ。こちらも利益があるもの。でも、今回は別件よ。メティス子爵家でスタンピードの兆候が現れたわ。それの戦力を各方面からかき集めているって所なのよ。基本的には貴族家で対処してもらうのがルールだけれど、今回は冒険者ギルドにも依頼が出ているわ。それでこういった対策をしているのよ。そっちでは情報が回って来ていないかしら?」
「回って来ていないな。本家の方で対処をするのかは知らないが、俺の所までは情報が降りて来ていない。だが、スタンピードか。厄介だな。折角種を蒔いたばかりだというのに」
「ええ、そうなのよ。例年通りであれば問題は起きないのよ。でも、スタンピードで農村が荒れた場合、食料の確保も問題になってくる。ギルド的にも死活問題になるわ。可能な限り冒険者を集めている状態なのよ。それでも怪我の可能性はあるけどね」
「そうだな。戦闘になるんだ。怪我は常に付きまとう。だが、ここの冒険者は殆ど戦えないだろう? スタンピードに参加させるのか?」
「まさか。参加させる訳がないじゃない。参加したいという意志があるのであれば別だけど、意欲の無いものを参加させる訳にはいかないわ。それよりも、私たちの役割は補給よ。下級ポーションや中級ポーションの素材を入手することが正解ね。流石に上級ポーションの素材なんて見つからないけれど、中級までなら何とかなるわ。それを集めさせるのが目的なのよ」
「そうなるだろうな。戦えないのだから、後方支援をやらせるのは正解だろう。だが、それだと俺が呼び出された理由にならないんだが?」
「……貴方の所で下級ポーションを作っているわよね? どうやって作っているのかまでは解らなかったけれど、普通の品質の下級ポーションがミットレント商会に売られていたわ。町の人に買わせるのであれば、低品質でもいいはずなのに、普通の品質のものが売られている。しかも何処で仕入れたのかも言わなかったけれど、冬の間に調達できるわけがないわ。そうなると可能性としては領主館でポーションを作れるようになったと言うのが正解なのでは無いかと思ってね。作っているんでしょ?」
「作っているな。まあ、作っているのは領主館ではなく、魔物村で作っているんだが。魔物の中でも器用で頭のいい種に作らせている。それは問題ないはずだ」
「魔物村で作られているって、冗談では……無さそうね。魔物ってそんな事まで出来るのね。知らなかったわ。それは良いわ。そのポーションなんだけど、どれくらい作れそうなのかって所なのよ。出来れば商会を介さずにこちらへ納品してもらえないかしら?」
なるほどな。そういう事か。ポーションの納品依頼という事になるのか。それならば簡単にOKを出せる。そこまで秘匿しないといけないものでもないからな。幾らでも持っていってくれて構わない。何なら最近作れるようになった高品質品も持っていってくれればいいと思う。下級ポーションだけなんだが、高品質のものが作れるようになったのだ。まだ運が絡むんだが、魔物でもその位は出来るらしいぞ。俺は基本的に触らないが。