領地に代官として赴任する
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「マクシミル、お前も15歳になった。普通なら後継者争いになる所なんだが、お前は剣術が出来ない。それに素行もいいとは言えない。後継者争いからは降りて貰う。それは通達していた通りだ。貴族となる以上、ある程度の素養は必要だ。それがないお前に2年も王都の学校に行かせるつもりはない」
「解っています。俺だって兄上たちのように振舞えるとは思わない。跡取りからは外してくれていい。どうせ剣術が出来ないんだ。端から対象外だろう?」
「物分かりも良ければ、勉学の才能はあるのだがな……。言っていても仕方がない。お前には1つの町を任せる事になる。周辺の村も任せるが、内政を整えて貰いたい。何処か希望はあるか? 家督争い用の町を除けば、選択の自由はあると思っている」
「選べるのであれば、マセルでお願いしたいと思っておりました」
「マセルか。そこならば構わない。同時に村を6つ治めて貰う事になる。それでも良いんだな?」
「ええ、問題ありませんね。今日にでも発てますが?」
「いや、明日の朝に向かってもらう。2日間の旅になるが、今は漸く春が来たところだ。まだ街道には雪が残っている。慎重に進むように」
「となると最低でも8日間程度の物資が必要になるのか。移動もままならないとなると、その位の蓄えが無いと怖い事になる」
「そうだ。外を甘く見てはいけない。豪雪地帯と言う事を舐めてはいけない。準備は出来るだけしておくように」
「解った。それ以外は自由にさせて貰って良いんだよな?」
「構わん。出来れば町を発展させてもらいたいが、出来なければ現状維持で十分だ」
現状維持で構わないのであれば好き勝手に出来るからな。これより、俺はマセルという町の代官になったと言う事なんだ。ゴールドレッド子爵家の領地は領都1町8村60から構成されている本当に小さな子爵家だ。まあ、男爵家に比べたら大きいが、これでもマシなほうなんだろうな。
マセルは北の森に接していて、かなりの辺境にある。ここで俺の物語が始まるんだ。何をしても自由だ。悪徳領主って訳では無いけどな。その辺はきちんとするつもりだ。限界まで切り詰めた生活をしている領民を苦しめる事はしないつもりではあるけどな。
代官の仕事は最低限だ。それ以外の仕事もしっかりと熟す。俺でしか出来ない事も見つけてあるしな。そう、魔物をテイムし使う事だ。それは俺にしか出来ない事だと思っている。魔の心を持っているんだから、ある程度の事は出来る筈だ。それを最大限活かすには、北限と言われている場所から続く森が必要不可欠となってくる。
魔物をテイムし、使う。貴族としては泥臭いかもしれないが、俺はそれでいいと思っている。必要な力だと思っているからだ。魔物も領民と考えても良いのかもしれない。下手をすれば、そこからも税金が取れるのではないかと思っている。まあ、何処まで達成できるのかは知らないけどな。
そんな訳で、予定通りとはいかない道のりを通りつつ、4日でマセルへと辿り継いだ。……公共工事をしようにも、雪で道が埋まっている状況。道路の整備は必要ではないな。そこまで重要ではない。そもそもトナカイで橇を引っ張っている状況だ。道路の良し悪しは関係ない。ここから雪が溶けてどうなるのかは知らないが、急いで道路を整備しなければならないって事にはならないだろうな。
代官の屋敷に入ると、暖かさで安らぐ。……結構な暖房の費用になると思うが、これも夏場にしっかりと薪を蓄えなければならないのだろうな。必要最低限って訳にはいかない。しっかりと森林も管理していかなければならないだろう。
「おや? お客人が来るとは聞いておりませんが?」
「今日からこの町の代官になるマクシミル=ゴールドレッドだ。4日前に赴任することが決まった。これが決定通知書になる。今までの代官は文官長として使えとの御達しだ」
「拝見しましょう。……なるほど、家督争いからは外されたと言う事なのですな。承知しました。申し遅れました。わたくしエルナンデスと申しますれば。この代官屋敷の使用人長をやらせてもらっております」
「ああ、頼んだ。早速で悪いが、ここの代官を文官長として雇用する。その旨を伝えて来てくれ。いや、俺も付いていこう。話は早い方が良い」
「承知しました。ではこちらに」
そうして、エルナンデスの案内の下、粛々と代官の交代を行った。別に代官の地位に固執している訳でもなく。という事は不正とも縁遠いと考えても良いのかもしれない。色々とやらないといけないことはあるんだろうが、まずはこの土地の税金の内訳を確認してからの話になるな。色々とやることがある。まずは内政がどのように行われていたのかの確認をしなければならない。
「では、デーデル。過去5年の税の収入と支出を確認したい。資料をここに用意してくれ」
「畏まりました」
ここの代官であったデーデルは結構有能な感じがする。……本来であれば、こんな辺境に追いやられる人材ではないとは思うが、我が父上は何を考えていたんだろうか。いや、優秀だからこそ辺境を任せたのか? 碌でもない人材を辺境に追いやると腐る可能性もあるからな。その辺は貴族としても考えているだろう。
「こちらが私が今までに整理してきた資料になります。過去5年の資料はこちらに。それ以前の資料もこちらに用意しておきました」
「すまないな。色々と確認をしたい。質問もする事もあるだろうが、まずは仕事に戻ってくれても構わん。先に資料を読ませてもらう」
「畏まりました。いつでもお呼びください」
さて、ここ5年でどのような推移になっているのかだよな。伸びているのか、落ち込んでいるのか、停滞しているのか。優秀な文官長だが、伸ばすのはほぼ不可能だと思う。良くても停滞となるんだろうが、どうか。
……やはりか。収支自体は黒字運営をしており、かなりまともな代官だったことが伺える。税もそこまで重くはなく。それでいて商人たちの動きも冬場を除けば活発である。農村からもしっかりと麦の徴収を行っており、飢えている人は殆どいないと。飢えているのは一部の冒険者のみだな。それ以外はマシな暮らしが出来ているというのが資料を見る限りの話だ。これは町の運営は任せてもいいだろう。俺は俺の出来ることをやっていくべきだろうな。正直、転生者だからと言って、内政が出来るとは思わない事だ。代官とは、都道府県知事レベルの事をやらないといけない。それが転生してきた一般人に出来るとは思えない。優秀な部下が居るのであれば、それを使う方がいいだろう。
「デーデル。この5年間での仕事ぶりは見事だと言わざるを得ない。ここまでやれたのはお前の手腕が素晴らしいと言う事なのだろう。そこで俺は考えた。権限の殆どを渡す。これまでと同様にこの町と周囲の村を任せてもいいか?」
「ありがとうございます。……ですがそうした場合、マクシミル様の評価が上がることはありませんが、よろしいのですか?」
「よろしいも何も、俺は家督争いからは降ろされている。既に代官としての道を歩むしかないのだよ。そこでわざわざ優秀な代官を押しのけて、無能を晒すつもりはない。デーデルは今まで通りにこの町の権限を使え。責任は俺に押し付ければいい。俺は俺の出来ることをするつもりだ」
町と村の運営が安定しているのであれば、わざわざとってかわる必要はない。俺の無能をさらけ出すよりはマシである。まあ、面倒だからってのもあるんだけどな。町の運営にばかり時間を取られていたら、俺のやりたいことがやれない。そっちを優先的にしていかないといけないんだから、今後の町の運営はデーデルに任せておけばいいだろう。俺は上振れる事をやればいい。適材適所だな。