不作になったが楽観視は出来ている
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秋になり、普段ならもう収穫してもおかしくない時期でも、麦の成長を見守っていた。そして、雪が積もる前に一気に収穫したらしい。いつもよりも長い時間育てたのにも関わらず、収穫量は4割減となった。約束通りに税として収める量を半分とし、その分は備蓄から賄った。税は今年不作にも関わらず、通年通りの量を要求された。……本家はもしかしたら他の町を見捨てたのかもしれない。本家の決定に若干の怒りを覚えながらも、それでも対策をしているんだから大丈夫だろうという余裕がある。兵士も魔物も各所に配置をして、守りの体制も万全だ。数年間は引きこもる作戦でいる。商人としても稼ぎたいのは山々だろうが、今は生き残ることが第一。稼ぐのは生き残った後でも出来る事だ。
ただ、幸いしたのが野菜である。野菜は不作の影響を受けなかったのだ。麦が4割減なのに対し、野菜は1割も減っていない。出来る限り漬物にして保存をしておくことに切り替えている。塩だけなら沢山あるからな。それに氷室もあるんだ。ある程度の保存は可能である。後はどれだけの期間不作になるのかだ。絶対に1年で終わるとは言えないし、20年先もこのままだという可能性もある。太陽活動の弱化が問題なんだから、どうしたって影響は受ける。それを早い段階で知れていたのにも関わらず、対策が遅れたことに若干の後悔があるんだが、後悔しても何も変わらない。今は皆で生き残ることを考えるのが先決なのだ。
とは言いつつも、割と楽観視出来ているのが現状である。麦の収穫量が4割減になったとしても、そもそも面積が倍以上になっているのである。寧ろ10年前の収穫量と同等はあるんだ。村人が増えたからと言っても、野菜も沢山あるし、アンデッドが農業をするようになってからはそもそもの収穫量が増えているのだ。……実は、俺が着任した当初よりも麦も野菜も収穫量があるのだ。俺が着任したのが10年と少し前。その頃よりも大幅に変わり果てた村は、対策が無くともなんとかなるくらいには成長して居たのだ。農地面積の拡大や、農業のやり方を工夫してきた甲斐があったと言う事なのである。現状、村にいる人々は、多少の不便はありつつも、なんとか暮らしていけるだけの収穫量は確保しているのである。
「開拓を推し進めておいて良かったとこれほど感じたことはない。お陰で命拾いしたからな。食べ物が不足するかと思われたが、そこまで大きな問題にならなくて済みそうだ。麦も十分にあるし、野菜も潤沢にある。そこに肉類と魚介類まで手に入っているんだ。俺の管理する領土はこれ以上の冷夏にならなければ、なんとかなるだろう。他の所については知らないが」
「そうですな。こちらの領地をきちんと治めていれば、文句は言われないかと思われます。……まあ、余裕があれば助ければ良いと言う事なんでしょうが、この冷夏が何時まで続くのかも解らない現状で、助けに入ることは不可能でしょう。共倒れになる可能性もありますし」
「だな。これが20年続くと言われたら流石に困るが、そこまでは続かないだろうという甘い考えで行動しては、足元を掬われかねない。永遠にこのままであると仮定して動かなければいけない。という事は、大開拓もそのまま継続しなければならないと言う事だ。今年で大開拓を始めて9年。既に農地は倍以上になっているが、麦を育てるだけならアンデッドだけでも出来るからな。野菜は流石に人の手が必要だが」
アンデッド農法がかなりの躍進を遂げているのだ。村に配置されたアンデッドは年々増加している。それもそのはず。村の近くで倒された魔物はその場でスケルトンにされてしまうのだから。労働力は幾らあっても足りるという事はない。あればあるだけ使えるのだ。しかもアンデッド用の骨も商人を使って運び入れている。労働力だけで考えれば、アンデッドの方が多いまであるんだから。アンデッドはこういう時こそ役に立つ。不眠不休で働けるし、食事も排泄も不要だ。ちょっとばかり頭が悪いという事を除けば、労働力としては最上なのだよ。
そして、忘れてはいけないのがスライムの貢献度だ。スライムの評価は下手をすればアンデッドよりも高く高く昇っている可能性があるからな。雪かきにも使えるし、畑の土を改良するのにも使える。こんな万能な魔物は居ないだろう。惜しむべきは進化しない事なんだよな。進化して、農業に特化してくれれば良かったんだろうが、そう上手くはいかないものなんだ。
魔物やアンデッドは使い方次第。これが解っているだけでも生産力は大きく変わってくる。農村に力が入っているのである。農業無くして人口は支えられないからな。人間は食事をしなければ生きられない。食事を作るための食材は、主に農業が担っている。農産物を外国に頼るという事が間違っているのだよ。食料を外国に頼っているというのが間違っているのだよ。食料自給率は、100%が基本である。200%が普通である。300%が望ましいのである。食料を外国に頼っているなんて、ギロチン台に首を乗せているのと同じなのだよ。食料は国の基本。領地の基本。食料無くして国の、地域の発展なし。全ては食料で決まるのだ。
「問題は何処までこの冷夏が続くのかだ。ずっとではないだろうが、冷夏が続いて、その間に戦争を吹っ掛けられたら、流石に厳しいぞ? 食えない兵士は戦えない。食事も無しでは兵士は動けない。腹が減っては戦は出来ぬとはよく言ったものだ。食料で苦慮しているのに、戦争なんて出来ない。……もっとも、アイスクローブ王国はここよりも南にある。冷夏の影響も関係なく食料を得られている可能性もある。苦しんでいるのはタイガランド王国だけという可能性もあるからな。その場合、戦争した方がアイスクローブ王国としては得だ。というか、世界的に不作であるならば、食料を求めて戦争をする可能性もある。そう考えた場合、どちらにしても負け戦になる訳なんだが……」
「食料が原因で負けたとあっては、流石に国が持たないでしょうな。出来れば国民には知られたくない事実でしょうから。そうなった場合、賊で溢れた国になるでしょうな。……もっとも、国が変わっている可能性もありますが」
「笑えないからな。本気で負けが見える。打開策が無いのが厳しい。太陽活動が影響しているのであれば、太陽を活性化させないといけない訳なんだが、そんな事は人間には不可能だ。精霊でも出来ない。出来るのは神だけだ。太陽神を呼び出せればあるいはという所か。そんな事出来るわけがない」
ユニークスキルやギフトの中にも無かったからな。もしかしたら、太陽神の祝福等のギフトがあるのかもしれないが、太陽に影響力を及ぼせるのかと言われたら、難しいだろう。寧ろその様なギフトがあるのであれば、既に誰かが使っていて、冷夏を無くしているだろうしな。もしかしたら、既に使っているからこの程度の冷夏で住んでいる可能性もあるんだが、そんな事を考えても無駄だからな。大切なのは今だ。現状をどのように打開していくのかが問題である。
「だがまあ、やることは解っているか。大開拓を続ける。アンデッドを活用し続ける。これで不作に対応する。不作になるのであれば、作付面積を増やせばいい。麦を作れる場所を増やせばいい」
「それしかないでしょうな。現状できることは」
それしか出来ない。選択肢が存在するならそれをやればいいんだ。何も出来ないという状況が一番不味いからな。出来ることがあるのであれば、やっておくべきなんだよ。




