内政は予想通り。それじゃあ駄目なんだ。
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「内政内政とはいうが、年々やることが減っていくな。仕事が増えているはずなんだが」
「安定している証拠でしょう。やることが無い方が健全です。予定通り内政が行われているという事ですから。冬の間に予定を立てて、上手く回っているのであればやることは減ります。寧ろやらないといけないことが多い方が問題ですな。予定外の事態が起きている可能性が高いですから」
「そうは言うがな、デーデルよ。想定外が起きないという事は、それだけ成長していないと言う事にも繋がるんだ。俺たちが予想した通りの成長で止まっていると言う事でもある。勿論だが、予測に妥協や願望は入れてはいけない。それは間抜けのする事だ。だから予想通りなのは良い事なのは解る。解るが予定以上にもなっていないと言う事なんだよ。これが意味することは、そこまで成長していないと言う事でもある。予想の範疇に収まってしまっていると言う事なんだよ」
内政とは、上手く予想を立てて、今後起きるであろうことを予想して、組み立てるものなんだ。勿論だが、想定外の事もあり得る。その時は必死に修正をしなければならない。だが、今の状況はどうだ? 順調に予想通りに進んでいる。……何が不満なんだと思うかもしれない。が、内政が整ったという事は、予想外の成長が無いと言う事でもあるんだ。これに関しては色々と思う所があるんだよ。確かに成長すると見込んだ。この位は成長するだろうと。そして、その通りに成長をしている。悪い事ではない。が、予想通りなんだよな。予定通りでは無いんだ。
予定はもっと成長していたはずなんだよ。戦争が再び起きるその時に、相手国を容易く滅ぼすことが出来るような予定ではないが、善戦出来るだけの戦力が集まる予定だったんだ。だが、予想はそれを下回るという結果になっていた。その通りに推移している現状は、余りよろしくない。願望を足さないと予定通りにならない。それはそれで不味い事態なんだよ。
魔物を主戦力とするのは変わりない。だが、人間の兵士が0では示しがつかない。色んな葛藤があるんだよ。戦力としての魔物は充実してきている。こっちは予定通りなんだ。人間の成長が予定よりも遅い。それは仕方がない事ではあるんだけど、それも予想できてしまったことが問題なんだよな。
「高望みをしているのは解っている。解っているが、これでは予想通りになるぞ。予定までいかない。予定ではもう少し戦力があるはずだっただろう? 上振れていかないと後々酷いことになってしまうぞ。原因はよく解っているつもりだが」
「原因が解っているのでしたら、私たちが出来ることは何もないと言ったところでしょうな。これがマセル町や村が原因でとなると、梃入れが出来るんですが、原因が原因ですからな。今回ばかりは傍観するほかないでしょう。流石にこちらでは何ともしようがないので。それとも、本家に連絡を入れますかな?」
「……流石に文句は言えないだろう。本家や兄たちの内政が遅れている所為で、こちらも発展が遅れているなんて言ってみろ。どんなことになるのかは解るだろう?」
そうなのだ。予定ではもう少し、他の町が成長している所だったのだ。それが予定よりも成長が下回っている。それはこちらに来る商人の数にも関係してくるんだ。こちらから領都へ向けて商人が商品を売りに行くのは、まあ良いんだ。予定通りの動きなんだよ。だが、こちら側へと商品を買いに来る商人の数が少なすぎるのだ。予想通りではあるんだが、予定よりも大きく下回っている。
経済的に回っていないことを示しているんだよ。循環が起きていないんだ。レッタニンが人口を増やそうと建築の件を言いに来たのが解る。こちらの成長速度に他の町や領都が追いついてこないために、お金が循環していないのだ。1つの町だけが成長していても、そこまで大きな波にはならない。他の町にも成長をしてもらわないと、お金が動かないんだよ。
お金が動かないという事は、税収もそれなりで済んでしまうと言う事なんだよ。税金は商会から取っている。個人の収入からは、この町では取っていない。この町の税収は商会の利益の中から出てくるんだ。個人から取ったら人口が増えないからな。ある所から取るというのが基本なんだ。その分は買い物をしてくれるし、結局は税として上がってくるんだが、税収も予想通りとなっては問題だ。内部は回っている。これ以上回らないって位には回っている。後は外部の回転率を上げないと、成長が頭打ちなんだよ。これ以上発展をしようと思うと、人口が必要になってくる。それでは戦争に間に合わない。今が一番耐える時なんだ。今は内政に全力を注ぐときなんだ。なのに、内政が進まない。他の町の内政が遅くてこちらに波及してこない。
「しかし、内政が上手くいってないからそっちが頑張れと指摘をしてみろ。確実に反感を買うぞ? 事実ではあるが、そんな事は指摘できない。マセルが上手く回っているのは確かだ。これ以上は望めないくらいに回っている。領民のお金の使い方もいい感じになってきている。しかしだ。それでも内需だけでは限界が来る。人口が少ないんだから内需だけでは、どうしたって品物が余ってしまう。その為の外需なんだが、何処も景気が良いという話は聞かないからな。マセルだけだぞ。ここまで景気が良いのは」
「それはそうでしょうな。マセルでは普通の町では手に入らない物が手に入るのですから。それらを目玉として売り出している以上は発展しない訳がありません。しかし、他の町にはそれら特産品が少ないのです。無いとは言いませんよ? ですが、大きなお金になる物が少ないのですから、この位の成長になるだろうという試算が出来るわけです。その結果、予想通りなのですから、こちらの考え方は間違っていないと言う事になります」
「デーデルの言う事が正しいのは解っている。解っているが、危機感がまるで足りない。戦争まで残り半分だぞ? もっと内政を回さないといけないのは目に見えているだろう? 停戦期間が過ぎたら出兵になることは確実だ。それが解っているから、こっちは準備に準備を重ねている。何故に領都や他の町がここまで暢気にしていられるのかが解らない。前回は殆ど負けたのと変わりがないんだぞ?」
「危機感を覚えているのがマクシミル様だけなんでしょうな。なまじ国境から遠いですから、危機感が薄いのは解ります。そこまで警戒しているのは侯爵家の方々や、王族、公爵家の方々になるでしょう。伯爵家以下の貴族で焦っているのはマクシミル様だけなのでは?」
焦ろよ。前回どうなったのかも知らないのか? それでは話にもならないんだよな。前回は負けたんだ。勝ったことになっているのは、俺たちが時間ギリギリまで抜き合いをしていただけだからな。ダンジョンコアという存在が無ければ、そんな事は出来なかった。無駄にダンジョンポイントを使って占領地を増やさなければ、こういう事にはならなかったはずなんだよ。そのことが理解できていないのかね? しかも全力ではない相手に対してそれだからな。次回は全力で来ることが予想される。そんなときに、抜き合いなんて出来ると思うか? 膠着状態に持っていくのが関の山だと思うぞ。元帥閣下にはちゃんと知らせたが、それがいつ情報共有されるのかが解らない。そもそも俺たちの所にも回ってくるのかも解らない。情報を使えない貴族家もあるだろう。知っているからなんだというのだ。使わなければ意味がない。それを解っていない貴族家が、多分だがあるんだろうな。特に伯爵以下の貴族家は国境に接していないから、そうなるだろう。前途多難である。どうしたものか。




