人口増加計画
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春。また1つ歳を重ねた。代官に任命されてから約10年になる。今で25歳だからな。15歳の時に代官になったんだから、その位である。役目はしっかりと果たしていると思うが、さて、その評価はどの程度のものになるんだろうか。この町、マセルが俺の評価になる訳なんだけど、何処まで評価をされているのかは不明だ。父親であるゴールドレッド子爵からは何の連絡もない。多少は気にしろとは思うんだが、放置されている事にも慣れてしまっているからな。過干渉にならないだけマシだろうとは思う。いろいろと秘密が多いからな。出来れば話さない方がいいだろうという事もある。特にダンジョンの話なんかはそうだろうとは思う。気が付いているかもしれないが、聞かれないのであれば話さない。それでいいと思うんだよな。
まあ、兄たちがどんな内政をしているのかには興味があるが。比較的大きい町を任されている筈なんだよ。代々当主選定のために使われている場所だからな。内政もその分しやすいんだろうとは思う。こっちよりも条件としては僅かだがいいはずだからな。こっちは本気でギリギリの北限地帯。それを考えると、まだまだ難易度的には優しいとは思うんだけどな。それでも内政に失敗する可能性もあるんだから、内政は難しいんだよ。そう簡単にはいかないんだよな。やってみて解ることもある。思ったよりも人口が必要だと言う事がよく解るんだよ。産業を起こそうにも人口が必要になってくる。人口は畑では取れない。畑で取れればこれほど簡単なことは無いんだが、実際にはそうも言ってられないんだよ。
人口を増やしたければ、最低でも3つの要素が必要になる。1つ目は食べ物だ。食べ物が無ければ人口が増えない。労働力として子供が欲しいと思っても、食わせられなければ産むだけ無駄なんだ。餓死するのであれば、労働力としても使えない。だから食料が余っていることが必須になってくる。2つ目は住む場所だ。こんな寒い地域では、住む場所がないと死んでしまう。暖かい場所が必要なんだ。スラムが無いのがその理由だ。スラムで住むようになると、数年で死ぬ。寒さはそれほどまでに厳しいんだ。住む場所が無い人は生きられない。これは寒い地方だからの特色だろう。3つ目は仕事。食べ物を買えて、暖かい衣服を着て、それなりの住宅に住むには金が必要になってくる。それを稼ぐためにも仕事が必要になってくるんだよ。仕事がない場所では人口が増えない。その日暮らしも厳しい人が、子供を作るのかって話にもなってくる。金金金と五月蠅いかもしれないが、金は絶対に必須。これが無ければ人口は増えないと思ってもいい。
今のマセルにはこの3要素がある。食べ物も種類はともかく、量は豊富にあるし、住む場所もまだまだ空き家が残っている。仕事に関しても土木作業員はまだまだ募集中であるし、そもそもユニークスキルやギフトを活用し始めたのは最近だ。技能さえあれば職は紹介できる。競合するなんてまだまだ先の話だ。数万人の人口で漸く競合相手が出てくるくらいだろう。それまでは人口を増やして増やして増やしまくる程度で良いんだ。その先の事はこっちでも策があるので、それまでは人口をどんどんと増やしていっても構わない。
因みに冒険者もそこそこ稼げているので問題はないんだよな。冒険者はそもそも魔物を討伐するものという認識があるかもしれないが、言ってしまえば何でも屋な訳である。討伐だけが彼らの仕事ではない。採取や雑用も冒険者の仕事なんだよ。特に採取は稼ぎが良いからな。冒険者でも人気の仕事だ。ポーションは幾らあっても足りない。魔物村からも供給されているとはいえ、その程度の量で賄えるほど、ポーションの市場は小さくない。特にトルクメニア山脈の方向では、毎日何千本と無くなるんだから、採取は必須項目である。
勿論、それ以外の仕事も引き受けるんだけどな。雑用で金を稼ぐ冒険者もちゃんと居るんだよ。単価は多少低いかもしれない。だが、困った時に頼りになる隣人を見つけるには、そういった雑用も必要になってくる。寒い地域では協力して生きていかなければならない。その協力者を探すためにも、雑用の仕事も受ける必要があるんだ。
「それで? レッタニンが来るのは珍しいが何かあったのか? この時期だと領都に商売をしに行っているはずだと思ったんだが」
「はい。そうなのですが、子供にも経験をさせないといけないですからな。今回は私が居なくても商売が出来ると言う事を証明してもらわなければならないと思いまして。私の商会も昔を思えば随分と大きくなりましたからな。息子が跡継ぎですが、この位は熟して欲しいという親心ですな」
「そういう事か。そろそろ代替わりの時期になってくると。他の商会でも似たような……、いやまだ早いか。他の商会はもう少し後になるだろう」
「ぐふふふふふ。そうでしょうな。ですが、ちゃんと後継も育ってきております。その辺はどの商人も同じですからな。ここまで優遇されているのに、商売で失敗する訳には参りません。それこそ、私たちの団結が揺らぐことになってはならないのです。辺境の商会の敵は外にあるという事を学ばなければならないのです。小さな町で争っていては生き残れないのですよ。おっと、小さい町とは失礼しました。今後に期待が持てる町ですな」
「いや、小さい事は事実だ。今後にも期待しているが、まだまだ小さい。最低でも今の領都と同程度までは成長させないとな。人口が簡単に増えてくれるに越したことはないが、そうも言ってられないからな。簡単に増やそうと思えば増やせるんだが、それを望む者なのかどうかの見極めが必要になってくる。今はそこまで数がいる訳では無い。魔物村での生活も悪いものではないからな。こちらに移住してみたいという奴らは少ないんだ」
「魔物人ですな。彼らは実に勤勉だ。人間よりも生きる事に貪欲でありますからな。技能も人間と遜色ないどころか、上回っている魔物人もいますので。こちらとしては仕事を受けて貰っている身ですからな。損をしない程度には働いてもらっていますとも」
「あくどくはやるなよ? 戦闘力は人間の比じゃないんだからな。良き隣人として付き合わないと、この町では住めなくなる。それはよく解っているんだろう?」
「ええ、ええ。勿論ですとも。しかし、大分空き家が埋まって来たとは思いませんかな? そろそろ住宅を建てることも視野に入れておいた方が良いのではないかと思うのですが」
「それはそうだろうな。安心しろ。空き地には今年から建築を予定している。……農村が大きくなるのは良い事だが、それにも限界が来るだろうからな。それを受け入れる体制を整えておかないといけない。魔物人が住むことになったからな。住宅が少なくなっていることは知っている。今年の予算にはその辺の事を入れてある。心配しなくても住宅は増やす。……とりあえずは外壁いっぱいまでは住宅を建てていく予定だ。その後は外壁を移設し、その隙間にどんどんと住宅を建てていく。最終的には10万人の町を目指していく予定だ。それだけの下地は揃えておかないと。俺が生きている内には無理だろうが、次代の事を考えるとな」
「それが良いでしょうな。人口は力の象徴でもあります。大きくなる分には大歓迎ですな」
人口は力だ。人間だけしか駄目だと言う事はないし、魔物人も受け入れるべきだとは思うが、それにしてもだ。まずは住む場所を用意してやらないといけない。簡単に言ってはいるが、レッタニンも先々を見据えての話として持って来たのだろう。本当に抜け目の無い奴だ。




