精霊と雷の素
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「あらあら、大きなお友達がついてきてしまったのですね。しかし見えないはずですが、何かを感じ取っているのでしょうか? あら? 人間が乗っていたのですか。なるほど、誘導役が居たのですね。それならば、納得です」
「ついてきたのだー! 楽しかったのだー!」
「大きいのがいっぱいなの!」
「なんなのかな! なんなのかな!」
「はいはい。後で話しましょうね。では、そこの人間、こっちに来ませんか? お話しましょう? 折角来てくれたのですから」
俺は今、光る妙齢の女性から話しかけられている。何を言っているのかとも思うが、俺も何を言っているのかが解らない。見た目はかなり綺麗な女性である。光っていることを除けば、とても美しい女性だ。俺と同い年かと言われたら、信じられないとは思う。が、見た目はその位なのだ。しかし、漂う雰囲気はかなり年上の女性に感じる。とても妙な、なんといえば良いのか、とにかく今の所解っているのは人間ではないという事くらいか。しかも、あれは子供か? 沢山の子供が光ってその女性の周りを飛んでいる。なんなんだあれは。
「……ニブルヘイム、見えているか? 聞こえているか? 何か感じ取れることはあるか?」
『……何も見えんし感じ取れんぞ? そもそも聞こえるとは何のことだ?』
「あらあら、人間が魔物とおしゃべりを。……なるほど、そういうギフトを持っているのですか。安心してくださいな。敵ではありませんので。魔物には私たちは見えないのですよ。私たちは魔物に干渉されない存在なのです。まあ、こちらから干渉することはありますが。危害は加えませんよ? なので少しお話しませんか?」
「……ニブルヘイム、前へ進んでくれ。……止まってくれ。暫くは待機だ。……これでいいか?」
「はい。人間と話をするなんて初めての経験ですが、よくもまあこんな場所に人間が来ましたね?」
「……偶然だがな。闇に光る明かりが気になって追いかけて貰った。その前に、今冬はよく雹が降ってな。それの調査をしていたら、偶々見つけたんだ」
「あらあら、それではこの子たちが遊んでいて迷惑をかけてしまったようですね。恐らくですが、雹はこの子たちの影響でしょう。人間のいる場所まで遊びに出かけていたのですか?」
「人間いたよー! 沢山居たよー!」
「でもでも、見つかってないの! 今日が初めてなの!」
「まあまあ。あまり遠くまで行くのは感心しませんよ? 人間は精霊を害することが出来ますからね。見つからない様にする方が良いのです」
精霊? 精霊は知っている。前世の知識だが、自然の力そのものといった感じか。……こっちでは聞いたことがないな。精霊なんて単語は聞いたことがない。何で精霊が居るのかは置いておくとして、そもそも精霊がなんなのかも解っていないんだよな。まあ、害を加えることが出来るらしいが、そんな事は置いておくとして、スノードラゴンよりもやばい相手の可能性が出てきて、この極寒の闇の中、冷や汗が止まらない。
「精霊とはなんだ? 正直な所、見るのは初めてだし、聞いたことも無い。まあ、なんというか、自然の力そのものという感じを受けるが」
「あらあら、知らないと言いながら、核心をついてきたのは素晴らしい事です。流石は異世界から来た魂と言うだけはあるのでしょうね」
「異世界から来た? 何の話だ?」
「ああ、惚けなくとも大丈夫ですよ。見えてますから。他の人間の魂とは形が違いますからすぐにわかります。そうですね、例えるのであれば、この世界の人間の魂は三角としましょう。ですが、貴方の魂は丸なのです。何処の世界からやってきたのかは知りませんが、異世界から来た者だと言う事は解ります。これが世界に対して悪い影響を与えるのであれば放置は出来ませんが、貴方はまだ大丈夫なようですね。安心しました」
……行動如何に因っては死んでいたと。そういう事か。ただ、世界に悪影響と来たか。それがなんなのかが解らないとこちらも困る。聞いてみるか。聞くだけなら問題ないだろう。寧ろ聞かない方が問題があるかもしれん。俺は今、地雷原を歩いているのと同じと言う事だからな。
「聞いていいか? 悪影響を与えるというのは何の話だ?」
「そうですね。明確に禁じている訳ではありませんが、人間が使い始めたら災害を起こすという条件のある技術があります。異世界から来た貴方には解るかもしれませんが、雷の素を使う事は世界が禁じています。魔物は使えるのですが、人間は使ってはなりません。ですので、魔法も無いでしょう?」
「……電気か。そうだな。魔物ではそういう存在が居るのは知っているが、人間が使うのは禁止なのか。一応聞いておいても良いか? それは何故だ?」
「さあ? それを決めたのは私ではありませんから。でも、雷の素は世界からエネルギーを奪う事です。それは精霊からもエネルギーを奪う事に他なりません。故に世界が禁じていなくても、私たちは雷の素を使う事を良しとはしないでしょうね。災害を起こしてでも、止めにかかると言う事です」
俺が電化製品を作ろうとしていたら、世界の敵認定されていた可能性があるのか。……流石に怖すぎるだろう。電気を使うと世界からエネルギーが奪われる、か。災害を使ってでも止めようとする、か。なんとなくだが想像できてしまうのが問題だな。世の中には危険な事と解っていてもそれで電気を得ようとする動きがあった。原子力発電が一番危険だと言われていたが、実はそうではないとも聞いたことがある。太陽光や風力、地熱もそうだ。クリーンと言われているエネルギーも、簡単に言えば地球からエネルギーを奪っていたと言っても過言ではない。本来あったはずの太陽からの光を、風の力を、大地の熱を、地球から奪って電力にしているのだ。地球の寿命を縮める行為だという一部の狂人めいた人も居たんだが、この世界ではそれらが禁忌になっている可能性があると言う事だな。
「例えばだ。火力発電はどうだ? 石炭や石油を燃やして電力を得た場合、それらも禁止されるのか?」
「そうですね。悪影響は少ないでしょうが禁止です。明確に禁じている訳では無いと言うのはそういう事です。石炭を燃やすのは禁止ではありません。それからエネルギーを得られることは知っていますし、それもこの世界からエネルギーを奪う事にはなるのですが、人間が生きるのにそれらが必要な事もまた事実ではありますから。ですが、それを雷の素へ変換するような事を禁じているのです」
……蒸気機関や内燃機関を禁止している訳では無いと。まあ、作ろうにも難し過ぎて構造も解らないんだが。いや、蒸気機関くらいはなんとかなるか。作るかは別としてもだ。最悪な事になれば、蒸気機関から電力の発明に辿り着きかねん。そうなると、蒸気船なんかも止めておいた方が良いな。……やっても問題ない事と言えば、水力を動力に変換するくらいか? いや、これもな。下手をすると世界からエネルギーを奪ったと思われかねん。
「水力を使って、ものを動かすことは禁止に当たるか? 位置エネルギーを運動エネルギーに変換するのは問題があるのか?」
「問題ありませんね。先ほども言いましたが、世界からエネルギーを奪う事でも、雷の素を作り出さなければ問題ありません」
「例えばの話だ。ライトニングワイバーンから電力を取り出せたとしよう。それを使う事は可能か?」
「うーん。それも駄目ですね。最終的には雷の素を使っていますから」
とりあえず、電気を使わなければなんとかなりそうだな。……電化製品に詳しくなくて助かったな。下手をすれば世界の敵だった可能性がある。何処にどんな地雷が隠されているのか解らないのが一番辛い。解っただけでも御の字だ。




