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ep7.半年後に殺して頂きたいのです

「…今日から半年後に、私を殺して頂けませんか?」


「っは?」 


「それと厚かましいことは承知の上で、それまで公爵家に滞在することを許して頂きたいのです。今日はこれを伝えるために来ました」


私が一通り話すと、レオは明らかに機嫌が悪くなった。そして、またかとでも言うふうにレオはため息をついた。


「お前、俺に何をしてもらうのが目的だ?死ぬなと言ってほしいのか?それともこれを口実に公爵家に金目当てで居座る気か?」


…この人は何を言ってるんだろうか。それは自分がどれだけ自意識過剰か証明しているようなものだ。


けど、多分今レオが言ったことは、全て実体験に基づいてのことなのだろう。

生憎、私にとっては関係のない話だが。


「どれも違います。死ぬなと公爵様に言ってほしいのではなく、殺してほしいと言っているのです。それと金目当てではありません。お金は自分で持ってきましたし、公爵様にお金の出費はありません。むしろ迷惑料だと思って、私が死んだ時今日持ってきた全てのお金は公爵様が受け取ってください」


これで一通りの説明は終えた。後はレオがどう返してくるかだけど…。

これでも納得してもらえなければ、私が誰にも言ったことのない秘密を言えば、納得してもらえるかもしれない。


「…!はっ…面白い。その強がりがどこまで耐えられるか見ものだな。良いだろう。部屋を用意してやる。だがそれ以外は自分でしろ。侍女も与えない。そして安心しろ。半年後にはしっかり殺してやる」


侍女を与えないなんて、他の令嬢からすれば怒り狂って出ていっていたかもしれないが、私はいない方がむしろ都合が良かった。

万が一、私が吐血しているところを見られればレオに報告されてここを追い出されるかもしれない。


そんな不安が一気に消えたのだ。嬉しくて堪らない。


「光栄です」


「まだ余裕そうだな。ならば半年間、俺の近くで女避けをすることも条件に入れる」


「かしこまりました」


余計な一つが追加されてしまった気がするが良しとしよう。

結局殺してもらえるのなら何も問題はない。


「話はこれで全部か?終わったなら俺は仕事に戻る」


「はい。滞在を許可して頂きありがとうございました」


私がお礼を言うと、レオは何も言わず応接室を出た。代わりに公爵家のメイドが部屋へ案内してくれると言うので向かうことにした。


「ここです。お嬢様」


"……本当に言ってるのだろうか"


「ありがとう。まさかだけど、部屋を間違えたりなんてしてないわよね?」


「はい。トイレは隣にありますから」


「そう、ありがとう」


さて、まずいことになった。

今私がいる部屋は、物置部屋と言っても差し支えないほど埃まみれな部屋だ。


前世であれば部屋があるだけで贅沢だった。それは今も変わらない。

だけど、この体調でこの部屋は無理がある。

埃まみれなのは私が掃除すれば何とかなるとして、問題は寝る時。


この部屋にはどうやらベッドがないようだった。置いてあるのは薄いシーツと布団。

これだとレオに殺してもらう前に死ぬかも。


いや、それはそれで良いのかもしれない。誰の手も煩わせずに済むのだから。

病気で死ぬのは少し癪だから病死は避けたかったけど、そもそもこんな自己中心的な考えをレオに押し付けてしまったのがいけなかった。


やっぱり帰った方が…


ーコンコンー


「っ?!はい…!」


「旦那様からお食事へのご招待があります」


「すぐに行きます」


突然の侍女からの報告に戸惑ったものの、私はすぐに用意を済ませてダイニングまで向かった。

着くと、そこではレオが待っていた。一体どうしてだろう。先程出費はさせないと言ったばかりなのに。


「来たか。そこに座れ」


「…では、失礼します」


そう言って、私はレオの座っている場所から一つ空けた場所に座った。

私が座ってすぐに料理が届き、夕食の時間が始まった。


緊張と不安から味は全く感じない。

それでも平然を装っていると、レオがようやく口を開いた。


「お前は、どうして俺に殺してほしい?お前は貴族なんだ。生活に困ることなんてないだろう。それとも、一時の迷いか?それなら今のうちにやめておけ。いざ死ぬ時後悔するぞ」


ああ、やっぱり、レオは変わっていなかった。

小さい頃のレオのままだ。


「…公爵様は、お優しいですね」


「は?俺が優しい?夢でも見てるんじゃないのか」


ここは現実だというのに、レオも随分訳の分からないことを言うようになったものだ。


「夢は見ていません。公爵様はお優しいです。優しくない方は、わざわざ忠告なんてしませんよ。そして一時の迷いではありません。私は公爵様に殺してほしいのです」


「…どうしてそこまで……。お前は見たところまだ若いだろう」


「…あはは、ですね。それより、何故今日私を夕食に招待したのですか?」


あからさまに話を逸らしたことをレオは絶対分かっている。

でも話したくない。話しても意味なんてないのだから、話す必要もないだろう。


「ああ、明日から早速女避けとして動いてもらおうと思う」


どうやらさっそく仕事が来たらしい。幸いなことにまだ体調が悪くなる気配はないので、レオの頼みを受け入れることにした。

そもそも拒否権があるかどうかは分からないけど。


「それで、私は何をすれば良いのでしょうか」


聞くと、ぶっきらぼうに応えた。


「街に出掛ける」

最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見て頂けると嬉しいです!

評価&グットで応援、ご指摘よろしくお願いします

m(_ _)m

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