ep33.久しぶりのお出掛け
"…………どうしてこうなった…?"
私が目を覚まし、お兄様と一緒に暮らすことが決定した翌日。目を覚ましたその日はレオがずっと私のそばに居た。
そして次の日の今日。
「どうしてリアム兄様とルイス兄様までここでお仕事を?」
レオはもういつものことなので気にしなかった。だけどお兄様たちもここで仕事をするなんて想定外だ。
各々に自分の部屋を持ってる意味を聞きたくなった。
「当たり前だろ?俺たちは世界で一番ソフィが好きなんだから」
うーん…当たり前だと言われても困る。
あと3ヶ月で死ぬ人間が世界で一番なのは後が辛いだけ。
「…そのうち世界で一番ではなくなります。お兄様も公爵様も後継を残すために愛せる人を見つけなくてはなりませんよ?」
レオは公爵の位があるため絶対なのだが、お兄様もキャンベル伯爵の養子ということで後継者候補だ。
どちらが伯爵位を継ごうが、二人とも騎士として国に多く貢献しているため子爵の位を持っている。
結局のところ、どのみち後継者は考えておかないといけない。
「いないよ、好きな人なんて。俺たちはソフィ一筋なんだ。な?ルイス」
「当たり前だろうが。」
"いやいやいや…な?じゃないのですよお兄様"
ルイス兄様も当然のように肯定するのはやめてほしい。
……でも
「フフッ、嬉しいです。リアム兄様、ルイス兄様」
少し嬉しい。
十一年間も顔を合わせなかった私の兄がここまで私を好きでいてくれるなんて思ってなかったから。…少々重い気はするけど。
「……………」
「えっと、公爵様?大丈夫ですか?」
「…っ!ああっ、大丈夫だ。それより、身体は辛くないか?」
「……っふふ…っ…」
レオの言動につい笑ってしまった。
だって
「…?どうした?」
「いえ、私はベッドで本を読んでいるだけですので、どこも辛くありません。」
「そうか。」
レオは優しい顔をして私の頭を撫でる。
レオは私を撫でる一方で、私にはレオが可愛らしい犬に見えて仕方がないのだ。
心から私を心配してくれているのは分かっている。
分かっているけど…どんどんレオの過保護っぷりが露呈しているうえ、私の体調を心配する姿が前世助けてもらった小さいレオそっくりなのだ。
口調は大人っぽくなったものの、表情そのものは変わっていない。
「…ありがとうございます。公爵様」
これからこんな風景が日常になるのだと思うと、結構楽しみだったりする。
「…ソフィア。」
「はい?」
少しだけ間を置いてレオが私の名前を呼ぶ。
レオが私をソフィアと呼ぶたびに心がくすぐったくなる。
名前を呼ばれることがこんなに嬉しいものだとは知らなかった。
今まで名前を呼ばれる時は叱られる時か義務的な時に仕方なくのものでしかなかったから。
だけどレオやお兄様が私の名前を呼ぶ時は親しみを込めて言ってくれる。
「今度四人で街に行かないか?久しぶりに甘いものが食べたい。」
「四人…?俺たちも一緒に行ってよろしいのですか?」
「お前たちが来ないでどうする。またソフィアと関わる機会を自ら減らすのか?」
「っ…!いいえ、光栄です。是非共にいかせてください。」
私が話さない間に会話は淡々と進んでいった。
話を聞いていると、少しお兄様と公爵様が仲良くなった気がする。
これから一緒に暮らすのなら仲の良さは大切だ。私も私の好きな人たちが仲良くなってくれるのは嬉しいし大歓迎だ。
「それで?ソフィアはどうだ?」
「もちろん行かせてください。一緒にデザートを食べるのは久しぶりですね。」
「そうだな。ソフィアと食べるデザートが一番甘くて美味い。」
何故だろう?食べ物は誰と食べても同じ味なのだけれど。
レオがそう言うならきっとそうなのだろう。
「そうなのですか?私も、公爵様と食べるデザートが一番美味しいです。なのでデザートや食事の時間も一緒に食べられるのが楽しみです」
「っーー〜…!不意打ちは卑怯だ…」
そんなこと一度もしていない。
そもそも何の不意打ちなのかも分からないので聞いたところレオにはぐらかされたうえ、お兄様たちには何故か呆れられてしまった。
結局最後まで理由は分からなかった。
◇◇◇
レオが街に行こうと提案してくれて四日。私の体調も万全とはいかないがある程度は回復した。
私の体調が完全に治ることはない。徐々に心臓が衰弱するため、少しずつ体力もなくなり体調も悪くなるからだ。
幸いなことに、まだ出掛けることが出来るほどの体力は残っていたのでそれまではゆっくり身体を休めた。
「ソフィ、本当に大丈夫?」
「大丈夫です。リアム兄様」
「そうだ、無理はするなよ。」
「していませんよ、ルイス兄様」
「辛くなったらすぐに言え。分かったな?」
「分かりました。公爵様」
三人の行き過ぎな過保護の元でしっかり休息を取れたのでもう大丈夫なのだけど、三人とも中々それを認めない。
流石に久しぶりに外に出たい。ここ数週間は寝てばかりいたので今日を楽しみにしていた。
「そろそろ行きませんか。久しぶりに外に出ることが出来るので今日が楽しみなんです」
「…ああ、そうだな。行こう」
穏やかな笑みを浮かべて今度は初日のように私を置いていくことはしなかった。
差し伸べられた腕を見て戸惑いを浮かべていると、レオは困ったような笑みを浮かべた。
「前に街に行った時はあなたをエスコート出来なかったが、今日はエスコートをさせてほしい。」
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