ep29.会いたかった人・約束
"ここは?"
どうしてこんな暗闇にいるんだろう。
"また、夢の中?"
目を開けると、真っ暗な空間で眠っていた。
暗すぎて今自分がどこを歩いているかも分からない。
しばらく歩き続けていると、とても小さな白い光が二つあった。
私は吸い込まれるように、気がつけばその光に向かって歩き出していた。
歩いて
歩いて
歩いて
ようやく辿り着くとその二つの光はゆっくりと、動いた。
「え…」
私はあっけらかんとした。
そんな私を、二人は優しく抱きしめてくれる。
『…_っ!!』
『『ソフィ』』
優しく名前を呼ばれて、私は思わず泣きそうになってしまう。
だって、会えるだなんて思ってなかった。
もう二度と会えないはずなのに。
『お父様…!お母様…!!』
私は二人を抱きしめ返した。
ただただ嬉しくて、何故いるのか。そんな理由はどうでも良かった。
二人がここにいる。その事実だけで十分だったのだ。
『久しぶりね、ソフィ。ずっと会いたかった。見ていたわよ。あなたがたくさん悩んで、頑張ってる姿。』
『私も会いたかったです。頑張ってなんていませんよ。私はなにもしてないのですから』
このまま話したら泣いてしまいそうで、私はその一言しか喋ることはできなかった。
『ずっと大変だっただろ…。もう我慢しなくて良いんだぞ。』
『っ…』
ずっと、私は我慢なんてしていないと思っていた。だけど、父に言われて初めて、自分が我慢していることに気がついた。
だけど、私が何を我慢しているかまでは私自身分からなかった。
『ごめんねソフィ。会えたばかりだけど、あなたはまだここに来ちゃいけないの。だからもうバイバイよ。』
『……。またいつか、会えますか…。』
『ええ、必ず会えるわ。…その時は、あまり良い状態とは言えないけどね……。約束する。』
『私たちはいつでもソフィのことが大好きだから。少しでも良い。周りの人に頼ってみなさい。……じゃあ、またね。ソフィ』
父が別れの挨拶を言った瞬間、私の目の前は大きな光に包まれた。
あまりにも眩しくて目を瞑り、光が収まると、私はもう一度ゆっくり目を開けた。
すると、今度は見知った天井が私の視界を覆った。
ここでやっと、私は夢から覚めたのだと自覚した。
ふと、両サイドの手に感覚があったので横を向くと、片方の手にはルイス兄様とリアム兄様、もう片方の手にはレオの手が乗せられてあった。
3人とも、目を瞑って祈るように私の手を握っている。
「公…爵、様」
気づいてもらうべく声を出そうとするが、思ったように声が出なかった。
だけど掠れた声でもみんなすぐに気がついたのか、三人とも声を張り上げた。
その声に、私は何故か安心してしまう。
「っ!!ソフィア!」
「「っ!!ソフィ!」」
「良かった…!目が覚めて…」
レオの心配そうな声
「水を取ってくるから待っとけ」
ルイス兄様のぶっきらぼうな口調だけど優しい行動
「まだ座ったらダメだよソフィ。」
リアム兄様の冷静で優しい対応
三人の声を聞いてようやく、私はまだ生きることが出来たのだと実感が湧いた。
それからルイス兄様が持って来てくれた水を飲んで、やっと普通に話せるようになった。
「ソフィア。お前が目を覚ましたのは三日ぶりだ。」
「……三日ですか…?」
父様とも母様とも、ほとんど会話をしていない。なのに、それほど時間が経っているとは思わなかった。
「ああ。…ソフィアが目を覚ますことが出来て、本当に良かった。熱も下がったみたいだが、身体は怠くないか?」
「はい。大丈夫です。………」
「…ソフィア」
レオが優しい声で私の名前を呼ぶ。
「??」
「無理に言わなくても良いんだぞ。」
「ぁ……。」
どうしてレオはわかってしまうのだろう。
前世ではともかく、今世ではレオと一緒に話すようになってから然程経っていないのに。
レオとお兄様たちに話したとして、見放さず側にいてくれるか、まだ私を家族として受け入れてくれるか、そんな保証はどこにもない。
だけどそれでも
「…お話します。ですがその前に」
結果がどうであれ、私はこの人と約束した。
そう。私はレオと約束したのだ。
決して、お兄様たちに話すと言ったわけではない。
「リアム兄様とルイス兄様も、聞くのですよね?」
「…ああ。俺たちにそんな資格はないかもしれない。だが今までソフィから離れていた分、ソフィの力になりたい。聞かせてくれないか…」
「……わかりました。」
私は一度深呼吸をして、レオとお兄様たちに話し始めた。
自分の心臓の鼓動は耳に届いて伝わってくる。
「初めにお兄様。私が公爵家に来た理由から説明しますね。」
私はまず、レオには話している前置きから話すことにした。
「私は、公爵様に殺してもらうために今回公爵領へやって来ました。」
「……………は…?」
しばらくしてから聞こえたリアム兄様の言った『は?』と一文字を私はその日初めて聞いた。
リアム兄様の声は酷く絶望しているように聞こえた。
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