ep23.私は赤の他人のようで
◇◇◇
私の目が覚めて一週間が経った。
今の所心臓が痛くなることもなく、リハビリも順調に出来たので、日常生活に支障は出ないほどには体力も回復した。
体力が回復するまでベッドの上で過ごしていたけど、その間ずっとレオは私の部屋にいた。
わざわざ書類を持って来てここで片付け、今まで一緒に摂ることが少なかった食事も朝食から夕食まで全て一緒に食べるようになった。
幸い、たくさん寝たからなのか身体の不調はあまりなかったため、ボロは出ずに済んだ。
心臓が鷲掴みされる痛みが出たのは、地下牢の時の一回だけだ。
本当に、想像を絶するほどの痛みだった。
少なくとも、死んだ方がマシだと考えるくらいには。
久しぶりに味わった痛みだった。前世も、何度もこの痛みのせいで何度も死にたいと思った。たけどそんな時、いつも私の心を支えてくれたのはレオだった。
小さかったレオが、私が痛みで悶えている時ずっと側にいてくれた。
それがとても嬉しかった。だから今こうして私はここに恩を返しに来ている。
それなのに、もう恩を返せているか怪しいくらいに色んなことをしてもらった。
今日もまた、レオがいつものように私の部屋にやって来た。
「ソフィア、入ってもいいか?」
「はい。」
いつも必ず入っていいかの確認をしてから扉を開けてくれる。こういうところは昔と変わっていない。
「おはようございます。公爵様」
「おはよう」
レオは私がおはようございますと挨拶をすると、ほっと胸を撫で下ろしている。
最近は私と会話をする時はいつも顔が緩んでいるように感じる。
以前は警戒していたからなのか、ほとんど真顔だった。それが今では爽やかな笑みを私に見せるようになった。
本人が気づいているのかは知らないが、少なくとも悪い変化ではないことは確かだ。
けど
「あの、今日もここで仕事をするのですか?」
「当たり前だ。俺のいない間に体調が悪くなるといけないからな。」
ここまで過保護、そしてずっと私の側で居続けるのもどうかと思う。
それでも、レオが幸せならなんでもいいやと思ってしまう私も私だなと呆れる。
「分かりました、ありがとうございます。ですが私にも手伝わせてください。何も出来なくて暇なんです。」
「……分かった。なら、これを頼めるか?」
「おまかせください」
少し間が空いたのは、多分同じようなことが起こらないかという不安が原因だろう。
私も不安じゃないと言えば嘘になる。また信じてもらえなければ、もう一度拷問されることになるのだから。
もうあの痛さはごめんだ。
それでも私が手伝うと言ったのは、やっぱりレオに休んで欲しいから。
早く仕事が終われば、残りの時間は休んでもらえる。そんな思いで午前中は書類整理に専念した。
昼食は今日も一緒に摂り、午後も頑張ろうと張り切っていた。
しかし、途中で来客が入った。知らせてくれたのは、公爵専属の執事であるクラークだ。
レオも一度来客の顔を見にいき、すぐに戻って来た。聞かされたのは疑問の生じることだった。
「ソフィアの知人だと言っている。それも二人も。」
おかしい。公爵領に私の知人はいないはずだ。
仮にいたとしても、それは私とレオが一緒に街を散歩してた時に寄ったお店の店員しかいない。
それならレオも知っているはずだが、どうやら違う様子だ。
「…分かりました。とにかく会ってみますね。」
「だが体調は…」
「もう大丈夫です。ありがとうございます。」
「…そうか。無理はするなよ。」
「…はい」
レオの一つ一つの言葉に温かさを感じる。
私の身を案じてくれる人なんて滅多にいないものだから、少しだけ嬉しく思ってしまった。
「では、またあとで」
「ああ、俺は執務室にいるから、何かあったら呼べよ。」
「ありがとうございます。」
こうして私は部屋を出た。
私の知人だと言う二人は応接間で待っているらしい。
誰が私のことを知っていると言ったのか、その答えを知るべく、私は応接間まで向かった。
そして、少しの緊張と不安を抱きながら、扉を開けた。
扉の先にいる人物を見て、私は唖然とした。
「どうして……?」
"何で、ここにいるの?"
「「ソフィア!」」
私の知人だと名乗る人物。それは、私の名前も知っていて、小さい頃からお互いを知っている人物だった。
「…リアムお兄様…ルイスお兄様…。」
「お前、婚約したんだってな…あの人が誰だか分かっているのか…。」
"何を今更?"
意味が分からなかった。
「どうして今更私を気にかけるフリなんかするのですか…?」
お兄様が離れるからって、ずっと手紙を書き続けたのに。
"返事をくれなかったのも、11年帰って来てくれなかったのもそっちでしょう?"
苛立ちながらも心を落ち着けて疑問に思っていることを聞くと、ルイスお兄様が声を荒立てて応えた。
「は…?俺たちは、ずっとお前のことを思って強くなれるよう努力して来たんだぞ!それを何だお前は…。小さい頃だったから覚えてないかもしれないが、手紙を書くって言ってたじゃねぇか!なのに一通も送らず、それどころか俺たちの書いた手紙まで無視しやがって…。」
"何、言ってるの?"
手紙は欠かさずに5年も書き続けた。
逆にお兄様たちからの手紙なんて一通も送られてこなかった。
「待って…」
「俺たちは!」
どこかで食い違っている。
そう思って話を止めようとした時、言葉をルイスお兄様に被せられた。
「お前に伝えに来たんだよ。もうお前のことは俺たちの妹でも何でもない赤の他人だと思ってるってな。」
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