ep22.静かな温もり
目覚めると、何故かふかふかのベッドに身をゆだねていた。
ここはどこなんだろうか。
明らかに前の私の部屋ではない。
私が思考を巡らせていると、メイドが部屋に入ってきた。
「…!!お嬢様…!お目覚めになられたんですね…!本当に良かったです。声が掠れてしまうかと思いますのでお水をお飲みください。」
アメリアの言う通り、声が出なかったので水を飲んでからお礼を言った。
「…はい。アメリア、ありがとうございます。メイドの皆を味方につけてくれて。」
「…!っいえ、これもお嬢様がメイドである私たちに分け隔てなく接してくださったおかげです。私は旦那様をお呼びして来ますので、お嬢様はゆっくり休んでいてください。」
アメリアが部屋から出ていくと、部屋は静かになった。
結局、生き残ることが出来た。誰が運んでくれたんだろうか。カルロス?メイド?
分からないけど、運んだ人にお礼を言わないといけない。
そうと決まればと思い、私がベッドから出ようと床に足を付けた時、勢いよく扉が開いた。
扉の方を見ると、そこには息を切らして呆けているレオがいた。
「ソフィア!目が覚めたんだな…!」
「…!」
久しぶりに、レオが本気で焦って心配している顔を見た。
こんな顔を見たら、言いたかったことも言えなくなる。
痛かったのも、辛かったのも全部私なのに。どうして私よりも苦しそうな顔をするのだろうか。
…いや、レオはまだ出来るんだ。感情を顔に出して伝えることが出来る。それはとても大事なことだ。
私にはもうそれが出来ないけど、せめてレオはどうか感情を露わに出来る場所が一つでもあって欲しい。
そして、レオが私の前で感情を隠さなくなったことに関してはとても嬉しいと感じた。
「おはようございます。公爵様」
私が挨拶した瞬間、視界が一気に何かで覆われた。
「………ソフィア…。お前は10日間も眠っていたんだ。もうソフィアのいない生活など、想像がつかないんだ…。」
レオが私の名前を呼んで、今どういう状況かをやっと理解できた。
私は今レオに抱きつかれているのだ。
その力はとても優しく、この瞬間を噛み締めているようにも感じる。
そして、この優しい温かさは私が運ばれている時にも微かに感じたものだ。
きっと、レオが運んでくれたのだろう。
どうやら相当心配したようだった。
少し目の下にクマが出来ている。
「…ご心配おかけして申し訳ありませんでした。」
私が謝ると、レオは抱きつくのをやめてベッドの上に座った。
「っ違う…。謝るのは俺の方だ。二ヶ月もあのような部屋で過ごさせ、挙げ句の果てにはお前を信じず五日間も拷問してしまった…」
そこで私はとあることに気がついた。
「…えっと、あのお部屋は公爵様が用意させた訳ではないのですか?」
「違うに決まってる…!俺がそのような人間に…いや、俺がそう見えるような態度を取っていたから悪いんだ。…本当にすまなかった。」
「いえ、公爵様は何も悪くはありません。私が、公爵様が信じるに値するほどまだ信用されていなかったせいです。これからはもっと信用してもらえるように頑張りますから。」
ここまで反省していてレオを責めるなんて、出来なかった。
全部私が悪いで済ませれば良いなんて思っていたのに、今回は意地が悪くレオも譲らなかった。
「…いや、明らかに俺が悪い。ならば俺も残りの四ヶ月、ソフィアが安心して暮らせるような環境をつくれるようにする。だから、泣きたければ泣いても良いんだ…。」
「……泣くって、どうすれば良いんですか…?」
「はっ…?」
「…!何でもありません。とにかく、ありがとうございます。」
私が咄嗟に口から出たことを隠しお礼を言うと、何故か気まずそうに私の方を見た。
「どうしましたか?」
「…そのだな…まだ地下牢にいた日の真夜中、叫んでいなかったか…?」
あまりにも抽象的で、他の人から見れば意味の分からない質問。
叫んでいたのが私だと分かっていての質問だろう。
もう全部話してしまいたい。
楽になりたい。
でも事情を話してしまえばかここから追い出されてしまうかもしれない。
お前は自己中だと言って殺してくれないかもしれない。
"どうするべき…?"
「…………ア」
"一番穏便に済ませるには…?"
"信用してもらうには…?"
「……ィア」
頭の中がこんがらがってくる。
何がベストなのか分からない。何をしても信じてもらえないような気がしてならない。
何も、考えたくないのに
「ソフィア!」
「…_っ!」
「…すまない、無理に言わなくても良い。俺が信頼するに値する男だと思った時に話してくれ。」
「すみません。ありがとうございます。…必ずいつか話しますね。」
私が事情を話せなかったのにも関わらず、何故かレオは嬉しそうに「ああ」とだけ言ってしばらく私の頭を撫で続けた。
その間のレオの顔はよく分からない表情をしていた。
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