ep21.怒りと待ち侘びた知らせ『公爵視点』
呼んだのは殺し屋だ。
「何の用ぉ?」
「殺し屋。お前、何か令嬢と言い合ってなかったか?」
「あぁ〜、うーん。レオには関係のない事だよぉ。ソフィアちゃんを信じてあげなかった君にはねぇ」
「…っ……!」
痛いところを突かれ、思わず眉間に皺を寄せてしまう。
「そんなに聞きたいなら、ソフィアちゃんに直接聞いてみなぁ。レオに話すかは知らないけどねぇ。まぁ、いつかは話してくれるんじゃなぁい?」
「…俺に、また何も気にせず令嬢と過ごせと言っているのか?」
ヘラヘラとしているこいつに腹が立ってしまう。
自分ごとじゃないからなのか、それとも令嬢に危害は及ばない話だと分かっているからなのか。こいつはいつも通りヘラヘラとしていた。
「違うよぉ。レオがソフィアちゃんに自分で聞けって言ってるんだ。僕がソフィアちゃんのことを人に言う権利はないからねぇ。しかも、今まで何も気にしてこなかったのはレオの方だよぉ。」
「お前…随分言うようになったな。前は操り人形のように動いていたというのに。」
「…そうだねぇ。だけど僕、ソフィアちゃんのために生きるって決めたからさぁ。生きる理由、見つかったんだぁ。それと、僕の名前はお前でも殺し屋でもない。カルロスだよぉ。」
「カルロス?」
「うん、ソフィアちゃんが僕のためにつけてくれたんだぁ。」
ソフィアがという言葉を聞いて、俺は何故か心臓の辺りが痛くなった。
生きる理由が見つかるのは悪いことではない。
名前が出来たのも良いことだ。
なのに
"どうしてこんなに痛いんだ?"
「…ソフィアは俺の婚約者だ。」
「…はぁ…、っるさいなぁ。ねぇ、もしかして忘れたぁ?これでも元殺し屋だよぉ。レオが悪い人じゃないことは分かってるけど、あまりにも独り善がりなんじゃなぁい?ソフィアちゃんを冷たく突き放したのは紛れもなくレオだよ。」
「……それは、ソフィアが起きたら謝ろうと」
「謝って済むくらい軽い訳ないだろ?」
今まで無気力に生きてきたこいつが、ヘラヘラと話していたこいつが、俺にはっきりとものを言った。
今までは本当に、誰が生きようと死のうと関係のないような顔をしていた。俺がどんな命令を下そうと何か言うことはなかった。なのに、今のこいつは、命を重んじている。
こいつは確かに今、俺に対して腹を立てている。
「詳しくは言えないけど、これだけ教えてあげる。五日目の夜、ソフィアちゃんはずっと痛いって叫んでたんだ。それも皆の前じゃなくて、誰もいなくなってから。この理由を聞くか聞かないかはレオに任せるよ。僕は大体知ってるから。じゃ、これからソフィアちゃんとの約束を守るために色んな世界を見に行かないといけないんだ。ソフィアちゃんを救うためにもね。また数ヶ月後戻ってくるよ。まぁ、今のレオの元へは戻ろうとは思えないけどね。」
「それは、どう言う意味だ。」
「さぁね、それくらい自分で考えなよ。僕はもう行くから。」
これ以上呼び止めることなど出来るわけもなく、そのまま殺し屋は退出していった。
そうだ。殺し屋の言う通り、これは謝って済む問題じゃない。
なのに謝罪をすれば令嬢なら許してくれるだろうという安易な考えをしていた自分に、俺は絶句した。
いつからこんな最低な考え方になったのか。殺し屋が戻りたくないと感じた理由がよく分かった。
俺はこれからどうするべきか。どんな顔で令嬢と話せば良いのか。どれだけ考えても答えが出ることはなかった。
◇◇◇
あれから令嬢が意識を失って一週間が経った。
令嬢と一緒に食べないデザートの時間は楽しいと感じることはなく、あまり美味しいとも感じなかった。
初めは俺から近づくなと言い出したものだから部屋へ入れなかったものの、三日もすれば令嬢の容態が気になり暇があれば部屋へ入り浸るようになった。
だが、令嬢が目を覚ます気配は一向にない。それどころか、息が荒く顔も赤い、とても辛そうな顔をしていた。
本当は医者を呼んで、一日でも早く令嬢に目を覚ましてもらいたい。けどそれは俺の身勝手な願いでしかなくて、結局令嬢が目覚めるその時まで医者は呼ばずに、メイド達と症状が悪化しないよう看病し続けた。
こうして更に三日が経った。
この日は仕事と騎士団の指導に追われ、忙しい日だった。
俺にとっては忙しい方が何も考えずに済むためありがたかった。
しかしこの日、俺が仕事をしている時、廊下から走る音が聞こえてきた。
いつもは当たり前だが走る音など聞こえない。
何事かと思い席を立とうとすると、突然メイドにドア越しで、大きな声で名前を呼ばれた。
「…っ旦那様…!」
「?、なんだ。」
どれだけ急いでいるんだと呆れながら返事をすると、俺にとってはとても嬉しい言葉が来た。
「お嬢様がっ、お目覚めになられました…!!」
「…っ__!すぐ向かう!」
涙が出そうだった。
やっと俺は、待ちに待った知らせを受けることが出来た。
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