ep1.婚約破棄?喜んで
みなさま初めまして!前作品を読んでくださった方は昨日ぶりですね(^^)
今作品〜余命1年と診断されたので婚約破棄して冷徹と噂の恩人に会いに行こうと思います!〜をお手に取ってくださりありがとうございます!
今作品は前作品とは違ってゆっくりとしたペースで投稿していくので長く楽しんで頂ければ幸いです!
「お前との婚約は破棄だ!」
婚約者に向かってお前とは、次期侯爵とは思えない口の悪さだ。
「良いですよ。婚約破棄しましょうか」
私はその口の悪さと発言に動じることなく、平然と答える。すると、元婚約者は驚きの表情を見せた。
何を驚いているのか。離縁しろと言ったのはそっちだろう。
呆れまじりに、私は言葉を発する。
「どうぞ妹のラリアとお幸せに」
「なっ…お前…!」
何を今更。
隠す気なんてなかったくせに。
妹と仲良くしていることは前々から知っていたし、それを知って私が嫉妬するとかいうことももちろんない。
そもそも好きで結んだ縁談ではない。
子供の頃に勝手に決められた縁談だ。
だから正直どっちでも良かった。結婚しようがしまいが、私からすればあまり関係のないことだった。
だって、私はこの家の道具なのだから。
私含め6人家族のこの家は、少し特殊な構成をしている。
まずは、私の義父と義母。この2人は、私の父の弟夫婦であり、キャンベル伯爵と伯爵夫人だ。
私の実のお父様とお母様は、私が7歳の時、不運な事故で亡くなってしまった。そのため、今の義父と義母に引き取られることとなった。
次に、わたしの義妹。義妹は、義父と義母から生まれた子供だ。
だからなのか、うんと可愛がられて育っているなと思う。
最後に兄2人。兄達は、わたしと血の繋がりがある兄妹だ。
兄妹というには怪しいくらい会っていないけど。
理由は私たち3人が引き取られて一年足らずで、2人とも騎士団に入団するため寮で生活することになったから。
その頃はうろ覚えだが私が8歳で兄たちは双子なので10歳だったと思う。
『必ず強くなって戻ってくるから、それまで待っていてくれ』
兄達がそう言って十一年、一度も兄は帰ってきていない。
もう期待するのはやめているため、残念かと言われればそうでもない。
そして、どうして強くなって戻ってくるとお兄様が言ったのか、それは私たち家族の関係に問題があった。
義父と義母は、私たち3人を家に迎え入れてくれたことまでは良かったものの、空気のような扱いを受けていた。
そこでお兄様たちは言ったのだ。
強くなって戻ってくる。
結局戻ってきていないけど。
それはそうと、今は目の前のことに集中しよう。この開き直っている男をどうにかしないと。
どうせ私が婚約破棄になろうと、妹と婚約を結ぶためいつものように何も言わないだろう。
「では、小侯爵様の方からお義父様とお義母様に言ってください。私では信じてもらえないかもしれないので」
「強気でいられるのも今のうちだぞ」
捨て台詞を吐いて、小侯爵は部屋から出ていってしまった。
とりあえず離縁のことに関しては小侯爵に任せよう。性格と口の悪さには少々難ありだが、仕事はしっかり出来るのが小侯爵だ。
…と思っていた私が本当にバカだったと思う。
「どういうことだ」
まさか義父にこんなに早く言うとは思っていなかった。
今私は義父の書斎にいる。義父とは向かい合って、父は書斎の椅子に座り、私は立っている。
婚約を破棄するというのは、正当な手順を踏んで行われるため、書類を作成したり双方の同意を得たりとしないといけないことが多くある。
なのに、真っ先に義父に言うなんて、仕事まで出来ないようになってしまったのか。
「小侯爵様の方から言い出したことです。それに、ラリアの婚約者としても申し分ない家柄かと」
「……違う。そういうことを言ってるんじゃない。お前はどうするのかと聞いている」
義父は時折り変なことを言う。
普段は私と目も合わせず会話も最低限のものなのに、極たまに私のことを気にするような発言をする。
「私なら大丈夫です。家にずっといるような不幸ものにはなりませんから。ご迷惑はおかけしません」
「そういうことを言ってる訳じゃ…。…っ!………もう部屋に戻って休め。顔色が悪い。医者を呼んでやるから大人しくしておけ」
「…??、はい。失礼します」
鏡で自分の顔を見る機会が今日はまだなかったため気が付かなかったが、どうやら義父に医者を呼ばれるほど私の顔色は悪いらしい。
義父に言われた通り部屋に戻って医者を待とうと廊下を歩いていると、よく見知った顔がこちらに向かって歩いてきていることに気付いた。
私が気付いてすぐに向こうも気付いたようで、足早にこっちまで寄ってきた。
「お姉様……!本当にすみません…。私、こんなつもりで小侯爵様とお話した訳では………」
義妹が誤解を解こうと必死になって弁明している。
だけど、そもそも誤解なんてしていない。
義妹のことは可愛いし、守れる範囲で守ってあげたいと思うくらいの情はある。
私はラリアを抱きしめて、頭を撫でた。
「分かっているわ。あなたはそんな気なんてなかったのよね。あなたは可愛い私の義妹なんだから。私のことは気にせず、自分が幸せになる選択肢を選びなさい」
「お姉様……」
義妹の抱きしめる力が少し強くなった。
きっと、必死に泣きたいのを堪えているのだろう。
優しいラリアのことだ。罪悪感で彼女の心は支配されそうになっているんだと思う。
だから私も同じように、抱きしめる力を少し強くする。
「ラリアは何も責任を感じなくて良いの。私はラリアに責任を感じてもらうより、ラリアの笑顔が見たいわ」
「…!、もう、お姉様ったら…!」
私の言葉に驚いたのか、ラリアは抱きしめるのをやめて私の方を向いた。
「ほら、笑顔!」
喝を入れるように言うと、ラリアは潤んだ涙が溢れそうになるのを抑えてニコッと笑った。
私はそんなラリアの涙を拭う。
ラリアは泣くよりも笑っている方がずっと綺麗だ。
「ふふっ、やっぱりあなたの笑顔を見てると元気が出るわ。さ、もう夕食の時間でしょ?早く行ってきなさい」
「…はい」
ラリアはまだ少しバツが悪そうに返事をした後、少し急いでダイニングへ向かった。
私も医者がもう到着しているかもしれないので急いで部屋に行った。
着くと、予想通り医者が待っていた。
最後まで読んで頂きありがとうございました!もう2話から4話までは今日中に投稿する予定でいます!
次話も読んで頂けると嬉しいです!
良ければ評価とグットで応援&もっとこうした方が良いなど指摘も頂けると次作品に活かせるのでよろしくお願いします!