プロローグ
プロローグ
日本人は皆、誰しもが『ピポリティ』のアカウントを持っている。
これは身分証明書であり、診察券であり、はたまたコンビニのポイントカードでもある。human affair.incが運営する世界規模のトータルオンラインサービス『ピポリティ』の運営理念は〝平等な人生を〟である。仮想現実という格差の無い世界で人々は平等に生活をしている。
オンラインワークが主流となった現在において『ピポリティ』はなくてはならないものであり、場所である。『ピポリティ』上には仮想オフィスが建ち並び、商業施設、病院、学校に至るまであらゆる施設が存在している。これはしばしば現実世界とリンクしており、例えば『ピポリティ』上の学校での席は実際の学校の席と同じである。
人々が仮想現実で平等な人生を謳歌しているその一方で、人々は『リープル』によって人体に秘められた力を活性化させ、より優れた能力を得ている。
人間の脳を活性化させる特殊手術を行い、五感や運動神経、声量、芸術的感覚など、様々な肉体や感性の才能を伸ばしている。これにより人間の基礎能力を高め、より優れた進化を目指すものである。例えば、スポーツが得意だが勉強が苦手といった者が計算が早くなる能力を後付けしたり、音楽の才が元からある者がその能力をさらに伸ばすような使い方ができる。『リープル』と呼ばれるこの付加能力は『ピポリティ』のアカウントを持つものであれば誰でも行えるが、高額のため受ける者は多くは無い。また、『リープル』発足当時は何度でも手術を受けることができたが、格差が開きすぎるという指摘をうけ、現在は活性化できるものは一人につき一つという制約が設けられた。活性化レベルも伸ばしたい分野により上限が設けられている。この手術は『ピポリティ』のアカウントで記録及び管理されており、『リープル』で後付け及び伸ばした能力は『ピポリティ』上では調整されており能力の発動はできなくなっている。
人類の平等と人類の進化を目指すhuman affair.incの挑戦は当初荒唐無稽だと笑われたがしかし、現在においては電気や水道と同等、もしくはそれ以上に私達の生活に無くてはならないライフラインにまで上り詰めたのである。
現代を支えるH.Aについて ジョセフ石田著より抜粋