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初。  作者: 高瀬香澄
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初。【1】「彼との出会い」

以前の職場では話を合わせていつも愛想笑いすることしか出来なかった、

そんな私が本来の自分を出すことの出来るとても夢のような場所。

私が再就職したA型作業所は想像していた以上に

自分にとって居心地のいい職場だった。


働き始めた初日、

緊張でガチガチになりながら送迎してもらう駅へ向かった。

送迎車では利用者の方の定位置が

決まっているらしく私は真ん中の列の隅に乗り込んだ。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」と職員に声をかけられた。


作業所へ着くと施設内を案内してもらい、

利用するにあたっての注意点を聞きロッカーに荷物をしまった。

それから仕事前の朝礼で利用者の方々に

「これから頑張ります」「よろしくお願いします」と挨拶をした。

仕事の内容を職員から説明してもらい、

利用者の方々と作業をしながら雑談をした。

利用者の方が気さくに話しかけてくれるのがとても嬉しかった。

前の職場で人間関係が上手く出来なかったこともあり、

初日は女性利用者の方の様子をうかがうことしか出来なかった。


次の日、女性利用者の五十代の方が

「昨日、すごく頑張ったね」

「わからないことがあったら聞いてね」と優しく声をかけてくれた。

「お昼ご飯もここで食べなよ」と仲間に入れてもらえた。

そんな風に前の職場で言われたことがなかったので、

私は嬉しい反面どぎまぎした気持ちになった。


そして昨日と同じようにその日も作業をしながら雑談をした。

「歳はいくつ?」「どこから通ってるの?」

「この仕事どう?続けていけそう?」

どこにいっても最初は色々聞かれるものだと思った。

話を聞いていくうちに私が作業所で一番年下だということを知った。

その時「早く結婚しないとだめだぞ」

「こいつはどうだ?」と紹介されたのが彼だった。

彼は私に話しかけるわけでもなくただこちらを見つめていた。


それから数日後、私が利用者のみんなと話すことに慣れてきた頃、

私が「呼び方さんづけじゃなくていいよ」とみんなと話していると、

彼が小さい声で「自分もさんづけじゃなくていい」と言った。

「え、みんなが呼んでるみたいに私も呼んでいいの?」と私は思わず言った。

私がそう言ってしまったのは彼があまり喋るところを見たことがなかったからだ。


彼は目に障害をかかえていた。

自分から話しかけるのは苦手なようでいつも小声で話す。

私の彼に対する最初の印象は、

誰かが困っていると必ず助けてくれるとても優しい人、

そして真面目に仕事に取り組む働き者だった。

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