第九話 呪いの対象に正体がバレた件について
いよいよ日英に正体がバレる!?
さてその理由とは……?
どうぞお楽しみください。
見つめていられるだけで幸せだと思っていた。
だって私は幽霊で、日英さんは人間。
死者と生者。
交わらない点と線。
……なのに!
「今日もよろしくお願いします。守護霊さん」
むきゅうううぅぅぅん!
毎日家を出る前に、振り返ってしてくれる挨拶!
家に帰ると「今日も一日ありがとうございました」って言ってくれるし!
見えてないのに存在を信じてくれるその純粋さ、天使か何か!?
いや、もはや神と言わざるを得ない!
はっ!
もしかして私達は神話の時代に楽園を追放されたアダムとイヴ……!?
転生を繰り返して今ここで出会った……!?
やっぱり私と日英さんの出会いは運命だったのね……!
この縁を繋いでくれたあの男には、次に会った時に感謝しないとね。
(夜魅子! 何してるんだお前!)
ちっ。
空気読みなさいよこのボンクラ。
(何でそいつを呪っていないんだ! 依頼主からクレームが来てるんだぞ!)
依頼主……?
あ、そう言えばあいつに日英さんを呪うよう依頼した奴がいるんだったわね。
それはじぃっっっくり話を聞かないとねぇ……?
この念話の感じから、あの男は百メートル後ろってところか……。
(とにかく一度戻って来い!)
私は日英さんの側にいるので忙しいの。
あなたが来なさい。
「ぐひゅえっ!?」
「わっ!? ど、どうしたんですか!? 飛んで来たように見えましたけど!?」
あ、日英さんを驚かせちゃった。
まったくもう。
言語中枢を支配してっと。
「アの、全ゼン大ジョウ夫でス。公ドウで飛ブの大スきデ」
「そ、そうなんですか……。お気を付けて楽しんでください……」
よし、誤魔化せた。
後はこいつから情報を聞き出そう。
「うぬあ! 夜魅子! 何をする! 使役者に逆らうなんて、霊としてあり得ん!」
「え、霊!?」
ちっ、曲がりなりにも霊能者だから、それなりに抵抗力があったわね。
それなら脳に直接呪いを送り込んで……!
「いやあああぁぁぁ! 頭に黒いの入ってくりゅうううぅぅぅ! らめえええぇぇぇ! 壊れちゃうううぅぅぅ!」
ちっ、普通の人間ならこれであっさり気絶するのに……。
なまじ半端に力があると無惨ね。
無意識でも防ごうとする。
あんた、気の毒だけど楽には
「ちょっと待ってください! 僕の守護霊さんの事知ってるんですか!?」
どうしたの日英さん!?
こんな奇声を上げてるおっさん、普通なら絶対近寄りたくないはずなのに!?
「僕を守ってくれてる守護霊さんの事、もっと知りたいんです! 教えてください!」
ひゃあああん!
これって告白!?
告白よね!?
私の事をもっと知りたい、イコール私が好きって事よね!?
やったあああぁぁぁ!
そうしたらこいつの意識を戻してっと。
「はっ!? おばあちゃんは? 花畑は?」
『日英サンニ全テヲ話セ……』
「な、何!?」
『アンタガ誰ニ依頼サレテ呪ッタカヲ……。ソシテソレヲ守護霊デアル私ガ防イダ事ヲ……』
「後半まるっきり嘘じゃねぇか! それに俺にだってプロとしての誇りがある。依頼主の事は口が裂けても言えねぇな」
ご立派ね。
『イイ覚悟ダ。ジャアサッキノヲモウ一度』
「お、俺を殺したら後悔するぜ!? 何せ夜魅子! お前の身体はまだ生きているんだからな!」
……え?
「あのコンサートホール火災の日! 煙を吸って仮死状態になっているお前を助け出し、知り合いの病院にこっそり担ぎ込んだのは俺だ!」
私が、生きてる……?
「半分抜けていた魂に見捨てられた記憶を刷り込み、世界を呪うように仕向けて出来上がったのがお前だ!」
それなら、日英さんと共に生きられる……!?
「つまりお前の命は俺の手の中! 本体の生命維持を切れば生き霊のお前は消滅する! だから俺に逆ががガガが!?」
何て素敵なの!?
じゃあこいつの脳から病院の情報を抜き取って、その医者を呪いで操れば、私は蘇る……!
「ひぎぃ! らめぇ! そんな無理矢理したらあひいいいぃぃぃ!」
「え、えっと守護霊さん!? や、やみこさん!? あんまり酷くしないであげてね……?」
きゅうううん!
日英さんに名前呼ばれちゃったぁ!
ならちょっとだけ手加減してあげる。
そして私は日英さんと結ばれるんだ……!
読了ありがとうございます。
生きとったんかワレェ!
そんなご都合展開でした(震え声)。
次回最終回です。
よろしくお願いいたします。




