伝える
帰ろうとすると立ち止まるメグ
手を繋いだ僕は引き止められる
振り返るとメグが少しうつむいている。
僕は自然にメグを抱きしめた。
「ごめんね」
「え?」
「いや そうじゃなくて・・・えーと」
「なぁに?」
「ずっと好きだったよ」
「あ、うん 私も」
「あの、遅くなってゴメンってことで」
「待ってたの、私ズルいかな」
「ううんズルくないかな いや 結構悩んだしなぁ」
「いじわるね ふふふ」
もう一度歩き出す 今度はついてくるメグ
新しい足跡がさっきの足跡のとなりに付いていく。
船まで戻る、ロープをさっとほどいて手際よく先に乗るのは船長のメグ。
手を伸ばすメグに捕まって船に乗る僕。
そのままひっぱって僕を引き寄せた。
さすが船長 力が強い。
「わっ」
そのままメグにぼよんとぶつかる。
「ふふ 得したわね?」
「な なんのことかな?」
メグはさっさとロープをまとめに行った。
僕はさっき載せた荷物を船室の倉庫にかたずける。
さすが異世界の船、軽油の匂いがしない。
何で動くんだろうね?
船首のほうでメグが竹竿で桟橋を押して船をちょっと離す。
メグが操舵室に戻ってきた。
なんだかご機嫌なメグ。
少し船を横に流して 桟橋から少し離れたところでメグは船を走らせ始めた。
僕は窓から顔を出し海岸を見る。
二人の足跡が点々と海岸に沿っているのが見えた。
「ここから帰るのどのくらい?」
「結構遠くだから小一時間ってところかな」
「そっかぁ」
メグが僕の手を自分の膝に持って置かせた。
その上にメグが自分の手を重ねる。
「でもスロットル触れないから少し時間かかるかな」
そういってメグはこっちをちらっと見た。
「いいんだよ? 別に手を離しても」
「いいんだ?」
そのまましばらく船は走り続ける。
だいぶ日は傾いてきた、窓から日差しが直接操舵室に入る。
バイザーを下ろすメグ。 でも僕の手は離さない。
小一時間っていったのが一時間以上かけて船宿に帰り着く。
手際よくメグは船を桟橋に固定する。
僕は荷物を桟橋のメグに渡す。
最後に僕 すっと手を伸ばすメグの手を取り船から降りる。
「あらあら」
ケイちゃんがいつのまにか現われてニヨニヨとしている。
「なんかあったのかニャ?」
「んー さーねー」メグが答える。
「あーらー?」ケイちゃんはこっちを見た。
「そうなのにゃー!」
僕はあえて反応せずにクーラーボックスをケイちゃんに渡した。
「はい釣果」
「重いニャ」
かぱっとあけて小ぶりなマグロと鯛そしてイサキを確認すると
「わかったニャ お祝いニャ」
ゴロゴロとクーラーボックスを引きずって台所のほうに帰っていった。