立ち止まる
一緒にメグの作ったお昼ご飯を食べた僕たちは、片付けて船に荷物を積み込む。
「少し遅いお昼ご飯になっちゃったね」
「でもおいしくておなかいっぱいだよ」
「よかった、また作ろうかな」
「うん、でも無理しないでね」
「もう少しここで休んで行こうよ」僕はメグに言った。
今思えばこれがせいいっぱいだった。
崖の上には灯台、
その反対側には白い砂浜。
少し湾曲した小さな砂浜 200メートル無いくらいかな。
その先はまた小さな岬のようになってる。
崖に囲まれた小さな海岸だ。
波もおだやかで 綺麗な水、白とグリーンと深い青のグラデーションになっている海。
遠浅ってわけではないのかな
「あっちまで行けるけど?」
メグが言う 行きたいってことか
「行こうか」
綺麗な砂浜を二人で手を繋いで歩く。
「キス釣りできそうだね」
「投げ釣り?」
「そう」
「やったことないのよね」
「そうなんだ」
「船で釣るから」
「そりゃそうか」
「今度投げる竿持ってきてよ」
「そうだね、ちょい投げ竿かな」
「ちょい投げ?」
キス釣り 本格的な投げ竿だと4メートルクラスの竿に遠投用のリール
20号とか重たいオモリで遠くに投げる。150メートルとか。
ちょい投げだと3メートルくらいの竿に8号とかのオモリで7-80メートルくらいまでを狙う。
お手軽なちょい投げでも充分釣れそうな砂浜だ。
「僕は元々投げ釣りが好きでね」
「船釣りじゃないのね」
「最近はなかなか陸から釣れるところが減ったからね」
「あのゴテゴテしたクーラーボックス使ってたのね」
ボートシロギス大会のときのクーラーボックスを覚えていたらしい、まあ忘れられないくらい派手派手だけど。
そんな話をしながら反対側の端まで歩いてきた。
遠くにメグの船が見える。
ここから先はゴロタ場
「カサゴとかソイがいそうだね」
「こんな浅いところに?」
「小さいのは結構いるはずなんだよね 異世界も同じだったらだけど」
「また一緒にココにきて 釣りしてみる?」
「うん 一緒に 来たいよ?」
「なら またお弁当作らなきゃね」メグはにっこりと微笑む。
しばらくそこから海を見ていた、メグと一緒に。
手を繋いで。
二人でしばらく海の方を見て帰ろうとする方向を見ると、
二人の足跡が点々と続いていた。
「帰ろうか」
戻ろうと歩き始めると、メグが動かない。
少しうつむいて手をひっぱるメグ。
僕は なんとなくメグを抱き寄せてハグをした。
メグの力が抜けて僕に体を預ける。
やわらかなメグの感触、
しばらくぎゅーっとメグを抱っこしていた。
何も言わず 波と風の音が聞こえないくらいドキドキしてた。