帰路
星空の下、二人の乗った船は暗闇を走っている。
遠くに街の明かりが見える。
「ココから帰るのどのくらいかかる?」
「30分くらいかな、沖に出て遠回りして帰るから」
座礁を避けるために岸から遠ざかって走るらしい。
遠くの街の明かりがさらに遠ざかり、針路の先からまた近づいてくる。
この繰り返し。
湾ごとに集落がある感じなのかな。
星空が綺麗に見える さっきまで下ばっかり見てたから。
でも見たことのない星空。
改めて異世界だと思い知る。
「今日は月が無いから星が良く見える」
そうこっちにも月はあって、同じように干潮と満潮があるのだ。
「まぁ物理現象は同じだろうからな」
「メグ 星の世界って旅できるのかな?」
「んーできないことはないんじゃないかな? 時間よね 問題は」
「僕の世界は月までなら人は行ったことがあるんだ」
「へー どのくらいかかったの?」
「三日くらいかな」
「いつかこっちの世界の人たちも月に行こうと思うのかな?」
「思ってる人くらいいるかもね」
「あっ 流れ星!」僕は見つけた。
「えー見えなかったー」
「前方注意だねー」
「ちょっと船止めようか?」
メグは船足を止めて、甲板で寝転がった。
僕もメグの頭のほうに寝転がった。
頭をくっつけるように反対側にあおむけにねてる僕ら。
「すごいね 宇宙に浮かんでるみたいだ」
僕はおもわず声を出す。
ぼーっとしばらく無言で空を見ていた。
「あなたの星って ここから見えてるのかな?」
突然メグが言った。
「そもそも、同じ世界なのか、なんなのかわからないよね」
「もし僕の星が見えてたとしても、ここで見えてる星はいつ光だかわからないし」
「そうなの?」
「光が届くのに何年も何万年もかかるから、下手したらまだ地球そのものが無いかもしれない」
「そうかぁ」
またメグはしばらくだまって空を見ていた。
不思議な力でこの世界に来れたけど、いつ来れなくなるかわからない。
メグはそれに気づいたみたいだ。
「もし 帰れなくなったら、メグの船宿に置いてくれる? ちゃんと仕事するから」
「そうしたら私の部下ね、仲乗りさんになってね」
もし来れなくなったら とは聞けなかった。
すっかり目が慣れて、満天の星空と空を覆うようなすごく明るい天の川
天の川があるってことは銀河系みたいな星雲なのかな だとすると太陽系よりも銀河の中心に近いからこんなに明るいのかもしれないなぁ そんな風に思いながら空を見ていた。
「じゃ 帰ろうか」
「うん、ありがとう船停めてくれて」
僕は先に沖上がり、メグの手をひっぱって起こした。
そのまま 手を繋いだまま メグと操縦席へ。
また隣に座って
「じゃ 出すわよ」
船は走り出す 僕たちはいつもの桟橋に到着した。