怪しいけもの道
よし もう一度
さっき接岸に失敗した僕はもう一度チャレンジする。
「風は無いから操船だけよ」
「うん」
遠くでもういっかいUターンして今度は少し遠くでUターンして左手にはしけを見ながら少しづつ左に寄せて接岸する。
一番簡単なコースだ。
「そうそうあわてなくていいからゆっくりね」
左に舵を切って少し手前に針路を向けて、ちょっと手前で右に切り返す。
するとメグが
「イイ感じよ」
ゆっくり近づきながらメグはトンっとはしけに降りた。
「いいよ」
船足を止めてメグがロープをひっぱると接岸完了。
「うまいじゃない」
「ふー 汗出ちゃった」
「でもじょうずよ」
「ありがとう」
前と後ろをロープで止めてくれた。
あとはロープワーク覚えないとなぁ。
僕はそのまま船から降りた。
「お昼じゃ漁師さんもいないわね」
この島は倉庫に使ったり、ちょっと休憩に使ったりする島だそうだけど、無人島だし、水があるわけでもないし、まぁほんとに無人島ってことらしい。
「せめてお水が出ればねぇ」
「でも木が生えてるじゃない」
「そう 水が取れる木から非常用の水分くらいは取れるわね」
だいたい船宿から1時間くらいの島。
今はだれもいないらしい。
はしけから上の方に、けもの道のように細い道が繋がっているだけ。
「一番上行ってみようか」
「え?」
手を引いてメグが力強く歩いていく、5分くらい登りきったところに、足場のようなものが組んである。
「うん 腐ってないから大丈夫そう」
はしごを登り、一番上に、僕も続いていく。
「ほら」
手を持ってひっぱりあげてくれたメグ。
「あ」
頂上に足場を組んで展望台を作ってるらしい。
360度の視界がとってもきれい。
といっても遠くに陸地が見えるだけでほぼ海だけど。
「夜に来たら星空とかすごそう」
僕が言うとメグは
「え? 超真っ暗で怖いけど 今度一緒に来てみる?」
「怖いの?」
「何も出ないけどね たぶん」
「たぶん なんだ」
でもメグと一緒に来てみたいなとちょっとワクワクした。
「いいわよ 今度きてみましょ」
まるで心を読んだかのように メグは言った。
しばらく手をつないだまま景色を見て、いつのまにか肩を抱いて
降りる直前はキスをした。
周りに船もほとんど見えなくて、この世界に二人だけって思ったら気分がもりあがっちゃった。
しばらく僕はメグを後ろから抱っこして細い肢体をぎゅーっとしながら一緒の景色を見ていた。
30分くらい過ごしたかな。
「あ、さっきのおやつもってくればよかったね」
「そうだね ここで食べたらよかったかも」
僕たちは船に戻ることにした。