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【書籍化】くたばれスローライフ!  作者: 古柴
第2章 王都での生活
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第8話 鳥を愛する者 5/5

 その後、竜巻は次第に勢力を弱めていき、アイルとシセリアは再び大地に帰還することができた。

 二人は大いなる大地の偉大さに感じ入ったのであろう。


『おろろろろろろ……』


 仲良く感謝の栄養を大地に与えた。


「さて、約束通り薬草採取を手伝ってもらおうか」


「そ、そんな約束してねえけど……わかったよ……」


 渋々ではあったが、アイルはお手伝いさんとして薬草採取に参加。

 敗者の罰ゲームでもあるのでもちろんタダ働き。せっせと薬草を集めて、おちびーズのお小遣いを増やしてやるがいい。


「そういや薬草集めすんのは久しぶりだなー」


 そんなことを呟きつつ、アイルはおちびーズに混じって薬草採取を始める。てっきり、ちんたら嫌々な仕事ぶりを見せるかと思っていたが、これが思いのほかテキパキと働く。

 さっと辺りを見回したかと思うと、迷いなく薬草のある場所へと進み、ちゃちゃっと採取して次の場所へ。

 さらにその合間には、おちびーズに採取のコツなんかを教えるという余裕ぶりだ。


「お姉さん、薬草あつめるの上手ですね!」


「いっぱい練習したの?」


「ああ、故郷の森でさんざんな」


 うんざりしたような感じで言うアイルだが、ディアとノラに尊敬の眼差しを向けられるのはまんざらでもない様子。

 そうか、俺のサバイバルは二年程度だが、ある意味アイルは生まれてからずっとなのか。そりゃ薬草採取も上手いに決まっている。


「そうだ! ここは勝負を持ちかけて、負けたら二人が一人前になるまで薬草採取の指導をするよう約束させれば……!」


「なるほど、さすがはケイン様、名案ですね」


「おいそこぉ! せめて声を抑えるとかしろや! エルフは耳がいいとか関係なく普通に聞こえてんじゃねえか!」


 俺とエレザの会話を聞き咎め、アイルは両手に薬草を握りしめながら憤慨する。


「あとお前、二人の先生ならちゃんと指導しろ! ただ好きにやらせるのは教育じゃねえぞ!」


「確かに。そうなると……やはり勝負だな」


「そっちに話を戻すなよ! もうお前と勝負なんかしねえよ!」


「なん……だと?」


 完璧な計画が破綻してしまった。

 かに思われたが――


「まあ、素直にオレの方が優れてるって認めるなら? オレとしてもお前が嬢ちゃんたちの指導をするのは心配だし? ときどきなら指導してやってもいいんだけどな?」


 ふふーんと、せせら笑いを浮かべるアイル。

 これまでの負けっぷりなど、記憶から消去されでもしてしまったような切り替えの早さはいっそ清々しさすら感じさせる。

 と――


「アイウェンディルさん」


 そこでエレザがため息まじりに口を開いた。


「な、なんだ、やる気か? でもオレはもうお前ともやらねえぞ!」


「いえそうではなく、ケイン様が親しみやすいからと、出会ったばかりの貴方があまり馴れ馴れしくするのはよろしくないと思いまして」


「はあ? なんだよ、もしかしてこいつ偉い奴なのか?」


「おや? ケイン様は使徒様ですが……」


「え?」


「使徒様です」


「……」


 すん、とアイルが真顔になった。

 手に持っていた薬草がぽとっと落ちる。


「な、なんで、いまさらになって、そんなこと、いうの……?」


「御存知なかったのですか?」


「と、とおでから、もどったら、ねこつかいって、イキのいいのがいるって、きいたから……」


 なんで片言になる。

 青ざめたアイルは瞳をうるうるさせながら言う。


「ゴメンナサイ、おねがい、こ、ころすのは、ワタシだけに。このよから、エルフを、けしさるとか、そういうのは、やめて……」


「そんなことしないよ!? え!? 世間的に使徒ってそんなヤベエ奴って認識されてんの!?」


 ショックだ。

 俺は悠々自適な生活を志す善良な移住者なのに。


「……エルフ、ころさない?」


「殺さねえよ!」


 まったく、俺を何だと思っているのか。

 エルフ皆殺しなんて何の意味がある。

 公示人ならいざしらず。



    △◆▽



 俺が使徒と知ってアイルは急によそよそしくなったが、薬草採取を終える頃には元に戻っていた。

 もしかして鳥頭なのだろうか?

 まあ変に怯えられるよりも、無駄に突っかかってくるイキりエルフでいる方が若干マシなのでよかったと思うことにしよう。


 薬草採取を終えた俺たちは王都へ帰還し、まず冒険者ギルドで集めた薬草を納品する。

 いつもより採取時間が短くなったものの、薬草採取のエキスパートだったアイルの献身的な働きによっていつもの倍近くの薬草を納品することになり、おちびーズの懐は潤った。


 こうして俺たちは今日の薬草採取ピクニックを終え、宿に戻ろうと夕暮れの帰路についたのだが――


「このへんは全然来たことねえや。あんまり活気がねえんだな」


 当たり前のようにアイルが付いてきている。

 これについて誰も何も言わない。

 おちびーズはまったく気にしていない。むしろディアとノラはすでに懐きつつある。出会ったときは警戒していたラウくんですら、アイルがいることを受け入れていた。

 エレザやシセリアは指摘する立場にないと思っているのか静観だ。


「なあ宿はまだ遠いのか?」


「もうちょっとだが……お前なに普通についてきてんの?」


 どうも俺が確認するしかないとわかり、率直に尋ねてみた。

 するとアイルは首を傾げる。


「なんでって、ほら、一緒に仕事しただろ? こういう場合、みんなで一緒に食事して騒ぐじゃん? え? オレ行っちゃ駄目なのか?」


「べつにダメってことはないが、なんか普通に同行してるもんだから不思議に思えた。もう会うことはねえぜ、とか言いながら消えるかと思ってたんでな」


「はあ? 嬢ちゃんたちに薬草の集め方を教えるって約束しちまったし、そんな消えたりしねえよ」


 無駄に律儀なところがある奴だ、見た目も言動もヤンチャなのに。


「宿に行ったら、さっそくメシにしようぜ。めっちゃ腹へってんだよ。誰かさんのせいで全部出しちまったからな。昼にもらったパンが美味かったから期待してんだ」


「ありがとうございます!」


 親父さんの料理が褒められ、ディアはにっこり。


 やがて森ねこ亭が見え始めたところで、おちびーズは我先にとダッシュ。

 ただいまーと叫びつつのご帰還だ。

 遅れて俺たちも宿へ入ると、おちびーズはすでに食堂の大きなテーブルにスタンバイして、わくわくと今日の夕食に胸をときめかせている。


「やあ、みんなおかえり。今日はケインくんに教えてもらったカラアゲだよ」


 今日の晩ご飯はカラアゲか。

 これまでにも転移者が来ているのだから、カラアゲくらい広まっていると思いきや、宿屋夫婦は知らないようだった。

 伝わってない、ということはないと思うので、おそらく情報の伝達が遅くて広まっていないのだろう。


「たくさん用意するので、アイウェンディルさんも遠慮せずに食べてくださいね」


 すでにおちびーズからアイルの話は伝わっているようで、宿屋夫婦は一緒に食事をする気になっている。

 と――


「カラアゲ? どんな料理なんだ?」


 カラアゲを知らないアイルが首を傾げる。

 あ、そうだ。

 こいつ名前が『鳥を愛する者』なんだよな。

 カラアゲが鳥料理だと知ったらブチキレたり……。


「カラアゲは鳥のお肉を油であげた料理です! おいしいです!」


 どうしようかと思っていたらディアが答えてしまった。

 これはまずい――


「おっ、鳥料理なのか、いいねえ!」


 全然まずくなかった。

 なんか鳥を愛する者(アイウェンディル)さんたら、喜んでるよ。


「お前、鳥食べるの?」


「え? 食うよ? 大好きだぜ?」


「ええっ、名前が『鳥を愛する者』なのに?」


「んお!? エルフ語わかるのか? ああ、確かにオレは『鳥を愛する者』だ。だから鳥が大好きなんじゃん」


「えぇ……」


 そういう『愛』かよ。

 好物なのかよ。

 エルフの感性どうなってんだ。


 まあ変なところで気を揉んでしまったが、やがて親父さんのカラアゲが完成。あとはみんなで準備をして、アイルというお客さんを交えての夕餉が始まる。


「こいつがカラアゲか……」


 まじまじとカラアゲを眺めてから、アイルはがぶっと齧り付く。

 で――


「――ッ!?」


 ビクンッと震え、そして騒ぎ出す。


「う、うめっ、うめえ!? うめえぞこれ!? うめぇ!」


 そこからはガツガツと、それはもうガツガツと、シセリアとためを張るほどの勢いでアイルはカラアゲを貪った。

 すっかりカラアゲに魅了されたようだ。

 色々とアレなエルフではあるが、無邪気にカラアゲを頬張っている様子を見るとなんとなく憎めなくなる。


 で、そんなアイルとの出会いから三日――


「なあなあ、今日はさー、鳥を狩りにいこうぜ、とりー、とーりー」


 そこにはわざわざ宿を移り、すでに森ねこ亭の朝の風景に馴染みつつあるアイルの姿があった。


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― 新着の感想 ―
[一言] あぁっ、今作でも主人公の家(、でいいよね、もうw)に愉快な仲間たちが集結していくのか(笑)
[良い点] 喰って愛する愛好家とかやべえな。
[一言] 更新ありがとうございます。 懐かれた...
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