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【書籍化】くたばれスローライフ!  作者: 古柴
第4章 犬も歩けば
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第37話 閑話 ヴェロア

 ぼく、ヴェロア!

 五歳!

 こーしゃく家の長女!

 弟はディフェード、妹はヴェルナ!

 三つ子! なかよし!


 うちにはふしぎな決まりがあって、ときどき生まれてくるとくべつな子はぎしきをうけなくちゃいけないんだって。

 そのぎしきっていうのは、うちの町の近くにある森にはいって、ひみつのばしょにいってヌシに話をきくの。

 それで、なんかぼくがそのとくべつな子みたいで、ぎしきのためにみんなと森にやってきた。

 ぼくだけで森に入らないといけないからって、ちちやはは、じーじやばーばはしんぱいしてる。

 でも大丈夫。

 この森にはもう何回もきてるもん。

 いつもは誰かといっしょだったけど、きっと大丈夫だよ。


 ぼくがぎしきをうけるのを、たくさんの人が見送りにきてくれた。

 うちのみんなだけじゃなくて、この国の王さまも。

 ぼく、はじめて王さま見たけど、なんかすごく強そう。

 さすが王さま!


 みんなに見送られて、ぼくは森の入り口にあるしんでんから森へはいった。

 ちょっと心細いかな……?

 ううん、そんなことない。

 ぼくはおねーちゃんなんだし、これくらいへっちゃらだもん。


 ぼくはげんきに、どんどん森のおくへはいっていった。

 この森にいるまじゅーは、ぼくのほうが強いってわかってるから、気づけばかってに逃げていく。

 だからぼくが気にするのは、ひみつのばしょを見つけられるかどうかだけ。

 森をすすんでいけば、ちゃんとたどり着けるってちちは言ってた。

 だからぼくはどんどん森をすすんでいった。


 そしたら、なんかぶわーってすごいけはいがあった!

 もしかしてヌシ!?

 なんか怒ってる!?

 ぼく、なにも悪いことしてないよ……!?


 しっぽを丸めてふせていたら、けはいはすぐになくなった。

 もー、なんだったのー?

 ふしぎに思いながらまた森をすすみはじめて、そこでぼくは気づいた。


 なんか森が……あれ、この森、ぼくの知ってる森じゃない!


 どういうことなの、ってはじめはすごく驚いたけど、ぼくはすぐにわかった。

 ここがその『ひみつのばしょ』につうじてる森なんだって!

 なら、あとはそのばしょにいってヌシに会って話を聞くだけだね!


 そう思ったんだけど……。

 いくら森をすすんでも、ヌシはなかなか見つけられなかった。


 むー、これは思っていたよりたいへんかも。

 すぐに帰れると思ったのにー……。


 ぼくはお腹がすいたらかじつをさがして食べて、知らないまじゅーがむかってきたら、がおーって追い返した。

 そうやって何日も森を歩きまわって、そしてぼくは見つけた。


 森のなかにある家。

 そこはなんかふしぎな感じがするばしょで、ぼくはここが探していた『ひみつのばしょ』にちがいないって思った。


 じゃあ、あの家に住んでる男の人がヌシなんだね!


 これで帰れる、ってぼくはヌシに話を聞こうとした。

 そしたらヌシはぼくにお肉をくれた。


 おいしい!

 やっぱりヌシだ、まちがいない!

 きっとぼくがとくべつな子だから、とくべつなお肉をくれたんだ!


 ぼくは嬉しくなって、これで帰れるってヌシの家からふしぎなことがおこったばしょまでもどった。

 でも帰れなかった。


 あれー? なんでー?

 ぼく、ちゃんとヌシに会って、お肉をもらったよー?


 どうしてなのかわからなくて、ぼくはいっしょうけんめい考えた。

 でもわからなかった。

 もしかしたら、同じばしょからだと帰れないのかなって思って、また森をあっちこっち歩きまわったり、またヌシに会いにいってお肉をもらったりした。

 でもぜんぜん帰れない。

 秋がおわって、冬がきて、春になって、もう何日たったのかわからないくらいこの森にいる。

 きっとみんなしんぱいしてるから早く帰りたいのにー……。


 そう思っていたある日、ヌシの家がなくなってた。

 かわりに、じめんには大きな穴。


 どういうことなの!?

 ヌシ、どこ!?

 困る、ヌシいないとぼく困る!

 お肉は!?


 びっくりしたぼくは、どこかにヌシが埋まってるんじゃないかって、あっちこっちいっしょうけんめい掘った。

 ヌシはでてこなかったけど、かわりにヌシの新しいにおいがこの場所から森へつづいていることに気づいて、ぼくはそれを追いかけた。


 なんかヌシは森からでていっちゃったみたい。

 森の外はしらないところで、ここはどこなんだろってふしぎに思いながらぼくは大きな町までやってきた。

 うちの町よりずっと大きそう。

 そして……いた!

 ヌシいた!


 もー、ぼくをおいてっちゃダメでしょ!

 ぼくお肉ほしいんだから!

 あと、ぼくを売ろうとするのはもっとダメ!

 がるるる……!



    △◆▽



 ヌシはケインって名前なんだって。

 ならケーだね。

 ケーは森に住むのをやめて、この町の宿でくらすみたい。

 宿の子のディアは、ぼくにもここでいっしょに住もうって言う。

 もうひとりの宿の子のラウーはあんまりしゃべらない。

 でもなでるのがじょーず。

 きもちいいの。

 ラウーならぼくの子分にしてあげてもいいかな。


 それからぼくは、ケーがまたどっかいっちゃうと困るから、なるべくいっしょにいるようにした。

 お出かけにもしっかりついていくよ。


 ケーと町を歩いてわかったけど、やっぱりここ、うちの町よりずっと大きいね。

 町のなかに大きなこーえんがあって、そこはすごく走りやすくって、ついいっぱい走っちゃう。

 それで林のなかに入っていったら、ディアくらいの子がいるのを見つけた。


 なんだろ……。

 この子のにおいは、どこかで嗅いだことがあるような気がする!


 たぶんうちにいた頃……むー、なんか懐かしくなってきちゃった。

 みんなはげんきかな?

 林にいた子は、いっしょにここに住もうって言うけど、ぼくはケーといっしょにいないといけないからダメだよ?


 どうしようかと思ってたらケーがきて、その子とはまた明日会おうねって話になった。

 でもその日の夜にはその子も宿でくらすことになってた。

 その子の名前はノラ。

 そのあとすぐ宿にはエレザがふえて、しばらくしたらシセーが宿でくらすことになって、そのまたあとにはアイルとクーニャがふえた。


 べつに人がふえるのはよかったんだけど……困ったのは猫!

 ぼくのところでは珍しかった猫が、五匹も宿に住みついちゃったの!

 ラウーったらすっかり猫に気をとられるようになちゃって、ぼくをあんまりかまってくれない。


 もー、ぼくの子分なのにー!

 しょーぶにも勝ったし、かたきうちもしてあげたでしょ!


 猫を追い出したいけど、猫はだいじにしなくちゃいけないし、それになんだか、ただものじゃない感じがするから、うかつに手はだせない。

 こうなったら、なかまをふやしてたいこうするしかない!


 うー、でもフリードはあんまり頼りにならないしー……。


 どうしようと思っていたら、ある日、ぼくの知ってる女の人が宿にきた。

 ははの友だち。

 ひさしぶりにちゃんとなまえを呼ばれたから、ぼくはげんきよくへんじをしたよ。

 この人、ノラのお母さんなんだって!


 ノラのお母さんの話だと、ここは魔界じゃなくて汎界みたい。

 ぼくはぎしきにでかけたまま迷子になったみたいで、うちのみんなはず~っとぼくを捜してるんだって。


 どういうこと……?

 ケーってヌシじゃなかったのー?

 ぼくのかんちがい?


 もー! ケーはもー!

 なんで森のなかなんかでくらしてるの!

 ふしぎなばしょにいたから、ぼく、ヌシとまちがえちゃったでしょ!

 まぎらわしいでしょ!


 ぼくが汎界にきちゃったのは、ケーのせいみたい。

 ぎしきはもういいから、ぼくはすぐにうちに帰ることになった。

 そしたらケーの猫と、宿の猫たちが助けてくれるみたいで、みんなで魔界にあるぼくのうちにいくことになった。


 まずはケーの家があったところにいって、それから魔界にあるうちの森へ。

 そしたらなんかぼくを呼ぶ声がきこえてきて、ぼくはその声のほうへ走った。

 そしてたどりついたのが、知らないふしぎなばしょで、そこにはしんでんがあった。


 あれー? ここってもしかしてー?


 うん、今度はちゃんと『ひみつのばしょ』にきたみたい。

 しんでんには狼の像があって、ぼくに話しかけてきた。

 この像がヌシなのかな?

 ヌシはケーたちに話があるみたいで、ぼくの体をかりたいんだって。

 いいよって返事をしたら、ちょっとぼんやりして、気づいたらぼくは人の姿になってみんなと森の入り口の神殿にもどってた。

 しんでんからでると、ははやディフェードとヴェルナがいた。


 ひさしぶりー!

 ぼく、帰ってきたよ!



    △◆▽



 みんなとうちに帰って、ちちやじーじやばーばにもただいまをした。

 そのあとケーたちは王さまのことで話をはじめたけど、ぼくたちはみんなで遊んだ。


 ラウーのなでなではディフェードとヴェルナも気に入ったみたい。

 みんなにはテペとペルって呼ばれてる。


 それからは、なんかケーがうちに王さまをつれてきたり、みんなで王都にいくことになったり。


 それで王都についたら、みんなとおわかれしないといけないことになった。


 どういうこと!?

 そんなの知らないよ!

 なんでおわかれしないといけないの!?

 やだー! うちに住めばいいでしょ!

 せめてラウーだけでもおいてって!


 ぼくはいっしょうけんめいていこうした。

 それでなんとかみんなで宿にもどることになって、そのあとケーがぼくたちがすぐに会えるようにって、うちと宿を行き来するための扉をよーいしてくれた。


 よかった、これならいつでも会えるね!

 みんないっしょ!

 あとテペやペルやちちやははもいるから宿の猫たちにたいこうできる!

 そう思ってあんしんしてたのに――。


 なんかいろいろあってケーが猫になった!


 ダメでしょ! ケーが猫になっちゃダメでしょ!

 むちゃくちゃになっちゃうでしょ!

 もー、さっそくラウーは夢中になっちゃってるし、テペやペルまでなついちゃった!

 もー! もー!

 なんでケーはこんなにもふもふになっちゃったの!

 もー! こんなのずるいでしょ!

 もー! もー! もー!


 ここまで読んでくださった方、いいねしてくださった方、ブックマークしてくださった方、評価してくださった方、コメントしてくださった方、誤字報告してくださった方、ありがとうございます。


 ようやく四章を締めることができました……。

 不定期更新というよりも更新休止状態ですみません。

 五章はまたそのうちに投稿しますので、よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] あ、ヌシだと思ってたのかなるほどw
[良い点] ケーに対して割と常識的な指摘ばかりしてて笑いました。そらあんな森の奥に家建てやしないし急にネコにならんわなぁ…
[一言] お疲れ様です 更新あるだけでありがたい
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