私が好きなものは傘のあそこのとこ
くるくる。
私は今折りたたみ傘を手首で小刻みに回しながら歩きています。
その理由は簡単。髪の毛が巻き込まれて抜けるのをを心待ちにしながら歩いているのです。
貴方もありませんか? 折り畳み傘で髪の毛が抜けた事。
今、私は雨道を歩きながら傘で巻き込まれて抜けた時のプツンとした痒くなる痛み。
その過程を脳内で想像して歩いています。
数えきれない髪の毛が一本。ただ一本だけ、それが折り畳み傘の軸の連結部分に巻き込まれるのです。これはなんだか受精の確率に近い気がするからワクワクした気になります。
くるくる。
……今日はなかなか抜けない……
くるくる。
……だめだ。もう駅のホームだ。抜けなかったぁ。
私は駅のホームで電車を待ちました。一番先頭に並ぶのは避けてます。電車が来た時、背後の誰かに突き落とされそうだから。
電車が到着し、私は優先席ではない方の車両の端っこに座りました。……ふぅ。端っこってやっぱりいいよね。
私は背と頭を壁にくっ付けた。車両内はチラホラと人がいるだけで静かだ。だけど雨だから湿気た匂いと息がし辛い。菌で頭にキノコが生えちゃいそう。
私は酸素が欲しくなり、軽い深呼吸をしながら座りながらも、さらに深く座った。
プツン!
耳元で大きな音と痛みと痒みが襲った。
あーそうだった。この電車にある端っこの開かない窓も髪の毛引っかかるんだっけ。
この野郎。今度は負けないぞ〜
私は電車に小声で言ってやった。
おわり。
総武線はオススメ。




