序章 VRMMOを楽しむ1
2050年4月1日
その日、世界初となる完全なVRMMOのゲームが
日本で発売されると発表された。
発表をしたのは、【Change the world】というベンチャー企業。
それまで、全くの無名だった企業からのこの発表に世界の人々は震撼した。
あらゆるメディアが、新たな情報をいち早く報道しようと、発表後すぐに動き出したが、
何一つ【Change the world】についての情報を手に入れることはできず、
このゲームの発売によって起こりうる問題等を専門家を交えて予測するという報道の仕方で、
お茶を濁すことしかできなかった。
メディアが新たな情報の報道をしないことを疑問に思った有志の力により、
メディアが【Change the world】について1つも情報を手に入れられていないという情報が、
世界に広められた。
それを皮切りに、世界中で様々な考察がされるようになり、
「国によって、情報が秘匿されているのではないか?」
「発表日が4月1日であることから、ゲームの発売ということ自体がフェイクである。」
など、様々な意見が囁かれた。
そうこうしているうちに時が過ぎ・・・
2050年4月30日
【Change the world】が、情報を更新する。
「〈お知らせ〉
長らくお待たせいたしました。
ようやく、発売日の目途が立ちましたのでお知らせしたいと思います。
発売日は2050年7月17日
ゲームタイトルは【Originally Developed Online】です。
もうしばらくお待ちいただく様にお願い申し上げます。」
情報の更新を待ち望んでいた人々は、ゲームの発売が事実であることに安堵し、
新たな情報に歓喜した。
そして・・・
2050年7月17日
4月30日以降に追加された情報を簡潔にまとめよう、
・【ODO】はフルダイブ型のVRMMO
・ストーリーは人類を襲う魔物を使役する魔王を倒すのが最終目標の王道ファンタジー
・グラフィックは現実以上
・端の見えない広大なフィールド
・武術や魔術を用いて戦うシステムで、
基本装備やスキルの他にプレイヤー自身でオリジナルのものを創ることが可能
そして今日、【ODO】は、延期されること無く予定通りに発売される。
ゲーム取り扱い店には特設のスペースが設けられ、前日から店前に長蛇の列ができていた。
全国で、累計3000万本の在庫が用意されているらしい。
絶対に手に入れなければ!!
・・・今、思い返せば、俺たちは浮かれていたのだろう。
待ち望んでいたVRMMOの発売に浮かれ、
事前情報の少なさで生じた疑問から目を背けてしまっていたのだ。
俺たちはまだ知らなかったのだ、
このゲームが歴史に名を遺すほどのある事件を起こすことを・・・