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カーネリア王国物語

王女殿下の戸惑い

作者: 太郎

作者の欲望を詰め込んだお下劣ラブコメディ第3弾です。

単品で読んでも分かるように、したかったよね……。

温かい気持ちでお読みください。

◆イザベラ・フェン・フォールジュ


「イザベラ・フェン・フォールジュ! 我が愛しのエリーゼに対する数々の嫌がらせ! 最早言い逃れは出来ないと知れ! その卑しい性根は到底王妃の器ではない!」


 会場に男らしい、深く魅力的な声が響き渡る。 わたくしの婚約者、アラン・オブ・ベルジックの声だ。

 何故そんな事を? 問い詰めたくても声が出ない。余りの衝撃に身体が震える。王妃の器ではない、とは侮辱するにも程がある。


「王妃とは、この心優しいエリーゼにこそ相応しいのだ……。よって!わたし、アラン・オブ・ベルジックはお前との婚約を破棄し、このエリーゼ・クレモンテとの婚約を宣言する! ……その貧相な身体で、一時でも私の婚約者で有れた事、感謝するのだな!」









 ……悔しくて目が覚めるなんて最悪だわ。

 

 思い出したくもないのに夢に見るなんて、とは思うけど、あれだけ酷い侮辱を受けたのだ。傷ついていないはずもなかった。

 夢の内容は本当に起きた出来事。まさか王妃の主催する園遊会で、わたくしが誹謗され婚約破棄されるだなんて、誰が想像できただろう。


「起きられておいででしたか。遅くなって申し訳ございません」


 わたくしの侍女のカーミアが、朝食の為の準備をしに部屋に入ってくる。わたくしは嫌な夢など忘れることにして、これからの事に気持ちを切り替え起きることにした。

 何せわたくしは、今日からカーネリア王国の王立の学園、カーネリア学園に通うのだ。


 とはいえ、わたくしはこの国の民ではない。

 カーネリア王国の隣国、フォール王国の王女。イザベラ・フェン・フォールジュ。それがわたくし。

 先の出来事での醜聞から離れるため、国王陛下である父に言われ、急遽この国へ来ることになった。のんびりとしたこの国で、ゆっくり心の傷を癒すようにとの親心だ。


 広大で豊かなカーネリア王国は、周りを険しい山々に囲まれいるため、他国に攻められることもなく穏やかな国だ。わたくしの国は、その険しい山々の中にある、小さな小さな国。

 小さいとはいえ、我が国は鉱石や宝石、岩塩など、豊富な資源を抱えている。カーネリア王国とは、豊富な食料を輸入し、生活に必要な塩を輸出する良好な関係を築いている。

 民は皆純朴で、勤勉で、わたくしの大好きな自慢の祖国。

 わたくしはこのカーネリア学園で、自国に役立つ事を積極的に学ぶつもりだ。




「姫様、……本当にその格好で行かれるのですか?」


 学園に向かう準備を終えたわたくしに、カーミアが戸惑いがちに声をかけてきた。


「勿論よ! 胸が高鳴るわ!」


 言葉通りにボヨンと弾む胸。わたくしは自慢げに胸をそらし、得意げに馬車に乗り込んだ。














◆カルライン・ロウ・カーネリディア


「そんな訳で、彼女は暫く王宮に留まる。知っておいてくれ」


「は~い。了解兄上」


 軽い返事に眉を寄せる兄、アズルディアス。これは小言が始まる前に退散だな!

 そそくさと部屋を出る僕の背後から大きなため息が聞こえた。




 僕はこの国、カーネリア王国の第2王子、カルライン・ロウ・カーネリディア。王太子たる兄のアズルディアス・ロウ・カーネリディアとは普通に仲の良い兄弟だ。

 王位は、完璧王子の呼び名高い兄上が継ぐのが一番だし、正直そんな重責面倒くさい。気楽に政策の手伝いとかしてるのが性に合ってる。流石に無駄飯食らいは出来ないからね。


 明日は醜聞のあった隣国のお姫様が、心の骨休めに来国されるらしい。先触れがあったんだってさ。

 まぁ、歳は兄上と同じ18歳で、カーネリア学園にも通いたいみたいだから、兄上が御相手するのが一番いいよね?






 なんて思ってた時期もあったね~。うん。


 彼女、イザベラ殿下が陛下に挨拶する時、僕もそこに居たんだけどさ。まぁ、隣国の王族が挨拶に来るんだからそれ相応の対応しなくちゃいけないし? 兄上も、兄上の婚約者のフィリスティーナ・ディ・アンガスティ公爵令嬢も居たし? 僕も一応王族だし? 一緒に挨拶したんだけどさ?


 ……可愛かったよね!とっても!


 金髪縦ロールにエメラルドの瞳とか何処のお姫様だよ! って王女様だったね。うん。

 フィリス義姉上には負けるけど、まぁわりかし胸も大きかったし? 腰から臀部に至るまでの流れる曲線とか真顔で見ちゃったよね!


 あ、ヤバい、思い出したら揉みたい。


 じっと見つめる僕の視線に気づくことなく、彼女は兄上と話してたっけ。

 ……な~んかモヤっとするな~。











 



◆イザベラ・フェン・フォールジュ


「何よ! 何よ! 何よ! おっぱいおっぱいって!」


 ベシベシクッションを叩きながら思わず叫ぶ。部屋にはカーミアだけだ、問題は無い。


 カーネリア学園は楽しかった。山では出来ないこと、出来ること。少し変えれば試せそうなこと。この国の歴史とそれに伴う技術。学びたい、知りたい事が多過ぎて、どの授業を受けようか決めれない程だった。

 案内は王太子殿下自らして下さって、婚約者のフィリスティーナ様とも親しくなった。王太子殿下の婚約者なら、本当の友達になれるかしら? なんて思ったりして。

 自国にも友達は居るけれど、やはり王女に対する遠慮は抜け切らないもの。

 問題は……。


「チラチラ、チラチラ、チラチラ見過ぎよ! そりゃフィリスティーナ様は巨乳だったけど! めちゃくちゃ巨乳だったけど!! もう、お胸に話しかければいかが? って言いそうになったわよ!」


 下を向けば何の障害もなく床が見える。思わず自分の胸部に手をやれば、ささやかな膨らみがあるだけ。ベッドには丸めた布キレが投げ出されていた。


「ええ、見栄を張ったわ。だって、ずっと色気が無いだ、女と思えないだ言われてきたのよ? 悔しいじゃない! でも大きくならないんだもの! ならないんだもの!!」


 自分で言ってて悲しくなった。


 切れ長の怜悧な瞳に煌めく月光のような銀糸の髪。精力的に政務をこなす姿は確かに完璧王子の異名を持つのも頷ける。

 素敵だな。なんて一瞬は思った。一瞬はね。


 余りにフィリスティーナ様の胸を見るものだから、フィリスティーナ様のお胸は大きくて羨ましいわ。なんて言ったのが間違いだった。そうだろう! から始まった王太子殿下のおっぱいへの滾る思いをこれでもかと聞かされた。


 ……話が長い! 重い! しつこい!!


 貴方が()()()()()()()()様のおっぱいが好きだって良くよく分かったわよ!

 それより必死に止めようとしてたフィリスティーナ様の真っ赤な顔何とかしてあげないなさいよ! 居た堪れなくて身の置きどころが無いって、最後は涙目だったわよ! わたくしも心の底から居た堪れなかったわよ!!


 更・に・は!


 学園の話を何人かの生徒に聞いたのだけれど、その中の女生徒が、まぁイチャイチャイチャイチャ! 婚約者の男性とイヤンうふんとイチャイチャイチャイチャ!

 あれ、絶対閨を共にしてるわね。

 ……だからと言って!


 クソみたいな俺様勘違い野郎に婚約破棄なんて言われたわたくしの前でイチャイチャし過ぎだっての!


 ……ゴホン。口が悪かったわ。

 清楚なフィリスティーナ様のお友達って話だったけど、余りに肉食系過ぎてびっくりしたわね。


 とにかく、初めての学園は、最高に楽しかったけど、最悪に疲れたわ。














◆カルライン・ロウ・カーネリディア


「そうですね~。我が国は平地が多いので、農地への水源確保は大変でしたね。大雨でも氾濫しないように測量して、何処がどれだけの水を必要としているのか考えて……」


 あ~、やっぱ可愛いよね。うん。

 なんか、こう、撫で回したくなっちゃうし!


 真面目な話をしながらニヤニヤしないように気をつける。

 目をキラキラさせながら、僕の話を聞いてくれるイザベラ殿下の可愛さったら! ちょっと勝気な所も魅力的だよね!

 何とな~く、姿形が可愛いな。なんて初めは思ったけど、話してみれば性格だって可愛かったし? 自国のために一生懸命勉強してるとこも素敵だし? なんか良いな! って思うんだよね。うん。

 兄上のフィリス義姉上好きには呆れてたけど、結局僕も、同じ血が流れてるんだって実感しちゃったよ。父上も母上大好きだし。


「わたくしの国は高低差が激しいから、山頂に近づけば近づくほど水の確保は難しくなるの。でもため池を作るにしても、井戸を掘るにしても、道が険しくてなかなか……」


 え~、悩ましげな表情とかご馳走様で~す。

 めっちゃ色っぽいんですけど! 抱き締めて口付けしたいな~。ダメかな~。流石に怒られるよね~。


「そこはやっぱり情報ですね~。色んな山頂付近の情報を集めて、何処を掘るのが一番効率が良いのかとか……」


 いや、話はちゃんと聞いてるよ? 女性はそういうとこ疎かにしたら嫌われるって言うし? やっぱり好かれたいし?

 僕はにっこり笑って答える。僕だって完璧王子な兄上の弟だし? それなりに顔は整ってるはずだし? 金に近い銀髪だけど、目は兄上と同じコバルトブルー。笑顔は魅力2割増しだって話だし、使えるものは何でも使わなくっちゃね!


 ところでさ、イザベラ殿下の胸がさ、日増しに大きくなってる気がするんだけど……。

 これって、そういうことかなぁ~? なんて……ねぇ?














◆イザベラ・フェン・フォールジュ


「見てこなかったわ……」


 今までの経験上ありえない事だわ。紳士としては当たり前だけど、殆どの男性は無意識にでも見てしまうもの。そう、女性の胸を!

 なのにカルライン殿下はわたくしの胸をチラリとも見なかった!……王太子殿下も見ないけど、フィリスティーナ様の胸にくぎ付けだから、アレはまぁアレよ。なんと言うか、除外よね。


「きっと本当の紳士なのね!」


 ちょっとときめいてしまう。

 自国ではまな板だ、女の出来損ないだなんて陰口をたたかれていた。主に婚約者だったアランに。

 アランが侍らせる女性は大体巨乳だったし、悔しかったから、山羊の乳をいっぱい飲んだり、胸が大きくなる体操なんて聞いたらすぐ試してみたりして、結構頑張ったんだけど……。お察しよね。


 カルライン殿下とは、王宮でたまたま出会って話したりしてるうちに仲良くなったの。御歳は16歳だそうだけど、お兄様の王太子殿下を支えるべく、治水の事や福祉の事。公共事業や経理についてなど、幅広く携わっているみたい。

 わたくし達が王家としていられるのも、大切な民あっての事。

 民のことを考え、王家としての責任を果たすべく頑張ってる姿って、見ていてとても素敵だと思うわ。


 ……でも、男の人って、大きい方が好きなんでしょう?


 下を見ればこんもりと盛り上がった山脈が2つ。カルライン殿下と会う時は、つい気合を入れて準備してしまう。……でも、見栄を張りすぎたかもしれない。だって、この胸が嘘だと分かったら嫌われてしまうかもしれないじゃない?


 どうしたのかしら、嫌われるなんて考えると胸が痛い。

 相手は豊かなカーネリア王国の王子なんだもの。小国の王女のところなんか来てくれるわけない……。って何考えてるのよ!

 わたくしはこの国に勉強に来てるのよ!カルライン殿下の事が好きなんて、そんなこと……。きっと、思い違い……よね?









「姫様、カルライン殿下は、お胸ではなく、その、他の場所を熱心に見つめておいででした」


 とは言えないカーミアであった。














◆カルライン・ロウ・カーネリディア


「ベラ! 今日も綺麗だね!」


 僕はそう言いながらイザベラ殿下にハグする。

 順調に仲良くなって、今ではベラ、カイン、なんて呼び合う仲になれた。僕、頑張ったからね!

 華奢な身体、しっかりと張った腰。もっとギュッと抱きしめたいけど、まだ早いかな~?

 本当は隙間なくびったり抱きしめたいし? 口付けて、ベラの背中に回した手でソコを揉みたいし? 撫でて、撫でて、そんでもって揉みしだきたいんだよね!


 ま、ぶっちゃけお尻だよね。うん。


 兄上の気持ちが良く分かる今日この頃。兄上はおっぱいおっぱいうるさかったけど、僕はどうやらお尻の方が好きみたい。

 揉みたい揉みたい! ってうるさい兄上のせいで、女性のおっぱいは揉みたくなるもの。な~んて思ってたけど、やっぱ好みってあるよね。うん。


 山岳の国の特徴なのかな? 山を歩くせいか腰がしっかりしてて、そこからぶりゅんとした張りのあるお尻への曲線とか撫で回したいよね!

 そんでもって、柔らかく膨らんだ2つの魅惑の丘。……おっぱいじゃないよ? お尻だよお尻! 揉みたいよね? 揉みたいって思っちゃうよね?


 ……やっぱ胸って邪魔じゃない?


 抱きしめて、口付けながらお尻揉むとなるとさ、障害物にしかならない気がするんだよね~。あんまり大きいとお尻に手が届かないし?


 まぁ、調べたらさ、ベラに婚約破棄突きつけた男ってのがさ、結構な巨乳好きだったみたいで? 影で色々言われてたみたいなんだよね? だからベラもさ、ちょっとトラウマになってるっぽいんだよね。うん。

 

 公爵家の次男でさ、ベラと年頃が合うからってだけで選ばれたんだよ? ベラに王妃の器じゃない! とか言ったんだって?


 確かにフォール王国ってさ、建国してから女王が王位に就いた事ないけどさ? 王位継承法に男児継承に限るとか一言も書いてないよね?

 フォール国王の一人娘だよ? ベラが女王になって、夫は王配になるよね? なんで王位に就けるとか思っちゃってるの? 頭おかしくない?

 大体、例え男児継承だったとしてもさ、王弟殿下いるよね!?


 ……うん。頭悪かったんだね。


 王妃様主催の園遊会で、次期女王に向かって王妃って……。随分堂々と王位簒奪宣言したもんだよね~。

 まぁ、その後はお察しだよね?


 そんな大馬鹿野郎の言葉なんか気にしなきゃ良いんだけどさ、長く言われ続けて、胸が大きくないと女性として魅力が無い。みたいに刷り込まれちゃったみたいでさ? 僕は小さい方が好きって言いづらいんだよね。

 なんか、取って付けたような感じになっちゃうでしょ?


 抱きしめたい。 でも胸が邪魔。

 口付けたい! でも、胸が邪魔!

 ぷりぷりのお尻を揉みたい! 撫でて揉みしだきたい!! でも! 胸が! 邪魔!!


 後ろからお尻撫でたらって?

 抱きしめるなら前からでしょ! 僕は! 口付けながら! 揉みたいの!! びったりとくっ付いて、イチャイチャ口付けしながら、思う様揉みしだきたいの!! 常識でしょ!?














◆カーミア・ラウジコット


 あの目は本気だ。あれは獲物を狙う目。

 あの男、いや、カルライン殿下は、確実に姫様の臀部を狙っている!


 今日、初めて口付けをしたと頬を染める姫様。君の事、凄い好きみたい。なんて言われて舞い上がっておられる。しかし、直ぐに沈んでしまわれた。

 ……まだ、胸の事を話せていないのだ。


 姫様、あの男はお尻フェチです! 安心して下さい!


 言えたらどんなに楽か……。


 私は姫様付きの侍女だ。姫様の要望に応える為、常に姫様に付き従っている。勿論、初々しい初の口付けの際にも物陰で待機していた。王族にプライベートは無い。

 当事者では気づかなくとも、2人を見守っている我ら侍女、侍従達は皆気づいている。


  姫様! あの男はかなりの尻フェチです!


 言いたい。だが言えない。流石に他国の王族の性癖など、一介の侍女が口にして良いものでは無い。

 姫様が悲しげにしているのに、なんとわたしの不甲斐ない事か!


「姫様、世の殿方とはお胸が好きな方ばかりではございません。お御足でございましたり、()()でございましたりと、それはもう多種多様の好みがございます」


 ことある事に言うのだが、今までの環境が悪かった。あの勘違い野郎と婚約したせいで、姫様の周りには、王配候補に取り入る巨乳好きばかり集まっていたのだ。

 やれ、あちらの乳がデカい。こちらの乳の方がデカいと囃し立てる中に立たされ、姫様は、男は巨乳好き。と思い込んでおしまいになられている。

 更にはこの国の王太子殿下までもが巨乳好き……。いや、あれは()()()()()()()()様のおっぱい好きだった。除外だ。


 ……それはともかく、我が国が小さく、王配として迎えられる年頃の、家督を継がない男があれしか居なかったのが悔やまれる。

 カルライン殿下には、その溢れんばかりの(臀部への)愛で、姫様の心の傷を癒して頂きたいものだ。














◆イザベラ・フェン・フォールジュ


 どうしよう。どうしたら?

 カインは何時でもわたくしを褒めてくれるわ。可愛いって、素敵だって! でも、胸の装備が外せないの! だって自信が無いんだもの!


 カインが好きだって言ってくれて、わたくしも自分の気持ちを誤魔化せなくなった。

 民の事を考え、積極的に官吏の仕事を手伝って、お兄様である王太子殿下を助けているカイン。わたくしの国に来ても、民の事を考える素敵な王配になると思うのよ?

 ……もう、そん事まで考えてしまってる。


 でも! 胸の装備が! どうしても外せないのよ!!


 見栄を張ったままじゃダメだってわかってるの。ありのままの自分を好きになって貰いたい。今日こそ外そう。今日こそは外そうって……。


 ……でも、もし馬鹿にされたら? 女の魅力が無いって言われたら?


 自国で言われ続けた言葉。カインがそんな酷いこと言うわけないって思ってるわ。何時だって胸に興味を示さないもの。どんなに胸の大きな人が来ても、それこそフィリスティーナ様の見事な豊乳であっても、ちっとも興味を引かれた様子はないもの。

 それに、カーミアだって胸が好きな男性ばかりじゃ無いって言ってたわ!


 だから、だから! 今日は本当の自分でカインに会うの!


 そう思ってるのに、なんでまだ付けてるのよ! なんで外せないのよ! 自分のことながらもう泣きそうよ!









 なのに……。


 その人は誰?


 どうして二人でベンチに座っているの?


 ……あぁ。……やっぱり男の人って、大きい方が好きなのね。















◆カルライン・ロウ・カーネリディア


 僕の悩み。それはベラが可愛い事。名前を呼ぶとパッと笑顔になって、目が合うと頬が染って……。


 最高に可愛い過ぎるよね~!


 だから口付けたいって思っても仕方ないよね? ……胸部装甲に押し戻されるけど!

 ギュッと抱きしめたいって思っても仕方ないよね!? 胸部装甲に! 押し戻されるけど!!


 そう、装甲なんだよね。わかってる。毎日大きさが違えばさ? 流石にね? 男の僕でも、気づいちゃうよね? うん。


 僕は胸よりお尻が好きです!

 胸はむしろ小さい方が好きです!!


 でも言えない……。

 トラウマだってわかってるから、余計に言いづらいよね?


 揉んじゃえばいいんじゃない? って思うけどさ、装甲に押し戻されると、駄目って言われてる感じがしちゃって手が止まっちゃうんだよ!

 もうこっそり洗濯場に下着持ってくのも日常だよね!?

 え? 何? うちの家系は欲求が溜まると淫夢を見るのが当たり前なの? 兄上もそうだったって? 何の慰めにもならないけどね!!


 なんて日々モンモンとしてたんだけど、兄上が教えてくれたんだ。学園には恋愛相談の神がいるって。

 なんだそれ? って思ったけどさ? 兄上もその神のお陰で? フィリス姉義上と上手くいったらしいし? ちょっと行ってこようかな~なんてさ? 思っちゃうよね?









 確かに神は存在した。


「装甲に負けずに揉め」


 え? いいの? 揉んじゃっていいの? そりゃ僕はそっちの方が嬉しいけどね? ……本当にいいの!?

 死んだ魚の目をした神って言うからどんなかと思ったけど、可愛い女性だったよ? でも話し始めたら死んだ魚の目になったから、あ! これか! とか思っちゃったよ。

 でもなんだろう、自分の願望、白日の元に晒された感が凄い。


 装甲の事には触れずに? 思いの丈を込めて揉めと? 口付けが受け入れられているなら、がっつり揉んでも愛情表現? ふ~ん。


 ……なんか、イケそうな気がする。


 って、ベラ居るし! こっち見てるし! 相変わらず可愛いし!!

 どうしよう。今日もお預けとか我慢できる気がしないよね?














◆イザベラ・フェン・フォールジュ


 気まずいわ。女性と会ってるとこにかち合うだなんて……。

 カインは気にした様子もなくわたくしに声を掛けてきたし、本当に話してただけで何も無いとか? でも、酷い浮気男は笑顔で誤魔化すって言うし……。

 

「ベラ、今日も可愛いよ……」


 そっそうよね! カインは何時だって褒めてくれるもの! わたくしの勘違い……! 挨拶の口付けと思ったら唇に口付けされたわ!

 って悩んでる間に何処かの部屋に着いてたの? 準備室?

 ちょっ! 待って? 口付け激しくない? 息が! 息が出来ないから!


「ごめん、我慢出来ないみたい」


 耳元でこそっと言われたけど!? なんか凄く抱きしめられてるし!?


「ヒャウッ!?」


 おし……おし……お尻! そこお尻だから! 待って! もっ揉むの? え? 揉むの!?


「待って! 待って! カイン!?」


 慌てて止めたのに更に激しく揉まれるお尻。どういう事!? ついでに耳朶まで甘噛みされたわ!?


「だからごめんね。ベラが可愛くて……ずっと、ずっと触りたかった……」


 え? うっとりしてる? うっとりしてるんですけど!? ってそのまま口付け再開するし!? 胸じゃないの? 普通は胸を揉むんじゃないの!?


 って何時までお尻揉んでるのよ! 撫でてさすって揉み過ぎじゃないの!? わたくしも何だか変な気分に……ってそうじゃなくて!


 ……あっ、当たってるのよ! 固くて熱いのが!


 冷静になりましょう。そうよね、これはアレよね。閨の教育で聞いたら知ってるわ。男性が興奮すると、その、そうなるのよね?


 ……興奮してるの!? お尻揉んで!? 胸じゃないの!?


「ベラ……ベラ! 夢じゃない、本物のベラのお尻」


 口付けの合間にわたくしの名を呼んで、それはもうお尻を揉みしだきながら下腹部にぐっと、その、熱いソレを押し付けるの。って、今完全にお尻って言ってたわよね?


 え? お尻なの? お尻がすきなの?


 こう、ギュッと抱きしめる度に胸が邪魔みたいな態度止めて! 何だか傷つ……かないわね。

 そうね、カインはお尻が好きなのね。

 凄くわかったわ。てゆうか身をもって実感してるわ。だからね? そろそろお尻から手を……。

 ねぇ? 聞いてる? ちょっとわたくしも変な気分になっちゃうし。学園の中だし。お尻が好きなのわかったから!


 ……ねぇ? カーミアにずっと見られてるの、流石に恥ずかしいんだけど!?













◆カルライン・ロウ・カーネリディア


 神の助言に従って、もしくはこれ幸いと自分の欲求を満たしたあの日から、ベラは胸部装甲を外した。


 もう、抱きしめながらお尻触るの最高!!


 挨拶の口付けから抱きしめて、そのままお尻触る流れができてるよね。毎日ベラのぷりぷりなお尻触れるなんて生まれてきて良かったよ!

 ベラは何時も真っ赤になるけど、それも可愛くて大好きだし? 僕に触られるってわかってるのに、モジモジしながら近寄ってくるのとか? 本当もう、こう、そのまま閨に連れ込みたいぐらいだよね!?


 ベラの専属侍女のカーミアが、その度に親指を突き立ててみせるから、ついやり過ぎちゃうんだけどさ。可愛いんだから仕方ないよね?







 あ、そうそう。今、僕がフォール王国に婿入りするって話、詰めてるとこなんだけどさ? カーネリア王国が大きくて助かったよ。国交の強化に繋がるって、向こうの国では歓迎してくれてるみたい。根回しって大事だよね?

 空飛ぶトカゲ便が早くて助かったよね! 通常3ヶ月はかかる山越えが1週間で済むし? 早くベラと結婚したいし?


 結婚して早く閨を共にしたい!


 あ、願望漏れちゃったよ。

 閨でこう、ね? 僕の上に跨ってさ? 僕の……僕の……。




 ……ちょっと洗濯場に行ってくるよ。うん。



お読みくださりありがとうございます。

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