プロローグ
新しい小説を書いてみました。
楽しんでもらえたら嬉しいです。
薄暗い部屋の中で月明かりにきらめくナイフが俺に向かって突き進む。
ヒュンッ
ナイフが空気を切り裂きながら、俺を目指して進むのがやけにゆっくり見える。
……ザシュッ
肉が避ける音がして、腹部に鈍い痛みが走る。
「うぅ…はぁ……うっ…」
低いうめき声が口から漏れる。
「うっ……ははっ…あはははっ」
うめき声が次第に笑い声に代わっていく。
(何で?……俺は…笑ってなんかいないのに……?)
笑っている声は聞き覚えのある俺の声だが、笑っているのは『俺』ではない。
(笑っているのは誰だ…?)
いくら問いかけても聞こえてくるのは笑い声だけ。
なぜか体を思い通りに動かせなくて、そのことがもどかしかった。
「あはははっ……ゴボッ……うっ…はははははっ…」
口の中が鉄の味で溢れかえり、俺の体が傾いて、いや、倒れていく。
(せめて……俺を刺した奴を…見たい……)
薄れていく意識の中でそう強く思って、ナイフを握っている手の持ち主を探す。
その手の持ち主は……
俺だった。
「うわぁああ!」
「わぁっ!」
叫び声を上げて飛び起きる。
急に動かしたせいか、体中が痛い。
さっきのことが夢だったことに気づいて、ほっとした。
そのとき、俺の叫び声以外に別の大声が聞こえていたことを思い出して、周りを見回すと……
「うぁえ!?」
変な森にいた。
「なっ!?えっ!?」
変な声が出てくるがそんなことは気にしていられない。
さっき、森にいると表現したが、森かどうかも分からないのだ。
樹らしきものには色とりどりの丸い拳大の大きさの様々な形をした木の実や葉が鈴なりになっていて、地面は綺麗なエメラルド色のふわふわした草らしきものがそこら中に生えている。
そして、俺のそばには、ぱっと見、15,16くらいの男子が座っていた。
問題はその男子の頭にはその髪の毛と同じ色の犬みたいな耳が生えていることだ。
「え!?何!?これ、夢?夢だよな?」
全然理解できない状況にパニックになっていると、犬男子が口を開いた。
「君、何言ってるの?夢じゃないよ?」
声から察するにさっきの大声はこいつが出したらしい。
「お……」
「お?」
「お前なんだよ。その耳は何だ?コスプレか?」
そうだ。コスプレだとすれば、まだあり得る。
この変な森は、撮影かなんかだ。
「は?『コスプレ』って何?僕はハルム。ハルム・スワード。ヴォルク人の魔法使いだ。君こそ何なんだ?」
「俺は雷斗。普通の人間だ」
「ライトか……ってそれより一体何があったんだ?突然現れたと思ったら、腹にナイフが刺さってて、死にかけてたし……」
「マジで!?」
慌てて、腹を見ると傷一つなかった。
それどころか、服にも穴一つ空いていない。
「もう、大丈夫だよ。僕が治したから」
「治したって……どうやって?」
「……普通に魔法で」
……分かった。こいつは厨二病のコスプレイヤーだ。
「嘘だと思うなら、見せてあげようか?」
「見せれるもんなら見せてみろよ」
「わかった。……『小さき炎』」
ハルムがそういうと、その手のひらに火の玉が現れた。
「……まじか」
…………魔法はあるし、変な獣耳生えた男子はいるし、植物は変だし………
もうこの世界は何なんだ!