依頼その26 移住の白魔術師
「俺達がこの世界に来たのはな……」
ノヴァさんが揺れる馬車の中で話し始めると。
「はぁい、私も聞きたぁい!」
「わっ、イサベル!!」
空から馬車に乗り込んできたイサベルに、わたしは悲鳴を上げた。
「今までどこに隠れてたんですか!?」
「隠れてたとは失礼ねぇ。馬車の上を飛んでただけよ」
いつの間にか居なくなってたと思っていたら、ずっと居たんですね。
「続きいいか?」
ノヴァさんがあぐらをかいて言った。
そして口を開き、ノヴァさん達の過去を話し始めた。
「俺達は地球からこの世界にやって来た。来てすぐに、ガルムニアの盗賊らに襲われた」
「…………性的な?」
「違う」
イサベルに茶々を入れられたノヴァさんが、こめかみをひくつかせながら言った。
「ま、ステルス機能も付いてたんだけど、それを使う前に近くにいた盗賊に襲われたんだよ」
「…………掘られたの?」
「違う」
今度はヨシタカさんが、イサベルに茶々を入れられキレ気味になる。
ステルス機能というのも何か分からないので気になりますが……。
すると、ノヴァさんが再び話し出した。
「盗賊に襲われた俺達は、その車両を破壊され、地球から持ってきたものもほとんど盗られた。俺達は抵抗したんだが、魔法を駆使して戦われ、手も足も出ずに俺は気絶した」
「プッ、ノヴァさんダサすぎです!」
「おうコラ、ソフィー。折檻してやる」
私がからかうと、ノヴァさんはブチ切れて襲ってきた。
「やめて! 犯される!」
「うるせぇ! 誰がお前なんか犯すか!」
「ノヴァ君はホモだもんねぇ」
「黙れイサベル!」
私とイサベルにからかわれ、ノヴァさんが激昂する。
それをニコニコしながら見ていたヨシタカさんが。
「まあまあ、話が進まなくなるからその辺で。それで、僕達が襲われて、星哉は血を流して倒れたんだ。それを見た盗賊達は、死んだと見て俺だけ連れ去ったんだ」
「血を流して!? ノヴァ君、そんなに酷く犯されたの!?」
ブチ切れているノヴァさんをからかったイサベルが、胸を揉みしだかれた。
「痛い痛い! ごめんなさい! ノヴァ君、ごめんなさいってばぁ!」
「オラオラっ! ふぅ……ま、車内の救急道具で治療したからな。命に別状は無かった」
イサベルの胸を揉み終えたノヴァさんが、ホッと息をついて言った。
胸が大きいとあんな痛そうにに揉まれるんですね……。
今日ほど貧乳で良かったと思える日は無かったです。
「それで俺は、車内に残っていた地球の物を売り捌き、大金を手にして義隆を探してたんだ。そこでソフィーに出会って黒の下着を拝んで」
「ノヴァさん! なんで言うんですか!?」
私は頬を赤らめて叫んだ。
なんで人の下着の色を言っちゃうんですか。
黒で合ってますけど!
「と、まあ俺はこんな感じだ。義隆はどうだ?」
ノヴァさんが話を振ると、ヨシタカさんが口を開いた。
「俺は盗賊らに捕まって、奴隷としてマセントシアの小都市に送られそうになったんだ。偶然王都の近くで逃げれて、腕時計やら身につけていたものを売り捌いて生活してた」
ウデドケイってなんでしょう?
チキュウのものなんでしょうが……。
でも、ノヴァさんやヨシタカさんが大金を持っていた理由が分かりました。
チキュウの物を売り捌いてって……まあ地球に戻れなかったのなら仕方ないですね。
「その後は洗脳されちゃってたらしいし、覚えてないな」
ヨシタカさんはそう言うと、軽く笑った。
「ま、これで義隆に修理してもらって地球に帰れるんだ。1年ぶりだな……」
ノヴァさんは1年ぶりに故郷に戻れる事を心から喜んでいるような顔をしている。
1年も異世界で生活だなんて、辛い経験を……。
「ノヴァ君、でもどうしてこの世界に?」
イサベルが空気を読まず、ノヴァさんに尋ねた。
すると、ノヴァさんとヨシタカさんは気まずそうな顔をして見つめ合い……。
ノヴァさんは深呼吸をし、私たちの方を見て言った。
「俺達がこの世界に来る事になったのは、地球で“異世界移住計画”というものがあったからだ」




