依頼その24 解除の白魔術師
「はあぁい、お久しぶりぃ! エリートサキュバスのイサベルちゃんよぉ」
兵士達の首根っこを掴んで投げ飛ばしながら、イサベルがこちらを見て手を振ってきた。
イサベルも相変わらずですね。
「ロック、あんたはイサベルと共に兵士の相手をしててくれ」
「了解だ。任せておけ」
ノヴァさんに指示されたロックさんが、兵士達に向かって駆け出した。
広い玉座の間に、約50の兵士達が私達を囲んでいる。
全員鎧を着ており、完全武装だ。
イサベルやロックさんが兵士達の注意を引いている間に、ノヴァさんは私に話し始めた。
「これがさっき見せた魔導書をちぎった紙だ。これで魔法抵抗力低下と洗脳魔術を習得できる」
ノヴァさんが差し出した紙を手に取り、私はその2つの魔術を習得した。
「習得したらその紙は燃やしてくれ。これ以上洗脳魔術の使い手が増えたら困るかな」
まあ、そうですよね。
私は魔法で2枚の紙を燃やすと、私達に放たれた魔法にすぐさま対応した。
「『プロテクション』!」
私達に向けて放たれた氷の礫が、防御魔法によって弾かれた。
「ナイスだ、ソフィー。それじゃ、俺達は王様の洗脳を解きますか」
「はい! 行きましょう!」
私達は、イサベルとロックさんが作った、兵士達の隙間を走り抜け、そのまま王様の元まで駆けた。
イサベルが兵士を投げ飛ばし、どんどん気絶させていく。
ロックも魔法でその支援をしている。
これなら私達が兵士に邪魔される事も無いでしょう。
「それ以上は近づけさせんぞ」
静かに椅子に座っているアダム様の後ろから、この国の丞相であるカール様が現れた。
カール様は、国一番の魔法使いであり、この国の高い権力者でもある。
ここで私達の邪魔をするという事は、カール様がこの事件の黒幕の可能性も……?
すると、ノヴァさんが私の前に出て、庇うように立った。
ノヴァさん……!
確かに、私のプロテクションでほぼ全ての攻撃魔法をガードして、ノヴァさんが状態異常等の魔法を引き受けたなら、最強ガードが出来ます!
ノヴァさんは、近くで寝転がっている兵士から、剣をとるとそれを構えた。
「さあ、かかって来いよ。黒幕のカール。俺の親友を返してもらうぜ」
ノヴァさんはそう叫ぶとカール様に斬りかかった。
ちょっ、最強ガードで王様の元まで行くと思ってましたのに!
私も慌ててノヴァさんに着いていき、魔法を放つ準備をした。
「おらああぁぁ!」
「『プロテクション』」
ノヴァさんが斬りかかるも、カール様は防御魔法でそれを微動だにせず流す。
「今だ、ソフィー! やっちまえ!」
ノヴァさんんがカール様の相手をしている間に、王様の元まで行けと言うノヴァさん。
私はその通りに走り、逃げようとするアダム様に向けて、魔法を放った。
まずは魔法抵抗を下げる魔法。
次に、洗脳魔法で王様の洗脳にアクセスして、解除魔法で……!
「うらあぁ!」
その時、ノヴァさんが私の後ろで叫ぶので、何事かと思い見てみると、カール様を地に組み伏せていた。
「痛い痛い! 悪かった、私が悪かったから許してくれ! ……許してください! 何でもしますから!!」
…………異世界の武術は圧倒的な強さですね。
ノヴァさんは立ち上がり、カール様を蹴飛ばした後、私達のもとに駆けつけた。
仮にも一国の丞相なんですからそんな扱いは……。
「義隆!」
「星哉か。……? ここはいったい?」
洗脳が解けたアダム様……ヨシタカさんは、状況を飲み込めず呆然としていた。
「これだけ聞いてくれ。“お前は絶対的な王”だ。子の状況をどうにかしてくれ。あの二人が仲間だ」
イサベルとロックさんを指さして、ノヴァさんがそう言った。
それだけじゃどうにもならないんじゃ……。
もっと情報を与えないと、ヨシタカさんも困るでしょうに。
「なるほど……。了解した」
ヨシタカさんは立ち上がり、大きく息を吸って叫んだ。
「王である私の命令だ! よく聞け! 全員戦闘を中止せよ!」
ヨシタカさんがそう叫ぶと、兵士達は揃って武器を投げ捨てひれ伏した。
まさか、絶対的な王と言われただけでこの場をしのげるだけの情報を……?
このヨシタカさん、かなり頭が回るんじゃ……。
ノヴァさんといい、ヨシタカさんといい、地球人って頭が良く回るのでしょうか。
「もっと誘惑したかったのにぃ……」
イサベルがそんな事を言いながら、ロックさんを連れて私達の元にやってきた。
「さ、長居は無用だ。ヅラかるぞ!!」
そう叫ぶとノヴァさんは、城の外へと走り出した。
「ちょっ、待ってください! どこへ行くんですか!? 国民への説明は!?」
私はノヴァさんに着いていきながら尋ねた。
「それはエリスとアテナに頼んである! 国王は洗脳されてましたと、騒ぎが起きたら街で言いふらせとな! これから国王が街に出たらそれが本当だと分かる!」
本当に用意周到ですね……。
でも、エリスとアテナまで作戦を知っていたと言う事は……。
「ノヴァさん、私にだけ何も教えてくれなかったんですか!?」
叫んで詰め寄る私に、ノヴァさんは腹の立つ顔で笑いながら。
「ふっ、当たり前だろ。お前みたいなバカに言ったら作戦が無駄になる」
「な、なにおう! 私はバカじゃないですよ!!」
ぎゃあぎゃあと叫び合う私達に、ヨシタカさんが笑いながら。
「まあまあ、こいつは素直じゃないんだ。本当は君の事が好きで照れてるだけだよ」
「バッ、違ぇよ! 違うっての! イサベル、ロック、ニヤニヤすんな!!」
顔を真っ赤にして弁解を始めるノヴァさん。
ノヴァさんが私の事を好き……?
「えっと、ノヴァさん……それはやめて欲しいです」
「うるせえよ! 誰もお前の事が好きなんて言ってねぇだろうがよぉ!!!」




