依頼その23 突入の白魔術師
「お前達は何者だ?」
私達が地下牢出会った男が聞いてきた。
その男は私と同じく白髪で、歳も私達とさほど変わらないのでしょう。
ノヴァさんはその男に右手を差し出したまま。
「国家反逆的な感じの罪で捕えられていただけの一般市民だ」
だけってなんですか。
私が言うのもなんですが、重大事件じゃないですか。
「ああ、知ってるぞ。国王に無礼な態度をとったノヴァのソフィーだろ? 地下牢の巡回兵が噂してたぞ」
白髪の男が答えた。
情報統制ガバガバじゃないですか。
それに、私は無礼な態度をとってませんよ!?
「そのソフィーとノヴァだ。それで、あんたは国王暗殺未遂事件の半人じゃないのか?」
!?
ノヴァさんの言葉に、その男の眉がピクリと動いた。
「そうだが……なぜ知っている?」
男は鋭い目付きになり、恐ろしい顔でこちらを睨んできた。
すると、ノヴァさんが。
「街で少し噂になってたぜ。ロックが居なくなってるから、そいつが事件の犯人じゃないのかって。城に潜入するには、全属性の魔法が使える白髪の方が便利だからな。その辺で気づいた」
そうスラスラと述べるノヴァさんを見るロックの目が、次第に柔らかいものになっていき。
「正解だ。俺はロック。国王暗殺未遂事件の犯人だ」
「──ロックさんは、どうして王様を暗殺しようと思ったんですか?」
地下牢を歩きながら、私はロックさんに尋ねた。
「新国王になってから、暴政が敷かれていた。だから俺は王を殺そうと思って、夜中城に侵入したのだが、枕元で殺そうとしても一切魔法が効かなくてな。その場で取り押さえられた」
ロックさんはそう述べると、悔しそうに歯ぎしりをした。
やっぱり魔法は効かないのですね。
ならノヴァさんと同じく異世界人だという事ですか。
未だに異世界だなんて信じられないのですが……。
ロックさんと合流し、3人で地下牢を駆け巡り、私達は城の1階へと上がる階段を見つけた。
「さて、ここから先はずっと追いかけ回される訳だが、ソフィーとロックにはバンバン魔法を撃ってもらいたい。もちろん、ケガ人は出さないようにな」
ノヴァさんの言葉に、私達はコクリと頷いた。
「作戦を起こして、国王の元へ向かうのか?」
ロックさんがノヴァさんにそう聞くと。
「ああそしてそこで」
「殺すのか」
「助けるんだ」
ノヴァさんとロックさんは、意見が食い違って睨み合いを始めた。
この2人って仲悪いみたいですね。
「それよりソフィー、これを」
そう言ってノヴァさんが懐から取り出したのは、2枚の紙切れ。
「えっと……魔法抵抗力低下魔術と、精神洗脳魔術の習得……ですか?」
それらの紙切れには、その文字がかかれていた。
「これは昨晩、アカデミーの資料室で見つけた魔導書からちぎったページだ。これを使えば、その魔術を習得できる」
…………。
魔導書からちぎったページ……。
つまり、これを使って…………。
「これを使って、私に王様の洗脳を解け、という事ですか?」
私の言葉にノヴァさんはコクリと頷いた。
「嫌ですよ! どうして私がそこまで巻き込まれなきゃいけないんですか!」
「お前の研究のせいで洗脳されてんだろうが! 自分の研究の後始末ぐらい手伝え!」
「私は研究をしただけで、魔術を完成させてなんかいませんよ!」
「どうでもいいから早く行こうぜ。その女は着いてこいよ」
私とノヴァさんが言い合っていると、ロックさんが階段を上り、扉を開けながら言った。
──私達は地下牢から脱出すると、城の上階へと全力で駆け抜けた。
「おらおら! どけどけぇ! そんなにノヴァ様にぶちのめされたいか!?」
「ノヴァ、もう少し静かにしてくれ」
「ノヴァさん、どんどん城の兵士を集めちゃってますよ!? 何してくれてるんですか!?」
ノヴァさんが大声で叫ぶせいで、城の兵士達をどんどん集めている。
せっかく、私やロックさんが、魔法で霧を出したり、兵士達を麻痺させたりとしているのに無意味じゃないですか!
「そろそろ玉座の間だ。気を引き締めていけよ?」
ロックさんがそう言うと、玉座の間の扉に魔法を放ち、こじ開けた。
「今だ! 来い、イサベル!!」
「えっ」
私達が玉座の間に突入した瞬間、ノヴァさんがそう叫ぶと……。
天井にヒビが入り、ブチ破ってイサベルが突入してきた。
「うわあああ! サキュバスだあああ!」
「逃げろ! 国王様をお連れして逃げろお!」
イサベルの登場に、その場にいた兵士達が泣き叫ぶ。
阿鼻叫喚の状況に、国の将軍様だけは、王様を庇うように前に立ち、剣を構えた。
「貴様ら、どうやって脱獄した! この場で捌いてくれる!」
かなりご立腹ですね……。
でも、私達がこの国を救わなければならないんですもんね。
「ソフィー、ロック、覚悟は出来てるか? 後悔はしないか?」
イサベルが兵士達を手玉に取っているのを見ながら、ノヴァさんが呟いた。
「覚悟ならとうに出来ている。それに、後悔するくらいなら覚悟なんて決めないさ」
ロックさん、めっちゃカッコイイ事言いますね。
「ソフィーは?」
私の方を振り返り、ノヴァさんが尋ねた。
「私はノヴァさんの依頼を受けた時から後悔してますよ。覚悟だって、こんな急展開じゃ出来てませんよ」
苦笑しながら言うと、ノヴァさんも同じ顔で笑い返してきた。
なんだが、胸の奥が熱く……。
「さあ、王様よ。日本で若狭義弘と呼ばれし我が友人よ。助けに来たぞ!」
そう高らかに宣言するノヴァさんに。
「カッコイイぞ、ノヴァ」
「カッコイイですよ、せ、い、や♪」
私達が茶々を入れると。
「うるせえ黙ってろ! 少しくらいカッコつけさせろよ!」




