依頼その16 暗殺の白魔術師
「二人は一緒に風呂に入ったり、一緒に寝たりするのか? キスとかは? その先は?」
「13歳の前で下ネタはやめてください」
実家に帰ってそうそう、マリアに抱きついた私にノヴァさんが言った。
「ところでお姉様、エリス様は分かりますが、その方は?」
ノヴァさんの方を向きながら、マリアが言った。
「彼氏だ」
「か、彼氏ですか!?」
「違いますから! ノヴァさん、嘘をつくのはやめてください! マリアも騙されないでください!」
それを見ていたニヤケ顔のエリスが、肘でノヴァさんをつつきながら。
「ねえねえ、ノヴァ君。女の子に囲まれて幸せだねぇ」
「ああ。特におねロリは最高だ」
「ちょっと何言ってるか分からないです」
訳の分からない事を言い出したノヴァさんを、私はツッコんだ。
「えっと……ノヴァさん。私はマリアって言います。よろしくお願い致します」
私達が落ち着くと、マリアがノヴァさんにペコリと礼をして自己紹介した。
「おう、よろしくな、ロリア」
「マリアです」
いきなり人の名前を間違えるなんて、ノヴァさんは最低ですね。
「ソフィー、よく帰ってきたな! 久しぶりだ!」
「ソフィー、お帰りなさい」
「お父様、お母様!」
家の奥から、お父様とお母様が出てきた。
「それでは、エリスさんも、そちらの方も、どうぞお上がりください」
お父様に促されるままに、ノヴァさん達が家に上がった。
「──ガルムニアで学者をしていたノヴァです。ソフィーに依頼を申し込んで、マセントシアにやって参りました」
リビングのテーブルを全員で囲み、ノヴァさんが挨拶をした。
「娘がいつもお世話になっております。私はソフィーの母のアテナと申します」
「いつも娘さんを世話しております、ノヴァです」
おい。
「それにしても、アテナさん綺麗ですね。結婚したいくらい美人ですね」
おい。
お父様の前で何を言ってるんですか。
「あらやだ、ご冗談を」
「そうだろう! アテナは可愛いだろう! あ、ちなみにワシはニコラス・テレジアだ」
お父様が席を立ち、拳を握って熱く語りだした。
そして思い出したように自己紹介。
本当に私の両親は仲がいいですね。
大雑把で明るい性格の両親を、我が家の使用人達が笑ってるじゃないですか。
俯いて肩を震わせて、一生懸命我慢してますね。
「それで、どうして戻ってきたんだい? 店は上手くいっているのか?」
落ち着いて席に座ったお父様が聞いてきた。
「はい、私はノヴァさんに依頼を受けて街に戻って参りました。なんでも、人探しをしているそうで、それがこの国の王らしいのです」
「国王に会うために、娘さんの力をお借りしたいのです。御両親にも協力頂けたらと」
私の説明に、ノヴァさんが付け加えた。
「娘と仲が良いんだろう? なら断る訳にはいかないな」
ノヴァさんの依頼を、お父様は快諾してしまった。
お父様、辞めるなら今のうちです!
ノヴァさんは変人なんです!
「国王に会うなら、国営のアカデミーに行くといいだろう。学長のツテで謁見できるかもしれないな」
「ありがとうございます。それで、国王について何か知っている事はありますか?」
お父様がノヴァさんの依頼を請けてしまい、私が絶望しかけていると、ノヴァさんがお父様に聞いた。
「それが、あまり国王についての情報が無いんだよ。新国王就任式の時も、その顔を見た人は居ないらしい」
誰も顔を知らない国王?
それはどういう事でしょうか。
「分かりました。とりあえず、明日はアカデミーに向かってみます」
「ワシもそれなりに協力させて貰うとするよ」
ノヴァさんとお父様が席を立ち、笑顔で握手をした。
なんだか二人は相性が良さそうですね。
──夕飯を摂り終え、エリスが帰った頃。
お風呂から上がった私に、マリアとノヴァさんの声が聞こえてきた。
「なあロリア。なんでソフィーの事お姉様って呼ぶんだ?」
「マリアです。お姉様はお姉様です。お姉様がそう呼べと昔仰いました」
「そっか、なら俺もお兄様って呼んでくれ。別にお兄ちゃんでも構わんが」
「ダメですよ!」
私は隠れて聞いていたにも関わらず、思わず飛び込んでしまった。
「お姉様、盗み聞きは良くないですよ?」
「そうですわよ、お姉様」
「ノヴァさん、お姉様って言わないでください。気持ちが悪いです。それに、ですわよってなんですか」
そんな私達のやり取りを見ていたマリアが。
「お姉様はノヴァ様ととても仲がいいのですね。羨ましいです」
「お兄様な」
「ノヴァ様でお願いします」
ノヴァさんはいつまで呼び方に拘るんですか。
「わ、私達は仲がいい訳じゃないですよ!? どちらかと言うと仲が悪いんです!」
「ソフィー……一緒に旅して来てそれは酷いよ……」
「お姉様! ノヴァ様が可哀想です!」
あれ?
お姉ちゃんっ子だったマリアに、なんだか裏切られた気分です。
というかノヴァさん!
私達は仲良くないですよ!
その時。
街全体に緊急アナウンスが流れた。
『一週間前、国王暗殺未遂事件が起きました。犯人は先程確保され、五日後、処刑場で公開処刑される予定です』
国王暗殺未遂事件!?




