依頼その15 帰宅の白魔術師
「ノ、ノヴァさんの探してた人が、この国の国王なんですか?」
「ああ。どうやらそうみたいだ」
私が震えながらした質問に、ノヴァさんが答える。
「でも待ってください。ノヴァさんは、国王になれるような人と一緒に居たんですか?」
「まあそういう事になるかな。……実はな、そいつは俺以上の大金を持っている筈だ」
ノヴァさん以上の大金を?
でも待ってください、持っている筈ってどういう事ですか?
断定は出来ないのでしょうか。
「ノヴァさん、もしその人が国王になれたとして、どうして分かったんですか?」
私の質問に、ノヴァさんが今まで見た事がないほどの真剣な顔で答えた。
「この紙に書いてあった税の種類でだ。ここには見た事のある税が多く載っている。これらの税はあいつが知っているものだ」
見た事のある税と言うのは、ノヴァさんの故郷のガルムニアの税でしょうか。
それなら、ガルムニア出身の人なら当てはまるわけですが……。
「ねえねえ、それで大金を持ってるとどうして国王になれるのさ」
エリスがノヴァさんに聞いた。
「俺は国を買えるよりすこし少ない金を持っているが、あいつは更にそれ以上持っている筈なんだ。だったら国を買ったっておかしくない」
国を買えるほどのお金って……。
私が戦慄していると、エリスが。
「ねえねえノヴァ君。お姉さんと結婚しない? お金持ってるんでしょ?」
お金目当ての結婚ですか。
「構わんが、一緒には居られないかもしれないぞ。そうなっても金は要らんからやるが」
お金目当ての結婚を受けるってマジですか。
しかもお金は要らないとまで言いましたよ。
そんなにエリスの事を気に入ったんでしょうか。
「とりあえず、ソフィー。国王に会うにはアカデミー首席卒のお前の力が必要だ。また依頼させてくれ」
真面目な顔でそう言うと、ノヴァさんは頭を下げた。
ここまで真面目なノヴァさんは見た事がありません。
いつも下ネタばかりで。
口は悪くて。
だらけてばかりで。
そんなノヴァさんがここまでするという事は。
それほどその人の事が大切なのですね。
「分かりました。請けましょう」
私が優しく笑いながらノヴァさんに手を差し出した。
その手を顔を上げたノヴァさんが握り、笑い返す。
そして、ノヴァさんが人差し指をピッと立てた。
……?
……あっ。
「依頼金が100万ネルという事ですか?」
私が恐る恐る聞いてみると、ノヴァさんがコクリと頷く。
100万ネルでも十分ですが、ここで少し粘れば、ノヴァさんなら更に出してくれそうですね。
なんせ、ほぼ国を買えるほどのお金を持ってるんですから。
私が黙っていると、ノヴァさんが中指も上げた。
これで200万ネル。
更に薬指も上げ、300万ネル。
500万でよしとしましょうか。
ではそれまでじっくりと……。
ノヴァさんが小指を上げた。
ノヴァさんの首筋を汗がつたっていった。
この駆け引きは大事ですからね。
ノヴァさんも緊張してますね。
小指が上がって400万、その状態で。
「そっか……なら仕方ないな。エリスに依頼しよう」
「おっけい」
「す、すみませんでした! 私に請けさせてください! 300万……いや、100万でいいので!」
「──うぅ……私の400万ネルが……」
私が依頼を請ける事になり、私の家へと向かう途中、私は数百万も損した事に嘆いていた。
「別にいいじゃん。ソフィーの家はお金持ちなんだしさ」
「私は自分で稼いだお金がいいんですよ……」
「まあそんなに落胆するなって。仕事ぶりによっては追加で払うかもだしさ」
「本当ですか? 言いましたね!? よし、では早速向かうとしましょうか!」
早口でペラペラと喋り出した私を、エリスが抑えながら。
「はいはい、どこに行くの? まずは実家でしょ。挨拶しないとね」
エリスが私の肩を掴み、実家の方向へと向ける。
「早けりゃいいって訳じゃねぇぞ。今みたいな迷惑行為をしたら下げるかもだけどな」
「……ソフィーってば、急に大人しくなっちゃって」
「こいつは金にがめついからな」
うるさいですよ。
迷惑行為をしないのはいい事じゃないですか。
そうこうしているうちに、私の実家の前まで来ていた。
「私もついでに上がってくね。マリアちゃんに会いたいし」
私の家の大きな門を見上げながら、エリスが言った。
「別に構いませんが、先に抱きつくのは私ですよ?」
「マリアって妹だろ? 抱きつくってなんだよ。俺にもやらしてくれ」
「ノヴァさんはダメですよ」
「ノヴァ君はダメだよ」
私の妹に抱きつこうとする変態ノヴァさんに、私達はハモった。
私は深呼吸をし、ドアを開けた。
「ソフィーです! ただいま帰りました!」
すると、家の奥から急ぐように歩くマリアが出てきた。
「お姉様、おかえりなさいです!」
私は可愛い我が妹のマリアに抱きついた。
「ちょっ、お姉様!? 人が見てます!」
私に頬ずりをされ、顔を紅く染めるマリアが言った。
すると、それを眺めていたノヴァさんが。
「うん。女の子どうしってのは、やっぱりいいな」
この男は!




