依頼その14 国王の白魔術師
久しぶりに戻ってきた故郷のマセントシアで、幼なじみのエリスに遭遇した私は、いきなり胸を揉まれた。
「エリス、なんで私の胸を揉んだんですか?」
「なぜって、大きくなったかなぁって」
こいつ!
みんな私の胸をバカにして……。
「ところでところで、このイケメンは誰なのさ!」
私の隣に立っているノヴァさんを、指でツンツンとつつきながらエリスが言った。
「誰って、私が何でも屋を開いたから、そこのお客さんですよ」
「どうも、彼氏です」
「か、彼氏!?」
私が説明するも、ノヴァさんに邪魔を入れられエリスが騙された。
「か、彼氏……男っ気の無かったソフィーに……彼氏が……しかもこんなにイケメンな!」
「どうも、イケメンです」
「ノヴァさんは黙っててください」
イケメンと呼ばれて調子に乗ったノヴァさんの口を塞ぎながら、私はこれまでの経緯を説明した。
「──なあんだ、てっきり付き合ってるのかと思ったよ」
私の説明で誤解が解けたエリスが言った。
「でも、ヌルヌルになって抱き合ったりはしたよな」
「ッ!?」
ノヴァさんが誤解を招く言い方をしてエリスを再び混乱させる。
「ねえそれホント!? ねえソフィーはノヴァ君とそんな事したの?」
「しましたけど! しましたけど違います!」
私は再びエリスの誤解を解くために、ノヴァさんの口を塞いで説明した。
「──そういう事だったのね。……でも本当に何も無かったの?」
「何もありませんでしたよ……」
私の言葉に、エリスが残念そうな顔でふーんと言った。
「それで、街に戻って来たのはいいけど、このまますぐ帰っちゃうの?」
「もう帰りますよ。ノヴァさんの依頼で来ただけですから」
「ええー、少しくらい挨拶していけばいいのに。妹ちゃんも会いたがってたよ」
「うぐっ」
エリスが持ち出した私の妹とは、今は13歳でアカデミーに入学している。
妹のマリアは、私と同等の魔力の持ち主で、金髪の美少女だ。
妹はとっても可愛いんです。
私をお姉様って呼んでくれる可愛い妹です!
今すぐ帰って、姉っ子のマリアに頬ずりしてあげなきゃ!
「ノヴァさん、それではここでさようならです! 私は実家に戻るので! それでは!」
「あ、私も行くー」
「俺もー」
私について来ようとするエリスに便乗して、ノヴァさんが言ってきた。
「俺もー、じゃないですよ! ノヴァさんは人探ししてるんですから、探してきてください! さようなら!」
私はノヴァさんを押しのけ走ろうとすると。
「なんだよつれねえなぁ。まあいいや、行かせてもらおう。」
なんで着いてくるんですか……。
こんな人と一緒にいる所を親に見られたくないですよ……。
──実家への道すがら。
「へぇー、ソフィーってば旅の途中、池で漏らしちゃったんだ」
「うぅ……仕方ないじゃないですか……」
旅の途中で起きた事をアレコレと聞いてくるエリスに、私はついつい要らない事でも話してしまった。
これから暫くはこの事で弄られそうですね……。
「ねぇエリス。この話はもうお終いにしません?」
「んー、そうだねー」
「それじゃ、この話には二度と触れませんよ」
私はホッとため息をつくと、後ろを歩いていたノヴァさんが。
「さっきから何の話してるんだ? 俺にも聞かせてくれよ」
「さっきからずっと聞いてましたよね!? わざと言ってますね!?」
この男はいつもこうやって意地悪ばかり……。
そんな私達を見ていたエリスが、急にアハハと笑いだし。
「二人は面白いね! もっと仲良くなれそうじゃん」
「嫌だ」
「嫌です」
私とノヴァさんの声がハモった。
こんな時だけ揃うんですよね……。
普段は仲が悪いのに、こういう時だけ……。
ノヴァさんとは仲良くなりたくありません。
「それにしても、この街は随分と活気がないな」
街を歩きながらノヴァさんが呟いた。
それを聞いたエリスが。
「まあね。ソフィーがこの街を出た日、この国に新しい国王が就任したんだよ。ソフィーも知ってるよね?」
私が街を出る時に、新国王の就任の祭りがとても賑わっていたのでよく覚えている。
「それで、その国王がどうかしたの?」
私の質問にエリスが眉をひそめながら。
「あまり大きな声では言えないんだけどね、新国王が圧政を敷いているんだよ。高い税金に厳しい法律、兵役もかなり厳しくなったよ」
そういう訳でしたか……。
前の国王は民に優しく、厳しく税も取り立てていなかったのですが……。
新国王とはかなり酷い人のようですね。
「それがだいぶん酷くてさ。見てよこの紙」
そう言ってエリスが懐から取り出した一枚の紙には、税の名前がズラリと並んでいた。
私がこの街にいた頃から倍以上になってませんか?
それをジッと見つめていたノヴァさんが、口を開いた。
「間違いない、確信した。こいつだ」
「どうしました?」
今まで見た事がないような険しい顔をしたノヴァさんに、私は聞いた。
すると、ノヴァさんはゆっくりと息を吐きながら。
「俺が探していたのはこいつだ。この国の国王だ」




