依頼その10 魅惑の白魔術師
「そろそろソフィーとの二人旅にも飽きてきたんだよなぁ」
「何言ってるんですか。まだ二日目ですよ?」
サバンナスプリンター達に追いかけられ、池に突入した私達は、最寄りの街で結界が壊れた馬車を交換してもらった。
新しい馬車は、性能は前のと同じだが、トイレ付きで大人数用のものだ。
そんな馬車に乗り、日が沈んだ草原を走る中、寝る準備をしながらノヴァさんそうが言った。
ノヴァさんが寝た所を襲撃して、馬車から落としてやりましょうか。
馬車内を二分するカーテンを閉め、私はそこから首だけ出してノヴァさんに言った。
「ノヴァさん、私はもう寝ますが、隣で美少女が寝てるからって襲ったり、邪な気持ちで一人遊びしたりしないでくださいよ?」
「何言ってんだ。男として夜の一人遊びは止められん」
「……私の魔法で消滅させてあげましょうか?」
私は先程食べたバナナの皮を思い切り投げつけながら言った。
そのまま布団に潜り、ゆっくりと目を閉じ今日一日の疲れをとろうと……。
「ノヴァさん! さっきからゴソゴソうるさいですよ! ワザとやってますね!?」
──気持ちのいい朝を迎え、ノヴァさんより早く目が覚めた私は、ノヴァさんを起こす事にした。
「ノヴァさん、おはようございます」
「……ん……おはよう……」
体は起こさず、半目の状態で返事をするノヴァさんに。
「ノヴァさん、昨日はありがとうございました。襲われなかったお陰で純血を守れました!」
「おう、こちらこそ童貞を守れて良かったよ。ぶっ飛ばすぞ」
何故私とノヴァさんは口を開く度に喧嘩になるのかと思いながら、私の視線はノヴァさんの腰の下に向けられ。
「ノヴァさん、おはようございます」
「おう、おはよう」
「ノヴァさんの息子さんもおはようございます」
「はい、おはよう!」
裏声でそう言うノヴァさんに、私は吹き出した。
布団を持ち上げるノヴァさんの息子を見ながら私は言ったのだが、まさか裏声で返されるなんて。
ぷふっ。
「そんな事よりノヴァさん、早くその暴れ馬を落ち着かせてください」
「くっ……静まれ、我が体に眠る邪神よ!」
「邪神なら私が討伐しましょうか?」
急におかしくなったノヴァさんを放っておいて、私は朝食を摂り始めた。
「なあ、前の街でサンドイッチ買ったろ? 朝食はそれにしようぜ」
む…………。
人がパンを焼こうとした瞬間に……。
まあ構いませんけど。
「なあ、せっかくだし馬車を停めて外で食おうぜ。晴れてて絶好のピクニック日和だ」
む…………。
わがままですね……。
まあ構いませんけど。
私達は馬車を停め、草原に腰を下ろしてサンドイッチを食べ始めた。
「このハム卵サンドイッチは美味しいな。やっぱり旅の途中でこうやってご飯を食べるのはいいな」
「へすへーー」
私はサンドイッチを頬張りながら、ノヴァさんに生返事をした。
「でも、外でご飯を食べてて、モンスターに襲われたりしませんかね?」
私はふと気がついた事をノヴァさんに言った。
「まさか! こんな時にモンスターが襲ってくる訳無いだろ! まさかね! まさか来たりしねぇよ!」
「フラグ立てるのはやめてください!」
そういえばノヴァさんはこういう性格なんでした……。
その時、ピリッと何かを感じとった私は、立ち上がった。
「ノヴァさん、モンスターの魔力反応です! 近くに居るかもしれません! 馬車に戻りましょう!」
「はあ? せっかくいい天気なのに……」
渋々馬車に戻るノヴァさんを待ち、私も馬車に乗り込もうとして、すぐ近くまで来ていたモンスターに気がついた。
サキュバス。
そのモンスターは、男性を魅了する事で有名なサキュバスだった。
「あらぁ、そこにいい男の気配がするわね」
そう言いながらこちらへ歩いてくるサキュバス。
良い男の気配とは、このサキュバス誰の事を指しているのでしょうか?
ノヴァさんはダメな男ですよ。
というか、おっぱいが無駄にデカく、いろんな所がムチムチしていて、私はプロポーションで完全に負けている。
絶対許しません。
「あらぁ、そこの馬車の中に居るのねぇ。ねぇお嬢ちゃん、私にその男と合わせてくれないかしら?」
私と数メートルの距離まで近づいたサキュバスが言ってくる。
「とりあえずやってみようかしらぁ。『テンプテーション』ッ!」
サキュバスが魅惑魔法を馬車に放つ。
確かノヴァさんは魔法抵抗力が非常に強いんでしたよね。
なら大丈夫とは思いますが……一応言っておきましょうか。
「ノヴァさん、サキュバスは男性を魅了する事で有名ですから知ってますよね? 危険なので馬車の中から出てこないで……」
私がそこまで言った時。
馬車から勢いよく飛び出してきたノヴァさんが、サキュバスの胸に飛びついた。
そしておっぱいを揉みながら、ノヴァさんが叫んだ。
「久しぶりの大きなおっぱいだああああ!!!」
私が貧乳で悪かったですね!!




