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夢に見るほど

作者: ami.

 ーー何てつまらない現実なんだろう。


 佳奈は古典の先生の授業をつまらないと言わんばかりに話に花を咲かせるクラスメートたちのいつも通りの光景を見渡した。静かであるべき授業中なのだが先生が怒らないのを良い事に、前後のクラスメートとお喋りしたり漫画を読んだりケータイをいじっていたりと皆が好き勝手に過ごしている。


 そんな風に周りを見渡している佳奈自身も先ほどからケータイをいじっており、申し訳ばかりに開いてある古典のノートは白紙のままだ。いじっているケータイにはネットサーフィンをして見かけた小説サイトで"夢から覚めたら……"と言うテーマを掲げた特集記事が表示されたままである。

 夢から覚めたら全く違う世界だったなんて、実際には起こりえないっとは分かっていても違う世界を体験するなんて楽しそうだなっとついつい現実逃避して読み込んでいた。実際に代わり映えのしない現実に飽き飽きしていた佳奈は、自分ならどんな世界に行きたいか考えるだけでもワクワクしたのだ。


 やっぱり王道は可愛い女の子になれる事だろうっと1回も染めた事の無いまっすぐで地味な自分の黒髪を佳奈見つめた。せっかくならハーフタレントみたいなブラウンのくせ毛風な髪で、華やかな顔立ちに真っ白な肌にスタイルも良いのがいいだろう。そしてカッコいい男の子たちに囲まれてモテて溺愛される何て展開が王道であろうっと考えていると、意味が分からない古典の朗読を子守唄に彼女の瞼は徐々に重くなり気づいたら完全に閉じてしまっていた。


 ーーやばっ! 気づいたら寝ちゃってた!

 パチッと目が覚め周りを見渡すも古典のおじいちゃん先生が、生徒の様子を気にせず変わらない様子で授業を進めていて佳奈はホッと一息ついた。

 そこで少し違和感を覚える自分の肌はこんな風に透ける程白かっただろうかっと彼女は自分の手をまじまじと見つめる。そして視界の端にブラウンの明るく波打つ髪が見えた時には思わず叫び声を挙げそうになった。

 心臓が口が出そうとは良く言ったものだ。まるで頭全体が心臓になったかのように自分の脈が頭に響くのを感じながらも、彼女は自分に冷静になるように勤めてようとする。未だに手に握りしてめたままだったケータイはとっくに表示が消えていたが、その真っ暗な画面を恐る恐る覗き込んでみた。


 ケータイの黒い画面に薄ら映るのはハニーブラウンのくせ毛っぽい緩くカールのある髪に囲まれた、ハーフっぽい目鼻立ちのはっきりした顔で文句無しに美人と思われる女の子だった。小説のような事が実際に起こったのだっと思いながらも、こんな自分の思い通りになるなんて夢に違いないと彼女の心には"夢"という結論にストンと落ちついた。



 ーーせっかく、つまらない日常を抜け出せるなら楽しまなきゃ損でしょ!

 そう思っているうちに古典の授業が終わり昼休みを告げるチャイムが鳴った。「佳奈、ぼさっとしてないで学食いかないと席無くなるかもだし行こう 」と明るく染めた茶色い髪をワックスでオシャレにセットしたクラス1のモテ男である裕が声をかけて来た。それに続いて歩いて来た黒髪が涼やかですらっと長身の和風男子である洋介が「裕の言う通りだが、席は健太が取っているから大丈夫だろう。」と彼をたしなめる。

 

クラスの中心人物が元クラスカーストの平均に位置していた自分に話しかけてくるなんてっと学食に向かう道すがら、佳奈は自分が好きに設定した夢のすごさに心から感心していた。


 「おーい、佳奈ちゃーん! こっち! こっち!」学食に入るなり窓際の1番日当りがいい席を陣取っている可愛い容姿に人懐っこい性格で愛される後輩No.1の健太さんが大声を張り上げた。佳奈が呼ばれた席に座ると男子陣が昼食を買いに行くために食券を買う列に並ぶために歩き始める。そんな男性陣の後ろ姿をながめながら逆ハーレムのような現状に自分が少し浮かれている事を感じた。


 かっこ良くオシャレなイケメンで文句無しの学校モテ男のNo.1の裕、硬派で涼しげな容姿から隠れファンが1番多いと言われる洋介、ワンコロのように人懐っこく愛される後輩として先輩人気がNo.1の健太。こんな男子勢の中の1番だらけを集めた中心グループに、まさか自分が属しているなんて流石好きに設定出来る世界だなっと佳奈は思うのだった。


 佳奈は夢の世界とは言え今の逆ハーレム状態だとすると好きに相手を選べるわけだが、実は前から洋介の事が気になっていたのだ。ただ以前の自分だったらカーストの平均値にいる自分では恐れ多くて声も掛けられなかったが、今の自分なら彼の近くにいることが出来る。

 好きになってもらえるかは分からないし、もしかしたらこの夢の世界が一時のものかもしれないが、一時でもいいから自分を見て欲しい。好きになって欲しい。気づけば彼だけを追っていた目をいた目を手元に戻し、拳を握りしめては佳奈は決意を新たにする。

 

 佳奈は自分の分の昼食を持って席に戻って来た洋介に、そんな恋心が漏れてしまいそうな満面の笑みを向けた。それを見た男子陣が佳奈に見惚れるように止まるのが見て取れたが、すぐに後ろの席のカーストのthe平均値である女子たちが彼ら3人に色めき立つ声が聞こえた。

 一人一人でも充分に人気なのに彼ら3人が揃う姿は圧巻で、それを見たさに彼らの周りにファンのような女子が集まってしまうのは致し方ない事だ。そんな彼らのグループ内に今は自分が入れてしまうなんて、この夢のような世界に感謝しなくてはっと佳奈は叶えてくれたであろう神に心の中で感謝の祈りを捧げる。

 そして前の佳奈は確実にコッチ側でなく、向こう側であった。向こう側である女子たちは洋介たちのクラスメートにもかかわらず彼らの指定席の隣を陣取り眺めているだけで、声をかける勇気はなく視界に入るだけで今のように喜ぶのだ。

 真向かいに座っている子なんて、まさに前の自分のようで校則通りに来た制服に黒髪で真面目が取り柄ですっと言わんばかりだった。自分を卑下して好きな人に声をかけず眺めていただけの頃のようだと、彼女をみて今の自分なら出来るはずっと改めて佳奈は自分自身を奮い立たせた。


 そんな周りの声と視線に現実に戻ってきたように、彼らもはっとして席に着きはじめた。席順は決まって裕が向かいで彼の隣に健太、そして洋介はいつものように佳奈の隣に座る。この"いつも通り"とは夢の世界の今の自分に変わったばかりで、今までの記憶がないはずの佳奈にも何故だが分かった。この世界に存在できるように辻褄合わせが出来るようにするためか、今までの記憶が自然と頭の中で再生されるようにわかるには有り難かった。

 便利な機能だなっと今までの記憶を見ている彼女の耳が、洋介が座る瞬間に聞こえるか聞こえないかの声で「いつも可愛いな……」っとボソっと呟いてのを拾ったのだ。

 その瞬間に心が跳ねる。まさか彼から可愛いなんて言葉を聞けるなんて、前の自分では思っても見なかった。顔に徐々に熱がこもるのを一生懸命逃がそうとしながらも、どこか頭の一部はとても冷静だった。確かに嬉しいのだが、これは夢の中で設定したこの可愛い容姿があってこそものだからだろう。容姿がこんな風に変わらなかった可愛いなんて言葉をもらえる筈がないと、世界は変わっても全く変わらなかった自分の心の片隅がひりつき佳奈は少し自嘲気味な笑みを浮かべたのだった。


 世界が変わるなら、いっその事この自分を卑下する気持ちも昔の自分を覚えている頭も変えてくれれば良かったのにっと一瞬思ってしまったが、そうなれば彼を好きな気持ちも無くなってしまうではないかっと考えを改めた。

 彼のそばにいる権利と惹きつける容姿は自分の好きなように世界が変わった事によって手には入ったが、彼の心が手に入るかは自分次第なのだ。でも好きなように設定した世界で彼の気持ちを振り向かせたところで本当の自分を好きになってもらえなかっただけじゃないかっと頭の片隅で少し思ってしまう。


 それでも卑屈な女の子じゃ彼を振り向かせられない! 今度の自分は自分に自信を持って積極的な子じゃないと! 彼にアピール出来なかった前の自分とは違うのだ。食事をしながらも、彼に話を振りながら「でね、この間いったカフェでケーキが美味しくて今度よかったら行こうね。」積極的に話かけながら佳奈は思った。

 「この間も行ったばっかりだろ。佳奈太るぞー」っと裕が茶々を入れるが、そんなのを気にせず健太が「せっかくだし今日の放課後行こうよ」と屈託無い笑顔で提案してくれ放課後に彼といる時間が増えた事に佳奈の笑みはいっそう深まる。


 今も前を真っ直ぐ見つめる涼しげな彼の横顔が今の佳奈が話しかければ、当たり前のように自分の方を見てくれ佳奈のどうでもいい話にも笑ってくれる。それだけで今食べているA定食のサラダが高級フレンチのサラダのように輝き美味しく感じてしまうので、本当恋する女の子はちょろいのだ。

 佳奈のあまりにくだらない話にも彼が余りにも優しく笑って聞いてくれるので、それを見ていた裕も「こいつ最近妙に機嫌良いんだよな」と少しふてくされたように言うのも気にならなかった。


 彼の隣に入れるだけで笑顔で自分を見てくれるだけで、こんなに簡単に恋心は膨らんでしまう。少しでも可愛く思ってくれますか?あなたの隣に持っといてもいいですか?っと期待だけがどんどん膨らんでしまうの。



 食後は何時も自由に過ごすのだが、午後の授業でグループ課題の資料を探しにいきたいっと口実を作り佳奈はちょっとした我儘として洋介に一緒に来てくれないかっと頼むことにした。

 「俺が一緒にいってやるのに、しょうがない俺たちのお姫様の指名だからね」「騎士としてしっかり守ってくださいね、洋介先輩。」と裕と健太が茶化すと、それに乗った祐介が騎士のように恭しく手を差し出し「姫の望むがままにどこまでも」っと騎士のように言うものだから、恥ずかしいさより面白さが勝ってしまい佳奈も思わず笑ってしまう。

 

 この夢の世界で容姿の優れた佳奈は男たちにしつこく言い寄られたり、その事で女子にやっかまれる事もあり中学から一緒のこの3人がナイトのように守ってくれていたらしい。らしいとは過去の出来事を除いてみたから分かったのだが、そしてその様子から佳奈は姫というあだ名をつけられているという。申し訳なく思った事もあったが洋介に「綺麗なものを守るの騎士として当たり前だ」っと茶化しながらも言われてしまい、何も言い返せず居心地のいい今の関係を続けていたようだ。


 ナイトの洋介を伴って廊下歩きながらも2人での時間はあっという間で気づけば資料室に着いてしまった。佳奈は資料を探す前にこれだけは伝えようと「さっき健太も言ってたけど、帰りにケーキ食べに行くの洋介は無理しなくてもいいんだよ?洋介が甘いの苦手なの知ってるし、私がわがまま言っただけだから」と言いながらも、ついお願いするように瞳を投げかけたのは彼と行きたい気持ちが漏れてしまっただけで故意ではない。

 「お前のわがままなんて可愛いもんだよ。俺はコーヒーで飲むから気にするな」と言って頭をポンポン優しく叩く。そんな彼の何気ない仕草に心臓が大きく脈打つのが聴こえてしまうのではないかと佳奈は気が気じゃなかった。さらには「お前の髪はフワフワだな」っと頭を撫でるものだからたちが悪い。脈が一層大きく跳ねるの感じ悟られたくないよう、やんわり離れるのがいいのだろうが優しい手の感触を離したくなくてその場を動けないでいた。

 資料室の前で行われている真っ赤になっ姫をナイトが撫でている光景は、彼らのファンからしたら目に毒だろうが幸いなことに昼休みが終わりに差し掛かり人が少なく誰にも見られてなかったのが救いだった。ただ予鈴がなると資料室に窓にさらっとなびく黒髪が映る。どうやら2人が扉の前で勝手に繰り広げられたやり取りに、出てきづらくなったのだろう。その事に気づいた洋介がハッとしたように手を止めると、佳奈もようやく赤くなった顔を手で覆いながらバッと距離をとった。

 そんな2人の間を扉からようやく出られた女子が気まず気に少し表情を固くしながら、資料をすでに探した事を口早に告げて通り過ぎていく。それは予鈴がなってしまい資料を探す時間はもう無くなっていたので有り難かったが、2人が扉の前にいたから出て来れなかったんじゃないか、そもそも何しに行ったんだっと申し訳なさと恥ずかしさっで気持ちがごちゃ混ぜになる。佳奈がそんな気持ちのまま彼を見上げると、彼も気まずげな顔のまま女子生徒の後ろ姿を見送っており「あ〜とりあえず予鈴なったし教室に戻るか」っと佳奈を促した。


 午後の授業は1ヶ月前から続いているグループ課題でラッキーな事に佳奈と洋介それと他の男女1人ずつの4人グループで。それぞれ自由なテーマを設定して調べ来週発表する事になっている。

 佳境にもさしかかり今回は最終的な発表原稿のまとめをする予定だった。今まで調べた中で1カ所抜けていたところがあるのに気づき、原稿を大幅に変えないといけないのだが1番大変なその変更部分を「さっき探してきた資料をどうぞ。」っと女子生徒から受け取った資料を元に彼がさくさくと原稿の改稿を進めて行く。佳奈もそれにともなう考察部分の変更に早速取かかっていたが、もう1人のメンバーである男子がそれを邪魔するかのごとくしきりに話掛けてきた。

 この男子生徒はいつもは話しかけられない佳奈と一緒のグループになった事に相当浮かれているのだろう。毎回過剰に佳奈の事を褒め称えて来る事に辟易していた。さらには今日は日本人として珍しいハニーブラウンの髪の事を異常くらい褒めてきて、その様子はまるで崇拝の域だった。

「本当君の髪は日の光の輝くようだ」「ふわふわ揺れる長い髪がまるで女神のよう」と歯が浮くようなセリフを並べてたり、反応の薄い佳奈の様子に洋介を巻き込もうと「なあお前は女子の髪は短い派長い派?俺は断然長い派!」と彼に聞きながらもチラチラこっちを見てくる姿に佳奈は頭痛がしそうだった。


 ただ頭痛のタネであるが今の質問はナイスアシストである。佳奈は勤めて私は気にしてませんようっと目の前の原稿に目を走らせる振りをしながらも、彼が何て答えるのか気になって仕方がない。


 耳がダンボになりそうだ。あからさま男子生徒の様子に少し苦笑した気配を漂わせながらも「そうだな。俺もサラッとゆれる長い髪の毛が好きだし確かにドキっとする」と同意するように答えた洋介は、そのままやんわりと作業を進めるようにも促してくれた。

 彼が静かになりようやく作業が捗るはずなのだが、洋介の言葉が頭をぐるぐる回り佳奈は考察の原稿を書いては消してっと佳奈は自分を落ち着けるのに必死だった。その後も彼の言葉が思考を遮り続けて結局は最後の考察を終えることが出来ず、家でまとめて来る事になったのだが恋する乙女としてはいた仕方がない事だろう。


 次は教室移動だったのでこれ幸いっと気持ちを落ち着けるために裕たちに先に行ってもらうよう伝え、佳奈はお手洗いにかけこんだ。


 佳奈は鏡で改めて今の自分の顔をまじまじと見てみた。こんな短時間ではあるが彼からこの顔を可愛いと、この長い髪も彼好みにでドキッとさせるっと言ってもらえた。つまりは今の容姿は彼にとって好ましいものだろう。そしてこの夢の世界で彼に一番近い女子のポジションも確実に佳奈のはずだ。

 ただ見ているだけをお終いにして頑張りたい!ここは勇気を出して放課後のカフェを2人きりで行きたいっといってみようか。夢の世界とは言えこんなチャンス2度とないわけだしっと改めて気合を入れた。

 それを伝えに行く前に、急いで出て来てしまったため教室移動にも関わらずノート忘れてしまった事に気づき教室に一度戻る事にした。まだ予鈴は鳴ってはいないが、時間そこまである訳でないので少し早歩きで教室まで向かう。


 そんな佳奈が教室の扉を開ける前に、その声に気づいたのは果たしてラキーだったのか?アンラッキーだったのか?佳奈の耳は恋する彼の声に敏感で、思わず扉に掛けた手は空ける動作をする前に止まってしまった。


 「分かった。今日の放課後は俺も健太も用事が出来て行けなくなった事でいいんだな。」と彼が何て事も無いように言うと「ああ、そうしてくれ。放課後は佳奈と俺の2人っきりのデートってことで」と嬉々としたような声が答えた。「ようやくか。中学で初めて佳奈をみた時からだから本当長かったな」彼は少しほっとしたように呟いくと、「今でも思い出せるよ。今より少し短い明るい茶色の髪がふわふわ揺れていて、中学のガキばかりの中でひと際目立つあの綺麗な顔。高嶺の花って感じなのに、気を許した俺らにだけ我が儘なところもたまわない!」と蕩けるような声で語られるのは間違いなく今の佳奈の事なのだろう。


 「でもお前はいいのか? てっきりお前も佳奈のこと可愛がっている感じだったからさ」っと少し躊躇したような様子で尋ねる。「確かに妹みたいに可愛がってはいるがな」っと彼が返すと、「そうだよな。俺のライバルになるとしたらお前だと思ってたし」と噛み締めるように言った。「はは、心配するなよ。俺のタイプが全く違うのは知っているだろう」っと答えた洋介の声を聞き、既に震えるほど冷たくなった指先から心まで凍り付くような痛みが走った。

 

 これ以上聞いていてはいけない。こんなことは早く忘れなくては。

 彼は今度こそ今の自分の事を好きになってくれるはずだったのに。急いでその場を離れる為に駆け出した佳奈の背に「確かにお前が好きなのは彼女だって分かっているけど……」っと答える裕の声が追いかけて来るようだった。


 ーーあぁ、何で勘違いをしてしまっていたのだろう。そうだ、彼が好きなのはこんな私なんかじゃない。今の私とは違って華やかな感じではなく地味とも取れる清楚な感じで、綺麗系でなく可愛くて、まっすぐの黒髪がサラっとなびいて、我が儘でなく一歩引いて何時も人の事を考えて率先して助けになるように動けるような、そんな子なのだ。

 まさに前の私なら彼の好みのど真ん中では無いだろうか?あの地味で平凡で変わらない日々に飽き飽きしていた前の自分なら。前の自分のままで彼に勇気を出して近づいてみたら、もしかしたら今度は好きになってもらえるかもしれない。



 ーー早く()()に戻らないと


 気づけば痛みは涙に変わって頬を伝っていたが自分ではどうする事も出来ずいた。目についた空き教室に飛び込み、机に突っ伏して夢の世界に飛び立てるようひたすら瞳を閉じてはこの世界を作ってくれたであろう神様に祈った。こんな夢の世界を終わらせて! 前の私に戻して!っと祈って祈って祈り続けると意識がどんどん深く沈んでいき世界が引っ張られて行くように感じる。


 ーー良かった。夢から覚めて元の彼女に戻れる。彼女に戻ったら今度こそ彼に勇気を出して好きだと伝えよう……




 深い闇から目覚めを感じさせる独特な浮遊間を感じ、その感覚に後押しされて佳奈はゆっくりと目を開ける。


 目が覚めるとそこには……変わらないハニーブラウンの波打つ髪がみえた。



初めて小説を書かせていただきました。読んでくださりありがとうございます。

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