ノーヴェイカ聖典叙事詩 第一章 第一記
以前あげていたものから全話編集しなおして再掲載しています。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
もしも、あの時こうしていれば
あの時ああしていれば変わるものはあったのかもしれない。
人はいつだってそう思わずにはいられない。けれど、それでも前へ進まざるおえなくて―
取りこぼしたものを数えては嘆くけれど―
「リア!!逃げろ!!」
燃え盛る炎が辺り一帯を包む。
焼け焦げた匂いが辺りに充満し、喉がひりつく。乾燥を防ごうとしてか、はたまた心理的要因化は分からないけれど両眼からはとめどなく涙が溢れてやまない。そんな瞳は草木がチリチリと焦げる様を捉えて離さない。。
「このままじゃ押されるわ!早く逃げなさい!」
「おい、まだ―ぐわっ」
「ルージュ!!」
あちらこちらから上がる仲間の悲鳴と逃げろという声
どこに?
どこに逃げろというのか?
火の粉が頬をかすめる。一体何が間違っていたのか。
力の抜けた身体では立つことも出来ず、ただただこの惨劇を見ることしかできない。
私の膝の上で倒れたまま動かなくなったこの人を放っておくことも、捨ておくこともできない。だけど、治してやることもできない。何もできやしない。
これが、、、
『始まりの魔女が死ねばすべては地へと帰すのだ!!』
歪な声が響き、その声に賛同するように激しい雷撃が地響きを引き起こす。
「リアちゃん、逃げて!!貴女だけでも…っきゃあ」
「ハーシャ姉ちゃん!!クッソ」
「やめろ、ミッチェル!」
爆音と土埃で視界は何人も映さない。ただただ悲劇の音が響いてくるだけ。
こんなことが、、、
「や、めて」
私を背に庇って立っていた者たちが一人、また一人と倒れていく。
赤黒い血を流しても身じろいでいる者、地面に倒れて動くことのない者、ボロボロの身体を何とか立たせている者、木片の下敷きになって動けない者、もう息もしてくれない者…
「やめ、て」
これ以上誰も傷ついてほしくない。
誰も貴女に傷つけてほしくない。
こんなことは誰も、誰も望んだ物語じゃない!!
『始まりは終わり♪』
歪な声を発する黒々とした禍物は楽しそうに歌う。
『終わりは~♪始まり』
この世界の聖典叙事詩を…
『すべては一つへ。すべてはここへ』
「やめて、、これ以上、、」
握る手に力がこもる。
これ以上お前なんかに好き勝手されてたまるものか。お前はいてはイケナインダ
『器に帰る♪』
もう…
「リ、、ア、、ダメだ」
誰かが止める声がする。だけど私の中のこの感情は収まりがきかない。
アレハイテハイケナイカラ
止めなくちゃ、止めなくちゃ
『ウツワハカエル』
禍々しい塊が弧を描く。
「これ以上誰も傷つけないでええええええ!!!」
溢れる魔力が白く染め上げる。
これは長い長い歴史の終着点
~ノーヴェイカ聖典 叙事詩 第一章 第一記~ より
『始まりは終わり、終わりは始まり、すべては一つ、すべてはここへ。器に帰る、うつわはかえる』
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