第1章 5話~~魔導武装~~
いやぁー楽しい
二人は学園につくと、特別棟にある鍛冶場に向かった。
この学園には特別棟があり、いつでも武器の手入れができるよう鍛冶場が設けられているのだ。
そこには武器の管理や整備などをすべて担当している先生がいるのだが、申請書はその先生に渡さなければならないらしい。
「ここが鍛冶場...」
学園にあるからたいしたものではないのだろうと考えていた修だったが、想像以上に本格的な感じだったため、ここは本当に学校なのかと疑ってしまう。
「すごく立派ね」
「本当にここは学校なのか?」
今は誰もいないようで、二人の声が反響する。
とても静かで、なんだか不安な気持ちになってくる。
「あら、あなたたちもしかして武器の申請をしに来たの?」
突然後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには、緑髪の毛先が少しはねたミディアムショートのような髪型の作業着を着た女の人が立っていた。
修は突然のことで少し戸惑ってしまったが、そこを咲がカバーしてくれる。
「はい、先生..ですよね?」
「そうよ、私はこの鍛冶場を担当させてもらってるマリア・H・フォギンよ。みんなはフォグ先生って呼んでるから君たちもそう呼んでね」
修は始めフォグ先生を見た時、なんだかいかつい感じだと思ったのだが今の会話でその印象は消えていた。
「じゃあさっさと済ませちゃいましょうか」
三人は受付の左側にある扉を抜け簡易的な事務所のような場所に移動した。
先ほどいた鍛冶場の受付のような派手さはなく、いかにも普通の事務所のような感じだった。
「それじゃあ、どっちから申請する?」
「私からお願いします」
修は書類的な手続きが苦手だったため、正直咲が先にやってくれてとても助かった。
咲にはこのことまでも分かっていたのだろうか。
「あなたはもうどんな武器にするのか決まってる?」
「はい。一応は決まっています」
「それじゃあ、ついてきてもらえる?」
そういうと手元でごそごそと何かを操作しているようだった。
少ししてデスクの上にあった三本のペンのうちの一本を捻った。
すると、奥の壁が大きな音を立てながら動き始めた。
「なんだが厳重な感じですね」
壁の扉を抜けた後その奥に階段があり、その階段を下りながら修はつぶやいた。
「この武器庫にはみんなに貸し出してる普通の武器もあるけど、この先にもう一つ扉があってそこに魔導武装があるからね」
「魔導武装?」
咲は魔導武装がどういうものなのかはまったっくわからないが、とても大事なものであることは話の流れから予想できた。
「魔力を流し込みながら作られた特殊な武器よ」
先生がちょっとした説明をしてくれたがいまいち想像がつかない。
「魔力を流し込まれて作られた武器はその一つ一つに特殊な能力が備わっていて、武器の強度も普通の武器とは比べ物にならないといわれている。さらにその特殊な能力はとても強力で、その強力な能力は同じものはなくまだ把握しきれていないものもあるほど様々な能力がある」
修からの補足がいきなり入ったため少々驚いた咲だったが、おかげでどんなものかは把握できた。
「よく知ってるわね」
「個人的に興味があったので」
咲はその時、修の顔が一瞬暗くなったような気がした。
やはり、お母さんのことが関係しているのだろうか。
そんなことを考えていると先生が立ち止まった。
「ここが、武器倉庫。今からこの中にあるものの中から気に入ったものを1つ持ってきてもらうわ」
先生が脇にそれて手で合図をしてくれる。
修と咲はその合図に従い、道を進んだ。
そこには想像以上の広さの空間にたくさんの武器が種類ごとに分けられ並べられていた。
「広いね」
「いい武器が見つかりそうだ」
そして二人は別々に分かれ、武器庫を回ることにした。
咲は、自分に合った探すため一本一本触れていく。
「もっと軽くて振りやすそうなのはないのかな?」
あまり重いとスピードや細かい技が出せず咲の長所を活かせない。
だからかなり軽めのものを探しているのだがなかなか見つからない。
「こんなにたくさんあるんだから慎重に決めないとね」
沢山の武器の中から自分の好みの武器を探すというのはとても大変だが、楽しくもある。
咲はたくさんの武器があることに喜びのようなものを感じながら刀を探していった。
「すごいな」
修は咲と別れた後、咲の行った方向とは逆に進んでいた。
倉庫に収められている様々な武器を眺めて小さな感動を覚えた。
「いろんな武器があるんだなぁ」
気になった武器を一つづつ触れていく。
様々なな感覚を体験できて少し気持ちが高鳴るのを感じた。
「これは...銃か?魔力を弾にして撃つのか」
修が手に持った銃は、持ち主の魔力を圧縮しそれを弾として撃つというものだった。
もちろん実弾を撃つものもある。
「こういうのもあるのか...気を付けないとな」
魔力自体を飛ばしてくる武器があるとわかったことはかなり大きいことだ。
仕組みが分かっていればある程度の対処ができるかもしれない。
情報はできるだけたくさん持っていたい。
武器の特性などを見て回っていると遠くから咲の声が聞こえてきた。
「修ー、どこー?私はいいの見つかったよー」
咲の武器選びが終わったみたいだ。
「こっちだよ、咲」
咲の後ろ側にちょうどいた修は、自分の位置を知らせる。
咲は修のところに合流した。
「良いのが見つかったか?」
「うん!すごくしっくりくるのがあったわ」
自分に合った武器が見つかって咲はとても嬉しそうだった。
「それじゃあ先生のところに戻るか」
二人は先生のいる倉庫の入口に向かうため来た道を戻る。
「ん?...」
その時、修はなにか違和感の様なものを感じた。
違和感を感じ瞬間、無意識のうちに振り返っていた。
振り返った先には今歩いてきた道しかなく、何一つ変わったところはなかったのだが修は何故だかその道の先の曲がり角になにかあると感じた。
感じたのではなく確信があった。
「なんだ?この感じ....」
「修?どうしたの?」
咲からの声かけは修の耳に入らなかった。
修は何かに惹き付けられる様に曲がり角を曲がって行ってしまう。
そんな修を見て不安を感じた咲は走り出した。
曲がり角を曲がるとすぐそこに修が1本の刀を持って立っていた。
「なぁ咲。この刀なんか感じないか?なんというか、生きているようなそんな感じ...」
武器が生きているような気がすると修が言ったが、咲には何も感じ取れなかった。
「別に何も感じないけど?」
「そうか…気のせいかな?」
修は手に持っていた刀を元の場所へと戻し、倉庫の入口に向かった。
「見つかったみたいね」
入口に着くと先生が待っていた。
「はい。とてもいいものが見つかりました」
「それじゃあ上に戻るわよ」
3人は階段を登り始める。
修はさっき感じたあの違和感のことで頭がいっぱいだった。
(あの感じ、昔にも感じたことがあるような気が)
昔同じような感覚に出会ったことがあるような気がするのだが、その事に関しての記憶が全くなかった。
武器が生きているなんて話は聞いたことは無いが、確かに感じていた。
その時、ふと修の頭の中に、ある可能性が浮かんできた。
(魔導武装だとしたらありえるのか?)
魔導武装というものは魔力が流し込まれた武器で、特殊な能力がある。
そうなると生きている武器があってもおかしくないのではと考えた修だったが、いくら魔導武装でもそんな可能性があるなんて聞いたことがない。
(やっぱり俺の勘違いなのか?)
一体あれが何だったのかはわからず、気が付くともう階段の終わりが見え始めていた。
結局、不完全燃焼になってしまい修はちょっとしたもやもやが残り続けていた。
あの刀は一体....
やっと大事な場面までこれたよォ