第1章 4話〜〜魔法〜〜
なかなか表現が難しいですねぇ…
騒がしかった教室は気がつくと静まり返り、二人の男子生徒に目線が集まっていた。
「立花。先生が言ってることは本当なのか?」
クラスの中心的存在の男子が先ほどから敵視しているように感じるが、相手がどんな人物なのかわかっていないし、名前すら知らないのだ。
「あぁ、本当さ。ところで君は?」
質問に答えたついでに相手の名前も聞いておく。
「そういえば名乗ってなかったな。」
まだ自己紹介をやっていない状態でのちょっとしたいざこざというものは本当にめんどくさい。
どんな相手なのかということも分からずに話さなければいけないのだからいつも以上に慎重に話さなければ、どんなことで機嫌を損なうのかわからない。
「俺の名前は、リディ―・バルド。リディーでいい」
リディー・バルド。
この男が多分これからもこのクラスの中心となっていくのだろう。
あまりいやな雰囲気にならないように接していきたいものだが、この感じだと無理そうな気がしてきた修は、相手の様子をうかがいながら話していく。
「それで、立花。そんなあり得ないことを信じろというのか?」
リディーは修が全属性の魔法を使えるということはあり得ないと考えているらしく、認めない気のようだ。
「リディー、魔法の属性関係はもちろん知っているよな?」
魔法の属性関係、魔法にはそれぞれの特徴とほかの属性同士の関係などがある。
「当り前だ、魔法の基礎中の基礎だ」
魔法士はこの属性関係というものをしっかり理解していないといけない。
この関係が戦いにおいてとても重要になることなのだ。
「魔法の属性関係は五角形上に並んでいて、頂点から時計回りに『火』、『風』、『水』、『雷』、『土』の順に並んでいてその中心に『闇』がある」
「それがどうしたっていうんだ」
淡々と説明していく修に、何が言いたいのかと問うバルド。
だが、修は説明する速度は落とさなかった。
「自分の主属性となる属性から離れているほどその属性を習得しづらいというのが当たり前の知識だ」
「そうだ。だから俺はそんなことありえないって言ってるんだ」
リディーが反論してくるが修は気にせずに話を進めていく。
「だけど、ただ習得しづらいってだけで出来ないわけじゃない」
リディーの反論を潰す一言、その一言でリディーは反論する言葉が出てこなくなった。
「実際に今のELの偉い人たちのほとんどが全属性使い、『全魔法士』と言われている」
「だがそれは沢山の死闘を経験してきたからこそのもので、学生でホーリーになれたやつはいないんだ!」
どんなことを言われようと認めたくはないらしいリディーは反論し続けるが、そこに先生が補足する。
「だがそれは、今までがそうだっただけだ。時は動き続け時代が変わるように、魔法士の進化も今この時でさえどんな進化が起こるかも予想できない。それが魔法士ってもんだ」
先生が補足してくれたことに修は少し驚いたが、そのおかげでうまくごまかせた。
と思ったのだが、リディーがこんなことを言い出してきた。
「そうか。じゃあ先生。今度のクラス内試合、俺とこいつを戦わせてくれ」
(嘘だろ...)
そんな提案をしてくるとは思ってもいなかった修は、冷や汗が止まらなくなっていた。
「いいだろう、面白そうだ。」
先生がリディーの提案を認めてしまう。
(最悪だ...)
修はこの話し合いだけで終わってくれるものとばかり思っていた。
しかし物事というものは自分の思い通りにはいってくれないもので修にとって最悪な事態になってしまった。
「自称ホーリーさんの実力を体験できるいい機会だ。その力見せてもらうぜ」
リディーは、修に挑発するようにそう言った。
だが修は挑発されていることなどどうでもよかった。
どうやって切り抜けるということしか頭にない。
キーンコーンカーンコーン
ここでチャイムが鳴る。
「この話は終わりだ。とりあえずお前ら、しっかり今日中に武器の申請書を出しとけよ」
先生はそういうとさっさと教室から出て行ってしまう。
それに続いてリディーも教室から出ていった。
今まで張りつめていた教室の空気は生徒が教室を出ていくのと同時に無くなっていった。
静まり返った教室に修と咲の二人だけになる。
椅子に座り、外を眺めている修に咲が声をかける。
「修、寮に帰ってお昼ご飯を食べよう?」
「あぁ、そうだな」
修の声には覇気が無くなっていた。
咲は修と再会してからずっと悩んでいるところしか見ていなく、少し不安な気持ちでいた。
「修...」
「あぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
いきなり叫びだした修は椅子に寄りかかり体を伸ばす。
「考えても仕方ないか!その時しのぎでやるしかねぇ!」
完全に吹っ切れた修は臨機応変に対応していくことに決めたようだった。
「すまん咲、帰ろう」
「そうね」
やっとすっきりとした修の顔を見れて安心した咲は、修と一緒に寮に帰るため教室から出た。
二人は学園の校門を出てまっすぐに寮へと向かう。
「修、さっきは大丈夫だった?」
「さっき?」
教室でのリディーとのいざこざを見ていて、変に目をつけられてしまった修がどう思っているのかが気になっていた。
「そう。あのリディーっていう人と戦うことになったじゃない」
「あぁ。まぁ、どうにかなるでしょ」
当人である修はあまり深く考えていないらしくその時任せにするようだった。
「そう。それなら大丈夫そうね」
そんな話をしているとあっという間に寮へ着いてしまった。
自分たちの部屋の扉まで行くと、扉の前に宅配物を届けに来たらしい宅配便の人が細長いものを持って立っていた。
「どうしましたか?」
修は宅配の人に声をかけた。
「えぇと、立花修様宛にお届けものがございまして...」
どうやら修宛の荷物だったようだ。
「私が立花です。ちょっと待っていてください」
そういうと修と咲は部屋の中へ入っていき、修が判子を持って出てきた。
「ではここに判子をお願いします」
言われた通りに判子を押し荷物を受け取る。
「ありがとうございました」
「ご苦労様です」
修は挨拶を済ませ部屋に入っていく。
先に入っていた咲は荷物を片付け、ソファーでくつろいでいた。
「その荷物は何?」
見た感じとても丁寧に梱包されているためとても大事な荷物なのだろうが、中身までは想像がつかない。
「これは父さんが送ってくれた俺の最後の荷物なんだ」
そう言いながら修は荷物の梱包を開けていく。
すると丁寧な梱包から細長いアタッシュケースのようなものが出てきた。
「これは...」
咲は昔これと同じものを修の家で見た覚えがあった。
修はそのアタッシュケースを開けた。
その中には白い鞘に収まった1本の刀があった。
「これは父さんが俺にくれたものなんだ。うちの家宝のうちの1本らしい」
「そんな大事なものを持たせてくれたの?」
「父さんが言うには、こいつ、『白雨』が俺がピンチの時に助けてくれるはずだとかなんだとか」
『白雨』、立花家の家宝である刀の二本のうちの一本。
重量がかなり軽めで扱いやすい刀である。
「そういえば、今日中に武器の申請をしろって先生が言ってたよね?」
「あぁ、俺はこいつを申請するつもりだけど、咲は何かあるのか?」
武器の申請は学校貸出の武器を使用することが大半だが、中には自分で武器を持ってきて申請する人もいる。
その場合は申請書と武器本体を持っていき提出して審査に合格すれば使用することができる。
「私のは間に合いそうにないから、最初は学校から借りるわ」
武器の申請は何度でも出来るため色々な武器を触って決める人もそう少なくはない。
「それじゃあ、今から一緒に申請しに行こうか」
「そうね」
二人は荷物の整理をし、修は白雨を持つと申請をするために、もう1度学校に向かった。
そろそろ戦闘シーンを書いてみたいw