第1章 3話~~隠し事~~
全然本編が進まないですね。
(てめぇが書いてるんだろ!)
楽しんで貰えたら幸いです!
ガチャ
「ん?」
ほのかに日の光が差し込む朝、扉の閉まる音で起きた咲は下の段に修がいないことに気づき時間を確認する。
(五時?!こんな時間に修は何を?)
どうしても気になって仕方がない咲は、様子を見に行くために急いで支度をして部屋を出る。
修がどこに行ったのかと周りを見てみると寮のすぐ近くにある空き地で、刀を振っているのを見つけた。
咲は、空き地に向かい一人で鍛錬している修を見ていると、昔一緒に鍛錬していた時の姿が映し出されたかのようだった。
「....い。おーい。」
「っ!?」
そんなことを考えていたせいか、修に声をかけられていることに気づかなく、声にならない悲鳴が顔に出る。
「そんなぼーっとして、朝早くにどうしたんだ?」
驚いた顔をしている咲に自分が言えたことではないが、何をしているのかを聞く修は大体は予想がついていた。
「どうしたはこっちが聞きたかったんだけど...修が朝早くに外に出ていくから気になったのよ」
「やっぱり起こしちまったか…ごめんな」
予想していたことが完全に一致し、ちょっとした罪悪感を感じる。
「なんとなくこんな事じゃないかと予想をしてはいたけど、思った通りでなんだか笑えるわ」
クスクスと笑い出す咲は流石というべきか、幼馴染である修がしそうな事は大体わかっているようだ。
「やっぱり鍛錬してたのね。昔と全く変わらなくてなんだか安心したわ」
「安心ってなんか嬉しいような嬉しくないような複雑な気分だな」
「とりあえずタオルと飲み物。やっぱり持ってきてなかったのね」
修は「サンキュ」と一言いい咲からの心遣いを受け取る。咲にはなんでも見通されてるような気分を覚えながらも、一息つく。
「そういえばその刀というか、刀なの?それ。というかどこから持ってきたの?昨日はそんなもの持ってなかったよね?」
修がさっきまで振っていた刀のようなものに指を指しながら聞く。
「これか?これは俺の鍛錬用の特注した刀だな」
「特注した…?」
「まぁ、一回持ってみろよ」
そういうと修は刀を渡す。
ぱっと見た感じではどこも怪しいところはないが、特注したということは何かしらの工夫がされているのだろう。
咲は差し出された刀の柄を掴み、修が手を離す。
すると、さっきまでしっかりと形を保っていた刀の刃がいきなり4つに別れ、地面に落ちる。
「え...?」
突然の事で驚き言葉が出なくなる。
そんな咲を見て、修は笑い出した。
「はははっ。やっぱり驚いた。」
なんのことだか理解できない咲は、先程からずっときょとんとしたままだった。
「この刀は俺が考えて作ってもらった、実戦のための鍛錬をする刀なんだ」
「実戦のため?」
まだいまいち内容がつかめていない咲は、いったいどんなものなのかが予想がつかなかった。
「普通、剣術を磨けば磨くほど強くなるのが当たり前だけど俺ら魔法士は魔法が絡んでくる。だから魔力を継続させながら刀を振れるようになる必要があるだろ?その鍛錬をするための刀なんだ」
「じゃあ、刀の刃がバラバラになって落ちたのは...」
この刀の仕組みがやっとわかってきた咲は話の続きを促す。
「そう。この刀は固定魔法を使っていないとこうやってバラバラになるんだ」
地属性の魔法の基礎の一つである固定魔法は物と物を繋ぎ合わせることができる魔法だ。物と物を固定する魔法なので間が空いていても遠隔上に固定するなど応用が利く魔法だ。
「じゃあ今までずっと固定魔法を使いながら刀を降ってたの?」
「まぁそういうことになるな」
「どのくらい振ってられるの?」
咲と修は前はほとんど同じくらいの実力だったが、もしかすると別れてる間に相当な実力差をつけられたのではないかと咲は感じた。
「んーと、今んとこ1時間くらいが最高かな?」
「嘘っ?!多分私は30分くらいしかもたないよ…」
単純に考えて修と咲の魔力量は倍近くの差があることになる。
流石と言うべきなのか、昔から修には才能があると感じることが多かったが、それでも咲も今まで鍛錬を続けてきた。
それでも差がつけられているというのは流石に落ち込んでしまう。
「とりあえず一回部屋に戻ろうか。そろそろ準備しないと学校に遅れちまう」
「本当だ!もうこんな時間になってる」
二人は急いで部屋に戻り、身支度を済ませると急いで学園へと向かった。
何とか遅刻はしないで済んだが、何やら教室がざわざわと騒がしい。
「なんでこんな騒がしいんだ?」
修が騒がしい理由を咲に尋ねてみる。
「さぁ?私にもよくわからないわ」
やはり咲も知らないようだった。
「もしかして、あれのことかな?」
心当たりを思い出したらしい咲が修に説明しようとした時、先生が教室に入ってきてしまった。
「ほらクソガキ共座れー」
荒い言葉遣いをする人だがそこには少しも嫌悪感は感じられなかった。
「よし、全員席についたな。どうだ、お前ら昨日はちゃんと寝れたか?」
先生が初日はなんともなかったかと確認してきた。
修は昨日一番はじめに疑問に感じた点を先生に聞いてみる。
「あのー、先生。昨日、生徒手帳を確認したら10万ほどお金が入っていたんですが、いくらなんでも多すぎはしませんか?」
毎月10万円ほど入ってくるというシステム。
いくらなんでも多すぎなのだ。
「いいとこに気づいたな、立花。その事だが、その10万は1人につきではないんだよ」
「1人につきではない?」
「そうだ。この金額は一部屋につき、つまり同じ部屋の二人で10万を生活費として支給している。」
その事実は誰も予想していなく、教室中がざわつき始める。
「静かにしろ。この学園では勿論魔法について学ぶ場所だが、協調性を鍛えるという点の教育にも手を入れている」
「なんでこの学園で協調性なんですか?」
クラスの女子がそう言い出す。
まだ名前と顔が一致していないため誰が発言したかはわからなかった。
「協調性は戦闘においてチームワークの土台となるものだ。そこがしっかりできないとあっという間に殺されるぞ。」
チームワーク。
戦闘において何よりも大切なものをしっかりと身につけさせるための制度なのだ。
「それよりだ、来週のクラス内試合だがちゃんと武器は決めてあるか?今日の放課後までに申請しとけよ」
生徒が武器を持つためには申請書を書いて提出しなければならない。
提出すると、武器が支給され自分で持っている人はそれを使用することができるようになる。
また、武器が破損してしまった場合にも申請することで新しく支給してもらえる。
「先生、この試合にはどんな意味があるんですか?」
「まぁ、お前らの実力の確認が一番だが勝ち残るやつは何となく分かってるから暇つぶしになるな」
クラスの男子の質問に冗談を言うように軽くそう答えた。
「もう分かってる?それは誰なんですか?」
このクラスの中心的立場にいる男子が不満があると、そう言わんばかりに尋ねる。
彼は自分の実力に相当の自信があるのだろう。
「お前らも噂で聞いてるんじゃないか?」
先生がそう言い出した時、修は嫌な予感しかしていなかった。
「入試で筆記満点。実習をすべての基礎魔法だけで受かった奴がいるって」
その言葉を聞くと今日一番のざわつきがクラスを包んだ。
「あれは噂じゃなかったのかよ!」
さっき質問した彼がそう叫んだ。
「噂?そんなわけがないだろ?事実だ」
先生が噂の事を肯定する。
クラスのざわめきは収まることはなく、さらに大きくなっていくばかりだ。
「そいつがこのクラスにいるんだ。だから勝ち残るやつは大体分かってると言ったんだ」
「先生!教えてくれよ!誰なんだよそんなありえないことが出来るやつは!」
クラスの中心的な男子がそう叫んだ。
(まじでやばい…)
修は絶望を感じていた。
さっき感じた嫌な予感が的中したのだ。
(どうやったら誤魔化せる?!いや、無理だろこれ...)
試行錯誤しているが全く意味はなく、ただその時を待つだけだった。
「立花修。そいつだよ」
先生が修の名前を出した瞬間、クラス中の目線が修へ向けられた。
修は無意識のうちに咲の様子を確認していた。
咲も当然のように驚き、呆気に取られている。
(まじあの先生許さねぇ!)
こうなっては仕方がないと、修は隠すことを諦め打ち明ける事にした。
(あのことだけは絶対に隠さないと…)
あのことだけは絶対にバレてはいけない。
バレてしまえばもうどうしようもできなくなってしまう。
そう心に再度刻み込み、修は覚悟を決めた。
次の話はいつごろ書き終わるのか…
気長に待っててもらえると助かります!