最終章 天のシナリオ
必要の無い思い込みや執着は手放すようにと、スピリチアルティーチャーは言う。
考え方を少し変えただけで、生きやすくなる。
今迄悩んでいた事が、くだらなく思えてくる。
それが、ただ執着していただけの物なら…
【日本の美貴のマンション】
「ツインレイは、前世で一緒だったから、今生一緒に転生してるとは思えないし、ツインソウルのゆりちゃんは結婚してるし、そろそろ他の人と恋でもしてみたら?」
勝手な事言ってるよ。
「ツイン達にはそれぞれ課題が有って、課題が終われば離れて行くのよ」
愛し合いながら、離れている事を選択するカップルも居れば、結婚するカップルも居る。
結婚にこだわらないカップルも居るし、結婚しても離婚するツインソウルだって居る。
それは、課題によって決められている…らしい。
結婚しても浮気するツインソウルだって居るそうだ。
そこらへんは普通の男女と同じだな。
ただ、ツインソウルは、くっついたり離れたり、また離されたり、過酷なだけ。
上手く行っているかと思えば、ツインレイ、ツインソウルの女の子は、パニックになり「こんなの自分じゃない」と思う程の暴言を吐くんだ。
そのあたりから試練が始まるらしいんだけど…
僕達のシナリオは、どの辺まで進んだんだろう?
彼女のパニックで、離れて離されての繰り返しで、今は離れたままだけれど…
もう、課題は終わったのか?
終わったとしたら、二度と会う事も無いのかも知れない。
会えなくなって14年だ。
いくらツインソウルは時間がかかると言ったって、14年はかかり過ぎだな。
もう…今生の課題は、終わったのかも知れない。
「おじちゃま、公園に行こう。ボート乗りたいの」
「良し、行くか」
「わーい」
「ああん、待ってー、ママお化粧がまだなのよー」
いつもながら、女性の支度は時間がかかる。
「ママ早く」
待つ事20分。
そして僕は、美優達を連れて車で公園に向かった。
早いもので、美優ももう5年生だ。
ボーイフレンドでも出来たら、一緒に出かけてくれなくなるんだろうな…
【美咲家】
突然父が亡くなったの。
心筋梗塞で、以前から何度も倒れて入退院を繰り返していたんだけれど、今回の発作で亡くなってしまったのよ。
それで日本に戻って来たの。
当分こっちに居る事になりそうだわ。
[そして…]
四十九日も終わり、会社の仕事に追われる日々も、やっとひと段落したので、前に勤めていた幼稚園に顔を出す事にしたのよ。
あの頃一緒だった保育士仲間が、今も居るの。
今日は土曜日だけれど、親御さんが働いている家庭の園児を預かっているから、皆んな居る筈だわ。
【公園】
「おじちゃま、早く早くー」
「そんなに急がなくたって、ボートは空いてるよ」
【池】
[ボートに乗っている洸貴と子供達]
「おじちゃま、オールでお水かけないでね」
「もう7月だし、少しぐらい濡れたって、風邪ひかないよ」
「嫌よ、汚いもの」
「鳥さんが一杯」
って満面の笑みだけど…
「ほら、蓮。立ち上がると危ないぞ」
[ボートが揺れる]
「キャー危ない」
僕は、蓮を抱き抱えた。
「怖かっただろ?」
それから蓮は大人しくなった。
「そろそろ時間だな…戻るか」
ボートから降りると…あれ?
美貴が誰かと話してるぞ。
「お兄ちゃん早く!」
メガネは車の中だ…良く見えないよ。
幼稚園の子供達。
あれは…ゆり…さん?
「後は、2人で話してねー」
なんて言って、美貴は子供達とどこかへ行ってしまった。
どうしよう…
「元気…だった?」
もっと他に言う事無いのか、僕は。
「お子さん、大きくなったわね」
「ああ、11才と5才」
「私が見た時は、赤ちゃんだったわ。もう一人居たのね」
2人でいつもの屋台で、お茶を飲みながら話している。
「5年前、貴方が赤ちゃんを抱いているところを見たの」
「ああ、それは蓮だな」
「蓮君、て言うのね」
「うん」
「それで…奥様は?」
「へ???」
何か…大変な勘違いをしているようだぞ。
「蓮は、美貴の下の子だよ」
「え?」
「僕の子供だと思ったの?」
「それじゃあ、あの時…」
「僕に妻は居ない。その時一緒だったのは美貴だろうな」
「私…」
うつむく彼女の瞳から、涙がこぼれ落ちた。
「君を忘れる事が出来なかった」
「私…私も…」
「ずっと君を愛してた。いや、この先もずっと愛してる」
愛してる…それは、初めて言った言葉だった。
たったひとこと…
この言葉を言うのに、僕は何年かかったのだろう。
「でも私…夫が居るの」
「わかってる」
「中々離婚してくれなくて…」
「そうか…」
「離婚出来たとしても、貴方の子供を産んであげられるかわからないし…」
「良いよ、それでも」
「夫にキスされたの」
「………」
「結婚式の誓いのキス…その時一度だけ、ただ一度だけよ」
「………」
「それでも愛していると…私を愛してると言える?」
「愛しているよ」
「私も…ずっと貴方だけを愛してたわ」
それから彼女は、僕の腕の中で泣いた。
これからこのツインソウルは、どうなって行くのだろう?
彼女は、人の奥さんだ…不倫は、僕の性格では無理だ。
前世だって、ツインレイが結婚していると、初めからわかっていたら、好きになったとしても近づかなかっただろう。
今生の相手、ツインソウルは結婚してしまった…
勿論、これから僕は、精神的に彼女を支えて行く事になるだろうけれど…
彼女は、人の奥さんだ…
家まで送って行く事は出来ないので、以前と同じように、幼稚園まで送って行った。
二人とも離れるのが嫌だった。
「星が綺麗ね…」
そう言う彼女…いくつになっても美しかった。
【神緒家】
あ、お兄ちゃんが帰って来たみたい。
話したい事が沢山有るから、先に実家に帰って待ってたの。
ゆりちゃんから聞いた話し…
離れていた間のフランスでの事…
そして…
あの過去世の最後、ローラさんがレイプされた相手の兵士が今のご主人だという事も…
【ゆりの部屋】
やっぱり彼を近くに感じられる。
もう離れるのは嫌。
洸貴さんのそばに居たい。
【リビング】
「お兄ちゃん、聞いてる?」
「うん」
こんな時に聞きたい音楽は…
僕は、ブラームスのピアノコンチェルト第1番をかけた。
伊藤恵さんのピアノだ。
「過去も未来も今ここには無い、ここに有るのは、今この瞬間だけ…」
女神ラクシュミーが、僕の肩の上でそう言った気がした。
そうだな、考えるのはよそう。
この先何が起ころうとも、その時はその時だ。
今は何も考えず、このブラームスのコンチェルトを、憧れのピアニストの演奏で聞いていれば良い。
それにしても、美貴の奴がうるさいからな…
「妹も可愛いけど、来世はピアニストの弟に生まれるのも良いなあ…」
「何か言った?」
もう、お兄ちゃんたら…
じゃあ、来世はそう設定して生まれて来れば良いじゃない。
-La Fin-
エピローグ
誰にでも12人存在するツインソウル。
魂の学びが進んでいなければ、同じ時に転生していても擦れ違うか、会っても気づかない。
巡り会う人が特別なわけではない。
ただ今生に相手が居て、そのタイミングだっただけ。
人は、生まれる前に、自分の人生のシナリオを描いている。
お互いのシナリオにツインソウルが居ただけ。
ツインソウルには、色々なタイプが居る
全てのツインソウルが同じとは限らない。
学びの過程や結末は、それぞれ違う。
それは、課題によって決められている。
もしかしたら、君の相手がツインソウルかも知れない。
2015.12.14 大輝
(この作品は他のサイトで発表したものです)




