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ショート・ショート(11〜20)

SS15 「どこかの本屋」

 いつも夢で見る町がある。

 実際には存在しない町なのだが、夢の中の僕はそこのことを良く知っている。道や駅、商店街、学校の場所までわかっている。

 学校は通っていた母校に良く似ている。朝の光と共に分解され、意味を失う町だが、夢の中の僕にとっては理路整然と存在する町だ。

 そして夢の中で僕はいつも町を彷徨っている。


 水の底にでもいるように移動しづらく、わかっているはずの地形が歪む。

 徒歩で、自転車で、自動車で、僕は進みつづける。

 通りは何処までも続き、目的地は見つからない。


 そして本屋が出てくる。


 もともと休日は本屋めぐりばかりしている僕だ、夢の中でも本屋に入る。

 ささやかな楽しみを求めて入るが、そこで何かが見つかったことはない。

 欲しくないものばかりだったり、金額が高かったり。

 幾つかの本屋は何度も夢に出てきて、間取りも理解しているが、本を買った事はない。

 たどり着けないし、得られない。

 ただ進みつづけるだけ。


 そんな夢だ。


 今日も僕は夢を彷徨っていた。

 薄暗い商店街は町の北西部に位置しており、坂道に沿った商店街を抜けると山中を通る道に入る。そこには川が流れていて、川沿いに山を登ることができるが最後まで行ったことはない。

 商店街には古い本屋があった。

 そこには欲しかった画集があったのだが、先を急ぐことにした。

 僕はこの後、山を越えなければならないのだ。




 目を覚ますと電車の中だった。

 窓の外はすっかり暗くなり、チカチカ光る蛍光灯がやけにまぶしい。

 天井にぶつかりながら飛ぶ蛾を見つめながら、夢だったんだな、と気付いた。

 よく見えないが窓の外では雪が降っているらしい。

 単調な電車の響きとともに心の中に何かが積もっていく。


 ・・・・・・ひどく遠いところに来てしまったな。

 脇に置いた荷物を手繰り寄せながら、僕は考えた。




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