一章架空の世界にトリップ一
あたしの名前は佐藤宮子という。これでも、年齢は二十二歳なんだけどね。
今はとある企業で会社員をしている。
容姿も頭の良さも並だった。学生の頃から、何故かニックネームは宮ちゃんであった。
それは良いとしてあたしは仕事も終わったので家に帰ろうとしていた。だけど、交差点を暗い中で渡ろうとした時だった。
キキーとタイヤのスリップする音がして振り向いたら、あたしは宙に放り投げられていた。
衝突したのは大きなトラックだった。あたしの体は宙に浮き、アスファルトの地面に叩きつけられて落ちる。
不思議と痛みはなかった。
(…ああ、これであたしは終わりだな)
そう思いながらも目だけを動かしてそこらに散らばったあたしのバッグや所有品を見やった。そして、頭からどろりとした生温かいものがあふれ出してくる。
キキィとものすごい音を立てながら、トラックは走り去っていく。
いわゆるひき逃げだ。ため息をつきながら、起きあがろうとしたが。
体は指一本でさえも動かない。体中がずきずきとした痛みが相まって悲鳴を上げ始めた。
そこであたしの意識はフリーズアウトした。
そう思ったはずだった。ぱちりと目を開くとそのまま、起きあがった。
体も普通に動くし、頭を触ってみたけど血が出ていない。
「なあんだ、夢だったんだ」
独り言を言いながらほっとする。けど、かなりのリアルな夢であった。
正夢にはなってほしくないものだ。あたしはそう思いながら、ベッドからおりた。
顔を洗ったりしてから、朝食の支度をする。お湯をポットに入れて沸かし、ロールパンをオーブントースターに入れて焼いた。
その間に簡単なサラダを作る。オリーブオイルと塩や胡椒、お酢を混ぜてドレッシングも作った。
時計は朝の六時をさしている。オーブントースターが鳴って焼きあがった事を知らせてきた。
皿を手にしてトースターに近づき、蓋を開いた。皿にロールパンを乗せてテーブルに置いた。
そして、マグカップにインスタントコーヒーの粉を入れたり、砂糖も加える。お湯が沸いたのでガスを止めるとマグカップに注いだ。
ミニトマトとレタスのサラダとロールパン、牛乳を加えたカフェオレがあたしのいつもの朝食のメニューだ。テーブルに並べながら椅子に座る。
そのまま、朝食にありついた。
朝食を食べ終わった後、食器を手早く片づける。洗剤をつけたスポンジで皿やマグカップなどを洗った。水を出して、それらをすすぐと食器乾燥機に入れる。
今時、食器洗い乾燥機があるけどあたしは自分の手で洗う事にこだわっていた。アナログ人間と言われようとかまわなかった。
蓋を閉めて、乾燥のボタンをオンにする。ぶぉっと温風の出る音がしたのを確認すると寝室へと向かう。
制服に着替えるためだ。
中へと入り、クローゼットを開けた。丸襟のブラウスとグレーのスカート、袖無しの紺色の上着と学校の制服に近い。
どこかの銀行員かと思うけどこれがあたしの会社の制服だ。それらを取り出した後、着替える。
仕上げに上着を着て、髪や他におかしなところがないか確かめるために全身を映し出すタイプの鏡に向かう。それで自分の顔を見ようとした時だった。
あたしと顔がそっくりな紅い着物を着た女性がこちらを見ていた。