キャラクターメイキングと乱入者
「行ってらっしゃい。」
狐娘さんの別れの言葉を背に受けて俺は歩きだす。
廊下の終わりが見えないくらい長い廊下の両端にズラリと酒杯が並べてある。
本当にランダムで神徳を授けるみたいだ。
適当に目についた酒杯を取り一息にあおる。
・・・うん。よい酒だ。
そういえば此方に来て一人は初めてだな。
そんな風に考えながら俺は二杯目の酒杯を取りのんびりと渡り廊下を進むのだった。
五杯の酒を飲み干し廊下の先にある引き戸を開けるとオモイカネ様とウカノミタマノカミ様が待っていた。
「ふむ。待っていたよ。」
涼やかなイケメンがいた。
外見はウカノミタマノカミ様だが先程会った神と同一神物とは思えない。
「先程のウカノミタマノカミ様は偽者!?」
「いやいや、違う違う。」
オモイカネ様が否定する。
「狐が傍に居らんかったらこんな感じじゃ。」
「なるほど。綺麗なウカノミタマノカミ様ですね?」
「いえいえ、どちらかと言うと残念なイケメンですよ。」
自分で言うなよ。その通りだけど。
「いい感じに場も濁った処で儂等からの贈り物じゃ。」
「まず私から。宝物庫の技能と財宝を差し上げよう。」
ウカノミタマノカミ様が指を鳴らすと俺の周りに光が現れそのまま俺の中に入っていった。
「お金はあるにこしたことないですからね。宝物庫に入れておきますので大きくなったら活動資金の足しにでもしてください。」
ウカノミタマノカミ様はわかってらっしゃる。金は重要だ。力と金があれば出来ないことはあんまりないしな。
・・・処で宝物庫とはもしかして?
「うん。涼斗殿の予想どうりアイテムを収納できる例の空間収納スキルさ。魔力総量で収納できる量は変わるが・・・まあテンプレだね。あちらでもこの技能を持つものが居るからそんなに悪目立ちはしないハズだ。」
「儂からは固有技能の大図書館をやろう。この技能はこちらの世界の知識を知ることができるものじゃ。お主の知らぬ事…例えば建築や薬学、鍛冶、鍛造、醸造なんかの知識をお主が望めば得ることができる。
もっとも、得られるのは知識だけで経験からくる技術と知識の剥離があるから気をつけよ。
まあ内政チートするには必要な技能じゃろ?」
確かに凄い。現代知識で無双するには欠かせないものだ。
「さて、次はキャラクターメイキングですね。取り敢えずデフォルトはこうなっています。」
武器適正
剣術
槍術
弓術
杖術
体術
魔法適正
全属性適正
神聖魔法
竜言語魔法
獣魔術
錬金術
戦闘技能
武装闘術
戦闘指揮
部隊指揮
戦意高揚
聖光属性
生産技能
鍛冶
調薬
醸造
農業
名匠
特殊技能
忍術
索敵
警戒
気配探知
罠技能
神徳技能
建国神の神徳
商業神の神徳
豊穣神の神徳
水神の神徳
軍神の神徳
固有技能
大図書館
無限収納
宝物庫
並列起動
詠唱省略
全技能習得補正
成長限界無効
狗族友好
猫族友好
兎族友好
狐族友好
竜族友好
「・・・こんな感じになりましたね。」
「俺は酒呑んでただけなのにここまで決まっちゃうんですね。」
「そうじゃよ?酒の種類に酒杯の種類、後は酒の配置で細々としたことを決めたんじゃ。」
「キャラクターメイキングっていうから自分で決めるんだと思ってましたよ。」
俺の感想にオモイカネ様が説明をしてくれる。
「無理じゃ。日本にどれだけの神々が居ると思っておる。自分で細かくきめると一年や其処らで終わらんぞ?
一応、お主が無意識に欲したチートを与える様に調整したが、何か足らんか?
向こうの世界に洒落にならんチートは流石にやれんし、広くある程度深くそろえたが?」
「十分ですよ。固有技能の友好系のやつはもうなにも言いませんが、戦意技能の技能がよくわからないですね。」
「あぁそうじゃな。
武装闘術はお主の霊力を使って武装を創造して闘う技能じゃ。もっとも霊力が尽きれば創造した物はなくなるが。解りやすく言えば、OSやH×Hの具現化みたいなものかの。
戦闘指揮は文字どうりの技能じゃ。お主をリーダーとして戦闘を行うさいにお主を含めた仲間の能力を高める。
部隊指揮はお主をリーダーとした部隊の意志疎通と専用の支援魔法が使える様になる。
戦意高揚は説明は要らんじゃろ?
聖光属性は攻撃時に不死者や実体を持たない霊魂系の相手に特効が付く。物理攻撃のみならず魔法の属性攻撃にも適応される。
攻撃を受けたさいには火、水、天、地の属性攻撃を25%軽減。物理攻撃を半減。光、闇属性攻撃を無効化する。戦闘系の一番のチートだの。」
「では神徳技能とは?」
「神徳のくくりに合う行動をしたときに恩恵が得られる位のもんじゃ。」
「そういえば宝物庫と無限収納が被りましたね。」
俺達の会話にウカノミタマノカミ様が交ざる。
「似たような物ですけれど被って困る物じゃないし良いですよ?」
「そうじゃよ。性質が微妙に異なるしなぁ。宝物庫は持っとる奴がそれなりに居るが、無限収納はめったに居らんぞ?
収納限界が異なるし儂は別に良いと思うが?」
「いえいえ!どや顔で差し上げた技能が被るとか私が恥ずかしいじゃないですか!?」
「ウカノミタマノカミ様のメインの贈り物は財宝でしょ?」
「アレがオマケです!!財宝に託つけて技能贈ったら被ってるし、オモイカネ様の贈り物の方がめっちゃ良いじゃないですか!?」
「や、まあ、無限収納とか宝物庫とかは異世界転生モノのテンプレですから、おかしくないですよ?」
「そうじゃな。宝箱として贈ったと思えば良いじゃよ。」
「私の気が済まないんですよ!!」
荒ぶるウカノミタマノカミ様に俺は他のモノを求めることにする。
「では、地球の植物の種や苗を貰えませんか?」
「えっ?そんなので良いですか?」
「えぇ。こちらの食べ物が向こうに在るとは限りませんし。
多分、肉類はなんとかなると思うんですけど、植物の類いは異世界特有の進化とかされてたらねぇ?
似たようなモノがあってもコレジャナイ感満載のモノとか萎えるじゃないですか?
食は人生の最大の娯楽にして基本ですよ。」
俺の言葉に二神は大きく頷く。
「そうじゃな食は大事じゃな。」
「えぇ。大事ですね。」
「幸い農業や醸造の技能とそれに類する神徳もありますから種さえ有れば難しくないと思うんですよ。」
「後、異世界って葡萄酒か発酵酒しかないイメージがあって・・・
自分で旨い酒を作って呑みたいんですよ。
酒を呑むなら旨い酒がいいし、酔っぱらうならやっぱり旨い酒の方が良いですよ。」
俺の主張に二神は残像が残る勢いで頷く。
俺が更に話を続けようとすると襖が蹴り破られ、一神の男性が乱入してきた。
「話は聞かせてもらった!!ここは私に任せて貰おう!!」