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暗示使い  作者: 夜鳥ツル
第0章 それぞれの視点から見た日常
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視点転換 昼休み

ー視点Aー


僕たち四人は、いつも学園の屋上で食べている。


正確には、屋上は人が多いので、屋上の“さらに上”で食べていた。


具体的に言うと、カナタの土魔法で土台を作って、下に柱をつけて土台を持ち上げたのだ。


完全に目立っているけど、三人にその発想はなかったらしい。


空に近いので、夏は暑いかもしれないが、春の日差しはとても心地いい。


自前のテラスを簡単に作ったカナタが口を開いた。


「じゃあ作戦会議を「お昼食べながらにしようぜ」ーーーじゃあ食べながらで」


ハヤテが口を挟んだことで、取り敢えず食べながら作戦会議?を始めることになった。


まず聞きたいのは、そもそも…


「これ、なんの作戦会議なの?」


「これはねシロくん、シロくんの隣の子をボコボコにするための作戦会議なの」


「…いじめはダメだからね」


「いじめじゃねーよ!て言うかサキ!紛らわし過ぎだろ!…まあ大まかに言えば、その通りなんだが…」


「え!?やっぱりいじめ!?いじめなの!?」


「シロ、落ち着いて。あくまでも模擬戦のルールの範囲内だから」


カナタが手で落ち着くよう示す。


ボコボコにはするのか…と思いながら、とりあえずカナタの言う通り、落ち着いて詳しい話を聞くことにした。




ー視点Bー


昼休みになる直前、授業中にも関わらず、Dコールが飛んで来た。


カガクのによって、魔力を専用の端末に流せば、相手の頭に思念として、メッセージが直接届けられるダイレクトヘッドコール、略してDコールは今、風魔法による空中輸送に変わる通信手段として金持ちの間で流行っている。


これを持っていて、なおかつオレに送ってくるやつなんて、一人しかいない。


「カナタの奴…大丈夫なのか…?」


Dコールの構造は、簡単に言うと、魔力を音の波にして、あらかじめ登録された特定の魔力の人のみに伝わるようになる、というものだ。


つまり魔力の感受性なんかが高い人には、使用しただけで即バレてしまう。


特にレベルの高い人や、魔力の扱いに長けた人などだ。


身近な人で例えば、それはシロだったり、カナタやオレやサキだったり、そして先生だったりだ。


マジで大丈夫か、これ?


生徒はともかく、先生は気付いてないのか?


「ーーーということは、この戦争により、我らサイカ共同領域国をはじめとした四つの国は、本格的な魔法の兵器利用の研究を始めたということだ。だからこそーーー」


ーーー気付いて、ない、のか?


仮にも教師なのに?


…大丈夫か?このクラスーーー


オレはカナタのDコールを頭の片隅で聞いていながら、そんなことを思い、密かにため息をついていた。


ー視点Cー


私は届いたDコール通り、密かに彼女、「日代ルナ」のことを観察している。


日代(ひしろ)ルナは、あどけない顔立ちに、ショートの黒髪で、くりりとした青みがかった目が特徴的な可愛らしい女の子だった。


…この子、妹にしたい。


観察するうちに、その思いは強くなる。


この役目を私が任されたのは、単にハヤテか私かという二択になったからなのである。


もしハヤテがこんなことをしていたら、完全に犯罪行為になってしまう。


故に私は初め、嫌々この役目を引き受けた。


しかし、一目見た瞬間そんな思いは消え失せた。


まるでお人形さんのように整った彼女を見て、思わず溜め息が出てしまったほどである。


ちなみにカナタは、コネクションを使って彼女のパーソナルデータを探している。


いくらシロくんのためとはいえ、親との繋がりまで使うのは、少々やり過ぎな気もする。


まあ、ルナちゃんのパーソナルデータが見れるなら、私はオールOKなんだけど。


休憩時間が始まって数分経ったが、ルナちゃんは、いろんな人とひっきりなしに会話し続けている。


その可愛らしさと目の色がクラスメイトたちの関心を引いているらしい。


今まで、私の目に入らなかったのがおかしいくらいである。




…私は、なんて無為な一週間を過ごしてしまったんだろうーーー




ともかく観察を続ける。


クラスメイトたちの笑い声の中から、透き通った笑い声が私の耳のなかで響きわたる。


この声がルナちゃんかな?


会話は随分弾んでいるようだ。


しばらく会話の内容を聞くことに専念する。




…聞いていると、どうやらルナちゃんは、良く言えば、社交的、端的に言うと、幼少学校生のように無邪気で明るい性格のようである。


容姿、性格ともに、私と同じ十五歳とはとても思えない。


これだけ観察したが、肝心の魔法のことは一切分からなかった。けど、ルナちゃんの声が聞けただけで良しとする。


話しかけたい衝動を抑えて自分の席で授業の準備を始める。


模擬戦で負けて傷心のところを慰める、っていう口実で話しかけようかな。


私はそんな身も蓋もないことを考えながら、授業再開の鐘の音を聞いていた。


ー視点Aー


「じゃあ、作戦を立てましょう」


カナタが一通りの説明を終えて、ハヤテに工夫の説明をしたりと情報の共有が終わったところで、みんなに向かってそう言った。


カナタいわく、


僕がクラスメイトにバカにされてる

→格上の魔法使いを倒すことで見返す


ということらしい。


はっきり言ってーーー


「いや、作戦があってもレベルⅠには勝てないから」


「いやいや、それは分かんないぞシロ。お前、体術そこそこ使えるし、その『精錬』っつーのを使えばーーー」


「たった種十三個でどうしろと」


僕はため息をつく。


「そこはオレに任せろよ。オレがそういうの得意なの知ってるだろ」


「そうそう、シロくんはルナちゃんをこてんぱんにしてくれるだけでいいから。ウフフ、うふふふ」


「なんかサキが怖いんだけど、どうしたの」


「それがな、お前の模擬戦の相手がいたく気に入ったそうでな。喋る切っ掛けのために、その人にボコボコになって欲しいんだと。」


「………その子、御愁傷様だねーーー」


「いや、あくまでやるのはお前だからな」


「そうよシロ。サキの私情はともかくね、その日代(ひしろ)ルナって子、もしかしたらわたしたちと同じくらい強いかもしれない」


とカナタが言った途端に、座っていたハヤテが身を乗り出して叫ぶ。


「嘘だろ!オレたちはⅠ・Ⅴ(1.5)オーバーなんだぞ!それにパーソナルデータにはⅠ・Ⅱ(1.2)ってなってるのにか?」


「え、その子本当にⅠ・Ⅱ(1.2)になってるの?自己紹介の時から目立ちたくなくて嘘ついてるんだとばかり思ってたけど…あれでⅠ・Ⅱ(1.2)かぁーーー」


ハヤテは元の位置に座り直してこちらを向いた。


「…ちなみにシロはどれくらいだと思ってたんだ?」


「ん?僕?僕はカナタの言う通りだと思ってたよ。カナタはともかく、サキやハヤテよりは上だと思ってたんだけどね」


「マジか…」

「ルナちゃん、強いんだね。ウフフフ。楽しみ☆」


「…サキ、本当にどうしちゃったの…?」


ハヤテに聞くが、


「…はぁ。オレより強いとかーーー」


ハヤテはうわの空になっていた。


「とにかくね」


大きな声でそう言ってカナタが仕切り直しを計る。


「最終的には負けてもいいの。ようはシロが弱くないことが分かればいいんだから」


「そうかなぁ…」


どう考えても範囲魔法で一撃瞬殺な気がする。


「まあ、負けてもいいと思えば気は楽だけどね」


「いや、勝つ気でいけよ」

「勝つ気で行きなさい」

「勝ちに行きなさい、シロ」


「えー」


三人の意見が一致するなんて珍しい。


これは、いよいよ逃げ場がない。


「まあ安心しろ。策はある」


ハヤテがニヤッと意地の悪い笑みを浮かべる。


「負けたら承知しません。私のルナちゃん獲得計画は絶対成功させます」


サキは謎の宣言?をする。


「さあ、意見も出揃ったところで、作戦会議を始めましょうか」


カナタが再び仕切りはじめた。




三人が割と真剣に話し始めたので、僕は一人、空を眺めてこれからのことから現実逃避することにした。


空、青いなぁーーー

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