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暗示使い  作者: 夜鳥ツル
第0章 それぞれの視点から見た日常
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視点C

ハヤテ、シロくんと共に教室に入る。


教室には既にカナタの姿がある。


三神(みかみ)カナタは、間鍵(まかぎ)シロ、上重(うえしげ)ハヤテ、そして私の四人で幼馴染だ。


正確にはカナタとシロ、私とハヤテがそれぞれ最初に仲良くなり、その後、いつの間にか四人で遊ぶようになっていた。


この三人とは、もう十年の付き合いになる。特にハヤテとは、生まれた時からなので、十五年もの付き合いとなる。


「カナタ、おはよう」


「あっ、おはようサキ。シロとハヤテくんも、おはよう」


「うん、おはよう」


「おう、じゃあ、オレはあっちの席だからまた後でな」


「またねハヤテくん」「ええ、また昼に」「また後でね」


ハヤテは廊下側の自分の席に行った。


と思ったらすぐ戻って来た。


「そうだシロ、後であの魔法、どう工夫したか教えてくれよ?」


「うん、了解」


そう言うと、今度こそ自分の席に行った。


確かにあの魔法は、かなり衝撃的だった。


完全にレベルⅠ、しかもあの氷を砕くほどの威力はⅠ・Ⅴ(1.5)に匹敵するものだった。


「ん?なんのはなし?」


カナタにも一部始終を面白おかしく話すことにする。シロくんもつられて笑った。カナタももちろん笑った。


「あははは。そうだったの。それにしても、シロ、あの方法、ついに成功したんだね。おめでとう」


「ん?カナタは知ってるの?」


この質問にはシロくんが答える。


「うん、カナタにはアドバイス受けてたから。ホント、カナタのおかげだよ。ありがとう」


「うん、どういたしまして」


カナタはふにゃりと笑った。


こんなにふにゃふにゃしているカナタだけど、こう見えてこのクラスはもちろん、この学園内でもトップクラスであるレベルⅠ・Ⅶ(1.7)なのだ。


今この国では、レベルⅠの人を、実力別にさらに十個のレベルに分けている。


ちなみに私とハヤテはⅠ・Ⅵ(1.6)となっている。


そして0・Ⅰの差というのは、上にいくほど、広いと言われている。


だから、私たちとカナタの差はそれこそ天と地ほどの差があるんだろう。


それはさておき…


「じゃあ早速だけど、シロくんはどんな工夫をしたの?」


「え、ハヤテと一緒に聞けば…嫌なんだね…まあタネを明かせば簡単なんだけど、僕は初めから魔法を準備してあったんだ。」


「準備?そんなこと出来…なくはなのかーーーもしかして私がさっきしたような感じの?」


「うん、サキが使ってたのであってるよ。でも僕は魔力足りないからあそこまで早くは出来ないんだ」


そう言って寂しげに笑う。

そして続ける。


「だからね、操作の魔法の魔力を自然発動するギリギリまで貯めて、あとちょっとで発動しちゃうってところまで準備しておくようにしたんだ」


そこからはカナタが引き継ぐ。


「そうするとね、ちょっと魔力を流すだけで、操作の魔法が使えるの。まだ植物でしか出来ないから、応用は効かないけど、命魔法はレベルⅠでも大体の人が植物にしか使えないし、時間をかけて魔力を貯めるから、魔力との親和性もバッチリなの。だから簡単に操作することが出来るんだよ。」


「うん、それはすごい」


「確かに操作自体は簡単に出来たね。まるで自分の手足が増えたみたいだったよ」


「そこがこの工夫のポイントだからね。ところでシロ?シロはこのタネ、いくつくらい作れたの?」


「うーん、それがね…」


そう言うとシロくんはポケットに手を入れて、取り出す。

開いた手の平には先程の種が、一、ニ、三………全部で十三個のっていた。


「あれ一日二個ずつしか作れなかったんだ…これが一週間分」


…少ない


「やっぱりたくさん作るのは難しいんだね。精神的にもきついだろうし…」


「そうね、そこはシロのこれからの成長次第かな?」


「そうだね。毎日地道に頑張ってみるよ」


その時、教室の扉が開いた。先生だ。


話のキリが良かったので、三人とも席に座る。


今日は午前中は座学で、午後にはついに初めての実技となる。


この実技は同属性同士での模擬戦になるらしい。


入学して一週間が過ぎ、折角魔法が自由に使える環境にいるのに、座学ばかりで正直、飽きてきたところではあった。


同属性同士だとダメージが通りにくく、仮に魔法が当たっても大怪我しにくいという特性がある。


だから模擬戦はこの特性を利用して、怪我人が出ないようにしている。




だから、全力でやれる。


私たち四人はそれぞれ扱う魔法が違うため、幼少学校の上級学年で行われる魔法の授業の模擬戦では、当たることはなかった。


そうすると、当時レベルⅠ・Ⅴ(1.5)だった私やハヤテと、当時からⅠ・Ⅶ(1.7)だったカナタは、同じ、または上のレベルの子がだれもいない状態だったので、全力で模擬戦をしたことは、ついになかった。


全力なんて、私が、いや、私たちが魔法に目覚めて以来かもしれない。


あの時のことはよく覚えていないけど、何か恐ろしいものを倒すために魔法を使っていた記憶は残ってる。


あの時のことを両親はあまり語りたがらない。




だけど私たちは、私たちが魔物に襲われたんだということは、知っている。




たぶん両親はそのことを私に思い出されてほしくないからあまり話さないんだろう。


ハヤテやシロくんも覚えていないらしいが、カナタだけが覚えていた。


だから知ることが出来た。


これは私の予想だけど、カナタが強いのは、このことを覚えていたからなんだろう。


魔法のレベルは心の強さに比例する。


カナタは、このことを忘れず、乗り越えたことで心が強くなり、魔力が成長したんだろう。




今の私はカナタには勝てない。




でも魔法使いとしての目標にはしてきた。


そんなカナタは一体どんな戦いをするんだろうか?


私は追いつけるのだろうか?




…まあこの学園にも水属性の強い人がいることを願おう。


とりあえず全力でやれる相手が欲しいし。




私はこんな物騒なことを、座学の準備をしながら考えていた。




授業開始の鐘が鳴りはじめた。


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